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魔術師/BATTLE OF NIGHT
作:なかたく



MAGIC8-1〜一難去ってまた一難〜


 凍結、硬直、停止、…………。
 これらすべてに共通するもの、それは止まること。なぜそんなことを突然言うのか?
 それは、今の翼たちの状況である。
 その場の空気が凍結し、その場にいる者の身体がコンクリ―トで固められたように硬直し、時間が停止したようになっているこの状況……。
 翼とプリムラは緋睡を操っていたル―クを退しりぞけた、まさにその直後といっていい。
 結界が解かれ、ほっと一息ついたところに、彼女が突然現れたのだ。
 翼たちの友人であり、この『千葉神社』の巫女をしている、千葉凛子その人が……。
 ちなみに凛子の今の状態。
 驚いた表情をし、口を半開きにして鳥居付近で硬直している。
 一方、翼の状態。
 服装こそ普通だが、片手には本物の真剣である『ナイトソ―ド』を握り、その剣の刃にはわずかながらの血糊ちのりが付着していた。
 さらにこの現場の状況。
 一部の地面は緋睡が放った矢によって陥没。さらに陥没どころでは済んでいないところが一部分あり、そこは地面に亀裂が入り、その周りにはありえないだろうと思えるくらいの大小さまざまな石つぶてが散乱。
 おまけに、賽銭箱が元の位置よりだいぶ移動しており、その賽銭箱はちょうど翼の背後辺りにポツンと寂しそうに置かれていた。
 …………。

「…………」

 無言で凛子は携帯電話を取り出すと――

「――あ、もしもし。警察ですか?」
「だああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!!!ストップッッ!!!ストップゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!!」

 目にもとまらぬ速さ……いや、目にも映らぬはやさで翼は凛子に近寄り、携帯電話を奪い取る。
 そしてそのまま流れるような動作で携帯電話の電源を切った。

「ツ、ツバサ君!?何やってんのッ、こんなところでッ!!それにさっきまでのあれって――」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや……ッ!!!あれってなんのことデスカァ―――ッ!?凛子サンッ!!」
「とぼけているようだけどこの現場の惨状とツバサ君のその剣でごまかせないよッ!!さっきまでなんか変な奇術師っぽい人となんかやってたじゃないッ!!」

 それを聞いて翼の額から……というより身体中から嫌な汗が出てくる。俗に言う冷や汗と呼ばれるものだろう。
 翼は頭をフル回転させてこの場の穏便な解決策を考えようとするが、フル回転しすぎて空振りしまくるような発想しか考え付かない。
 つまりはパニック状態である。

「…………どこから見てたの?」
「ツバサ君が私の家を出てから十分くらいしてから」

 十分……。翼が全速力で家まで得物を取りに行って、この『千葉神社』まで来る時間がちょうどそれくらい。
 つまりは全部見られていたという事になる。一部始終すべて……。

「とにかく、ことさら全部はいてもらうわよッ!!」

 翼が普段見たことのないような、凛子の鬼のような、般若の面より恐ろしい形相。
 どう考えても逃げられないと悟り、翼ははぁ〜と深いため息一つするのだった。


                    *     *     *


 『千葉神社』から、翼たちは一度凛子の家までやって来た。
 円状のテ―ブルに翼と凛子が向かい合うように正座して座っている。
 ちなみに緋睡は翼がここまで背負って、今は凛子に許可をもらってふとんで寝かせている。プリムラも翼が見た限り眠たそうだったので緋睡の隣に寝かせている。
 よって凛子からの質問はすべて翼がうけたまわることになる。
 手始めに凛子から翼への最初の質問は、案の定と言うべきか先ほどの件についてだった。
 まぁ自分の家の神社を破壊されかけたのだから、その質問が一番初めに来ることは予測できる。
 そういうわけなので、翼はまずはその説明をことさらすべて説明する。もうすでに隠しきれるようなものではない。
 続いて、翼は自分たちの目的を今度は話す。そして、自分たちが何者なのかも……。

「――ふ〜ん。『ソ―サリ―・クリスタル』って言うのを探してるんだ」
「うん。まぁね……。――これが、そうなんだけど」

 翼はそう言って賽銭箱から取り出していた今回手に入れた『ソ―サリ―・クリスタル』を見せる。
 大きさはちょうど10円玉くらいで、色はやや淡い紫色……つまり雷属性だ。淡い色なのでその作用は少ないが、その分魔力増幅器としての能力がある。

「へぇ〜。きれいな水晶だね」
「まぁね。でも、凛子はこの『ソ―サリ―・クリスタル』は使えないよ」
「へ?なんで」
「それはその……『知の紋様』っていうものをしないといけないんだ。それをしないと人体に毒と言うか……」
「ふ〜ん……」

 凛子はしばらく『ソ―サリ―・クリスタル』を手に持ち、眺めると翼に返すと、次の質問をする。

「ねぇ、ツバサ君って、魔術師なんでしょ?」
「うん。そうだけど……」
「もしこのことが一般人にばれたら、なにか罰とかあるの?」
「……もしあったら?」
「あったら、私はみんなにこのことをだまってておこうかな〜って」
「……もしなかったら?」
「みんなにバラす」

 このとき翼は、こじつけでも何でもいいのであるはずもない罰を考えようとする。
 そもそも、魔術師に限らず闇の住人』はおおやけにその正体をばらしてはいけない。
 別段ばらしても罰も何もないのだが、やっかいなことになるのは火を見るよりも明らかだからである。
 そして、翼は嘘の罰を考え出し、それを言う。

「バレたら……」
「バレると……?」
「――バレるとオカマになるんだ」
「…………うわぁ」

 ザザッ。

「ち、ちょっとぉッ!!何引いてるのさ、凛子ッ!!」
「あ、いやぁ……つい、ね」

 翼は先ほど言った言葉を後悔した。でも、これくらいのインパクトがないと凛子の場合他のみんなに言う恐れがあるので、たとえ一時的に引かれようとかまわないと、翼は心の中で思った。傷つくけど……。

「まぁ、そんなわけだからみんなには言わないでよ」
「うん。わかったわかった。ツバサ君がオカマになったらたいへんだもんね♪」

 そんな凛子の言葉に、一度胸を撫で下ろす翼。
 だが、そんなときだった。さきほど『ソ―サリ―・クリスタル』の気配を感じたときとは違う。今度は何やら嫌な……まるで氷柱を背骨の代わりにしたようなほど背筋が冷たくなるような、殺気。

「……凛子、ごめん。また出かけるよ」
「え?……あッ!ちょっとッ!!ツバサ君ッ!!」
「今回はついてこないでくれッ!!」

 それだけ凛子に告げると、翼は今度は一人で真っ暗な外へと飛び出すのだった。







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