MAGIC7-4〜白銀のマジシャン、登場〜
「「…………」」
「あ……」
そこにいた人物と翼たちは目が合った。
鳥居を潜り抜けた先にいた人物――それは、全体的に白いシルクハットに白いマント……と白メインの、まるで奇術師――マジシャンのような格好をしているパッと見十八歳ほどの青年だった。
顔立ちは整っており、女性と男性のちょうど間くらいの容姿をして、身長は175センチほど。
その青年は、神社に置かれている賽銭箱を、どっこいしょとばかりに持ち上げているところだった。
つまりは、賽銭ドロ……。
「……なにしてるんですか」
「なにって……何しているように見える?」
青年は透き通るような声で翼にそう質問する。
翼自身、どうかんがえても賽銭ドロにしか見えなかったので、無言で自分の得物を構え、プリムラにも目で戦闘体勢をとるように指示する。
「ちょっとちょっとぉッ!いったいなんだってんだい?いきなりそんな物騒なモノ構えてさぁッ!!」
「安心してください。刀背打ち(みねうち)であなたを気絶させてから、あなたを警察に突き出すだけですから」
「それを言うんなら、君のその剣も銃刀法違反で捕まるんじゃない?」
「う……」
青年(賽銭ドロ)の言い分はもっともだ。
こんな夜中に公共で剣を抜いている人間なんて危なっかしすぎるにもほどがある。
思考が一時的に停止している翼に、不意に青年はこう言う。
「――けど……悪いね。わたしは君に捕まるわけにはいかないんだ」
賽銭箱を持つのを止め、青年はシルクハットで自分の顔を隠すように傾けると、もう片方の手で指をパチンと鳴らす。
すると、突然『千葉神社』を中心に『物理結界』が展開された。
「なッ!――まさかあなたはッ!!」
「ご名答♪わたしも君と同じ『闇の住人』の一人だよ。真道翼君」
そのときだった。
不意に林の中から殺気がしたので、その場から緊急に退く翼。
その刹那、翼がもといた場所に炎をまとった矢が直撃する。地面に直撃した矢はちょっとした爆発音が発し、その場にめり込み跡を残し、矢が消える。
どうやら矢は魔力で作り出していたようだった。
いや、そんなことより、
「なんで僕の名前をッ!?」
不意打ちの攻撃をかわして、翼はマジシャン風の青年に問う。
「君だけじゃないよ。この娘もさ」
そう言うと青年は、矢が飛んできた方向に視線を逸らす。すると、それが何かの合図だったかのように林の中から矢を飛ばした人物が現れる。
その人物は、今朝から様子がおかしかった翼の妹、緋睡だった。
「緋睡ッ!」
「…………」
翼が緋睡を呼んでも、何も反応しなかった。
今朝はおかしすぎるほど性格が180度反転していたのに、今翼の目の前にいる緋睡は、これはまたおかしすぎるほど……いつも以上に沈黙を保ち続けていた。
そして、虚ろな目で青年の隣に突っ立っている。
「ちょっと昨日の夜、君の家に忍び込んだときにこの娘と偶然会っちゃってね。せっかくだから、操らせてもらってるよ。わたしの能力の一つに『人形士』があるからね」
「人形士?」
「そう。糸を使って人形などを操って戦うんだよ。ある程度熟練したら、わたしが今朝この娘にやったとおり意識や精神を自由に操ったりもできるんだ。――まぁ、生き物を操るためには、一度相手を気絶させないといけないんだけどね」
つまり、この青年は緋睡を気絶させたと言うことになる。
緋睡ほどの相手を……。
それに、この青年の言葉から考えるに、今朝緋睡の性格が変わっていたのも、今ここにいる緋睡の性格が変わっているのも、全部この青年が操っていたせいであることがわかる。
「……あなた、僕と同じ『闇の住人』と言ったよね。――ということは、あなたも『ソ―サリ―・クリスタル』を探しているの?」
「そのとおり♪わたしも『ソ―サリ―・クリスタル』を探しているよ。ちょうどここにその気配があったからこうしてやってきたわけだけど」
「……『ソ―サリ―・クリスタル』のある場所は?」
「ふふ……。それはねぇ〜……」
青年はそう言って、賽銭箱をバンバンと叩く。
つまり、あの賽銭箱の中に『ソ―サリ―・クリスタル』があるようだ。
…………よし。
翼はあることを考え、そして実行しようと翼は青年に話しかける。
「――ちょっと、取引しない?」
「取引?」
「うん。そこにある『ソ―サリ―・クリスタル』はあなたに譲るよ。その代わり、緋睡を解放してくれないか?」
そう翼に言われると、青年は少し考える。
「OK」と言う返事を翼は待っていた。――のだが、
「残念だけど……無理だね。理由としては、最初この賽銭箱に『ソ―サリ―・クリスタル』が入っているのに気づいたのはわたしだ。君が見つけていたのならその取引に応じていたけどね」
つまり、緋睡も『ソ―サリ―・クリスタル』も今は自分のもの。自分のものをあげると言われても取引には応じられない。という事だろう。
残る選択肢は、ただの一つになった。
それも、できるだけ避けたかった選択肢……。
「……なら、あなたがどちらも渡さないと言うのなら、悪いけど力づくでいかせてもらう」
剣先を青年に向ける。翼は本気だ。
同様に、プリムラもいつでも詠唱準備に入れるように「Existence」と始動キ―を言って、魔法陣を展開させた。
それを見てマジシャン風の青年は――
「いいのかい?実の妹と戦う羽目になるよ」
「もとより、僕たちはそれを覚悟の上でここに来たんだ」
翼の目に迷いと言う濁りはなかった。澄んだ目……覚悟を決めたような目だった。
ならばと、青年も戦闘準備に入って、そして――
「この白銀のマジシャン、ル―クッ!君たちと戦ってあげるよッ!!」 |