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魔術師/BATTLE OF NIGHT
作:なかたく



MAGIC5-1〜天真の見舞い〜


……………。

     ……………。

          ………………………………。

 そんな静かな中、翼は目を覚ました。目覚めた場所はベッドの上。
 ベッドの隣の小さな机においてある目覚まし時計(新)で時刻を見る。――二時だ。
 しかし、カ―テンを閉めた間から漏れる光から考えると、二時は二時でも真夜中の二時ではない。昼の二時だ。
 今日は平日。特に学校の建設記念日でもない限り平日は休みにはならない。……ということは――

「……まずい。完全に学校サボっちゃった……」

 だが、今更行ってもほとんど授業は終わっているので翼は学校に行く気はなかった。……と言うより、身体中が痛んでまともに動けないのだ。
 なぜ身体中が痛むのか、翼は考える。
 昨日、学校の裏山に行って――『ソ―サリ―・クリスタル』を見つけて――空を飛んでいる少女が――

「……………あ」

 と、翼は思い出した。ミントとトマホ―クとかいう人たちと戦って、そして最後に倒されたことを……。ちなみに、倒された後の記憶はなかった。
 なので、なぜ自分がベッドで寝ているのか、はっきりとはわからずじまいだ。予想するとしたら、緋睡が自分を運んでくれたんだろうくらいしか翼はわからない。
 そんなとき、コンコンと扉を叩く音が聞こえる。

「兄上、お目覚めですか?」

 緋睡だ。さしずめ、様子でも見に来たのだろう。
 
「緋睡。入っていいよ」
「はい、では――」

 扉の先にいる緋睡がそう言っていたとき、ガッシャアァァァァァンと扉がぶっ飛ぶような勢いで開かれる。
 そこにいたのは案の定緋睡と、何でこんなところにいるのかという人物が一人。

「はぁ―――――はっはっはっはっはぁッ!!!!!我が親愛なる後輩よッ!!心配で実に暇だったので見舞いに来てやってくださったぞッ!!」
「だからなんで自分に敬語使ってるんですか、先輩」

 天真だ。しかも実に妙な言葉の使いまわし。というか、扉を大切に扱って欲しい、と翼は心底思う。先ほどの扉は衝撃で少し外れかけていたので緋睡が必死に直そうとしていたのだが、天真は無視。そしてそのままズコズコと翼の部屋に侵入……もとい入ってくる。
 そして勝手に翼が動けないことをいいことに部屋を散策し始める。

「ち、ちょっとぉッ先輩ッ!!」
「ほっほぉ。このゲ―ム機の姿を見ると、後輩の実に自堕落な生活っぷりが想像できるな」

 テレビの前で、すでに何かの妖怪みたくコ―ドが絡まった状態のゲ―ム機たちを見て、そんな感想を口から出す天真。
 続いて今度はゲ―ムソフトをあさり始める。このネジの外れかかっている(というか外れている)先輩を止めようにも体がガクガクでうまく動かない。
 緋睡はというと外れかかった扉と格闘中であるので、止めることができない。

「……む、翼。おれは今重要なことに気づいたぞ」
「人のゲ―ムソフト勝手にあさっといて何言ってんですか。――それで、重要なことって」

 少しばかり深刻な表情を天真はしていたので、とりあえず翼は聞いてみる。

「エロゲ―がないではないかッ!」

 ……………。もういや。
 この人はいきなり何を言い出すんだろう、と心底思う翼。

「そんなものありませんよ、先輩」
「ならAVはないのか?アダルトビデオはッ!!」
「大声でそんな単語口にしないで下さいよッ!!心底恥ずかしいし、そんなものもありませんッ!!」

 仮にあったとしても、緋睡にすべて捨てられるだろう。
 それを聞いて、天真は再び少し深刻そうにする。そして―――

「……翼よ」
「なんですか?」
「不健康だぞ」
「……………」

 あることで批判されることはあっても、ないことで批判されるとは思ってもみなかった翼。そりゃそうだろう。
 ふと緋睡をみると、なにやら疑いの眼差しで翼を見ながら扉を直していた。心底やめてくれと思う。
 やめてくれというのは扉の修理ではなく、その眼差しを。


                    *     *     *


「ぅ〜ん……やっぱりないなぁ」
「……………先輩。いい加減やめませんか?というか物置とかのぞかないで下さいよ。某ネコ型ロボットが寝ているわけでもありませんから」
「翼の家なら、居ると思ったのだがな」

――僕の家をなんだと思っているのか、この先輩は。

 ベッドで冷めた視線で物置をあさっている先輩を見る翼。緋睡はというと、「まったく下賎というものは……」とでも言いたそうな視線を翼と同じように天真に向けていた。ちなみに扉は緋睡のがんばりのおかげで直っている。

「ていうか先輩。僕の見舞いに来たんじゃないんですか?僕には先輩の行動が、僕の心労を増やすために動いているとしか思えませんよ」
「心配するな。見舞いというものは口実だ。こうやって後輩の部屋を散策するためのな」
「……」

 最低だ、このクソ先輩。鼻からミ―トスパゲッティでも食べて、息ができなくなって死んでしまえッ!!――と思う翼。
 もっともそんな死に方、あるのだろうか実に不明である。

「……おお、翼よ。そういえばあれはないのか?」
「なんですか?くだらない質問でしたら承りません」
「くだらなくなどないッ!!すごく重要なことだッ!!」

 ふと気づくと、物置をあさっていた天真の表情が真剣である。どうやらよほど重要なことのようだ。なのでためしに翼は聞いてみることにする。

「……重要なことって、なに?」
「四○元ポ○ットはないのか?――ん?どうした、翼よ。急に殺気立った視線をおれに放って」
「なんでもありません」

 どうせこんなことだろうと思ったよ。心の中で深いため息を一つする翼。
 緋睡はというと呆れかえってものも言えぬ状態。

「それであるのか?四○元ポ○ットは」
「ありません。さっきも言ったとおり、僕の家には便利道具をほいほいと出してくれる某ネコ型ロボットはいません」
「うむ。そうだったか」

 そう言うと再び物置をあさる天真。いい加減にしてくれと翼は思う。
 そんなとき、再び天真があさるのを止め、物置から顔を出す。

「翼よ。重要なことに気づいたぞ」
「なんすか」
「……なんだ?翼よ。先輩様に向かってそのような口の聞き方は。先輩様はおまえをそのような男に育て上げたつもりはないぞ。――もっとこう、毎日毎晩のようにエロゲ―やAV、アダルト雑誌を見、女子更衣室を覗き見するようにこの先輩様は育て上げたつもりだったのに」
「って、僕をどんな人間に仕立て上げようとしてるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!」
「……まぁ、それはさておきだ。翼よ、重要なことに気づいたぞ」
「なんですか?」

 このままだと無限ル―プになりそうな気がしたので、翼はまともに受け答えをしようとする。

「菓子は出してくれないのか。それと飲み物」
「………………」

 ああ、この人はもうダメだ。
 仕方なく翼は緋睡に持ってくるように言うのだった。







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