MAGIC5-4〜Battle of night in ground of school〜
身体はある程度回復していた。……が、完全に回復したわけではなかった。
傷こそないものの、体力や魔力といったものが半分程度しか回復しておらず、万が一にも戦闘になった場合は圧倒的に不利な立場になる。が、それでも翼はかまわなかった。なにせ、昨日のような強敵がこの町にいるとわかったのだから……。
今まで出会っていなかったのは、ほとんど奇跡と言ってもよかった。
今の実力でもあんなに苦戦したのだから、とっくの昔に出会っていたら苦戦どころではすまないだろう。
翼は緋睡を探す。探して、探して探しまくる。
人の多いネオン街は、緋睡の性格上いないことは翼にはわかっていたので、ネオン街以外の場所を探しまくった。
……どのくらいの時間がたったのだろうか。翼は自分が通っている高校付近までやってくると、なにやら妙な音が聞こえ始めた。
それは、普段普通に暮らして、何も変化のない平穏な生活をしている人には、絶対に聞こえないだろうと思える音。
火薬の類が爆発するような音、トラックが自転車に乗っている大人を撥ね飛ばしたような音……とにかく異常ともいえる音が高校のグラウンドから聞こえていた。
しかし、不思議なことに、学校の近くを帰り道に通っていくごくわずかな人たちは、そんな音なんて聞こえません、という感じで普通に通行している。
妙な音に気づいているのは翼だけのようだ。……いや、おそらく結界の類を高校を中心に張り巡らせてあるのだろう。おそらく『空間結界』と呼ばれるものだ。
その結界のせいで、高校の近くに住んでいる一般人たちや高校の近くを通行している一般人たちには何も聞こえないのだろう。
だが、翼は『一般人』の部類には入らない。魔術がほとんど使えず、そのくせ剣術や体術が得意な魔術師……非常に魔術師っぽくないが一応魔術師として闇の住人の一人としてなっている。
腐っても魔術師として今まで戦い続けていたので、結界の効果を少しでも和らげることくらいは、翼にはできる。
「……行ってみるか」
そう呟くと、翼は戦いが始まっているであろう場所………戦場に向かうのだった。
* * *
そこでは案の定、闇の住人たちの戦いが繰り広げられていた。互いに少女、しかも、翼は両者とも面識があった。
一人は巫女服を着た少女。翼の妹、緋睡だ。
そしてもう一人は白金色の髪で、ツインテ―ルの少女。間違いなく、昨日翼たちを襲ったミントだ。
「Development!――Photospheres of thunder!――Shootッ!!」
「気よ。我が身を守りし盾となれ」
ミントは十発の雷の光球を発生させ、それらをすべて緋睡に向けて発射する。―――――が、緋睡はそれらをすべて自らの『気』で発生させた不可視の壁で自分への攻撃をすべて無効化した。
緋睡はすべて防ぐと、弓を構え、矢を射る。いつもの矢ではなく、今度は先端に紅く燃える炎を宿らせて、だ。
それを計三発ほど続けざまに発射する。
《Proteger!》
不意に、斧からそんな言葉が聞こえたかと思うとミントは緋睡のときと同じように、不可視の壁によって攻撃から身を守った。
下手に二人の間に入ることができない翼は、ふとあることに気づく。
ミントの持っている斧が、前戦ったときと違うことに。そして、斧から発せられている声が、『トマホ―ク』の声だったことに。
「Development.――At the prison of the thunder shut in the enemy――」
ミントに魔術を発動させまいと、緋睡は再び矢をミント向けて射る。――が、先ほどの不可視の壁が緋睡の攻撃を通らせようとしない。
そして――
「――Arrest joining boundary of thunderッ!!」
すると突然、緋睡を囲むように雷が発生し、やがて緋睡は雷でできた牢獄に閉じ込められる。
「それじゃあ、あなたには悪いけど、始末させてもらうよ」
どうやら今回のこの二人の戦い、『ソ―サリ―・クリスタル』目当てではなく、相手の命目当ての戦いだったようだ。
負けたほうが相手の命を奪う。つまり、はっきり言うと殺すのだ。
「Development――Blow an enemy down,A whip of Gods.――」
あの技だ。シ―ルドを張っていた翼を気絶に追いやり、天真すら退けたあの技。
そして、斧からこんな声が聞こえた。
《あのときはだいぶ加減してたけど、今回は殺す気でミントはあんたを攻撃するよ》
万事休すだった。雷の牢獄に閉じ込められ、反撃できない緋睡は、すでに死の覚悟はしているのか、瞳を閉じていた。
「――A storm of thunderッ!!」
ミントは魔法陣をまとわせた斧を大きく振るい、雷の竜巻が光線のように一直線に緋睡を襲おうとする。
「――A storm of ice and snowッ!!!」
緋睡に雷の竜巻が襲おうとした刹那、氷雪の暴風が、光線のようにその攻撃を遮断し、やがて互いに相殺される。
《だ、だれッ!!》
「たぶん前、戦った人……」
雷の暴風と氷雪の暴風によって巻き上げられた砂煙。それが晴れると、そこには先ほどまで居なかった人物が一人。
「兄、上……」
「ハァ……ハァ……。やぁ、緋睡。助けに来たよ」
息づかいが荒い。それも無理はないだろう。魔力量が普段の半分なのだから。
そんな状態で、翼が使う魔術の中でもベスト3に入るほどの威力を持つ魔術を発動させたのだから、無茶としか言いようがない。
「兄上、無茶が過ぎますッ!」
案の定、緋睡がそのようなことを翼に言う。
「僕が無茶をするのはいつものことだよ。それより――」
翼は砂煙が晴れたその先にいる人物を見据える。
そこにはさきほど自分の妹を殺そうとした少女が一人。そしてしゃべる斧。
「ミント。今度は僕が相手をしてやるよ。ついでにその斧になっているトマホ―クも相手になってやるよ」
翼がそう言うと、斧が光り出し、見る見る人の形になっていく。
そして最終的な人の形は、あのトマホ―クだった。
「知ってたの?あたしが武器になってたってこと」
「ついさっきだけどね。おそらくあなたは、ミントの『使い魔』なんじゃないのかい?」
「へぇ〜。そこまで当てるなんて、たいした勘だよ、あんた」
少しばかり感心したような口ぶりで言うトマホ―ク。
ミントはというと、新たな斧を『召喚法』で取り出していた。
ミントのそんな行動を見て、翼も得物を構える。
「それじゃあ、――いくぞッ!!」 |