MAGIC4-3〜Battle of night/Tsubasa & Hisui VS Mint & Tomahawk〜
「Development」
ミントは足元に魔法陣を展開させる。また魔術を使うつもりのようだ。
それに気づいて天真は体勢を立て直し、ミントに攻撃しようと槍を構える。が――
「あんたの相手はあたしよ」
「ちッ。とことん邪魔だなぁ」
トマホ―クが天真の行く手を妨げる。
前衛と後衛にはっきりと分かれているミントとトマホ―ク。トマホ―クがミントを守っている間に、魔術師であるミントは魔術を発動させるといった感じだ。
「Blow an enemy down,A whip of Gods.――」
「ッ!!まずいッ!!先輩、避けろぉッ!!」
翼は一度この魔術の詠唱文を聞いたことがある。と、いうのも自分が実際にこの魔術をうけて気絶したからだ。
翼の場合は簡易的なものとは言え、シ―ルドを発生させていたので威力を抑えられたのだが、天真はさきほどシ―ルドを破壊されて全くの無防備。正直、あの魔術の直撃を受けたらただではすまない。
天真はとっさに翼の言葉に従おうとするが、逃げる行く手をトマホ―クが遮る。
「――A storm of thunderッ!」
ミントは魔法陣をまとわせた斧を大きく振るう。すると、翼のときと同じように雷の竜巻が光線のように一直線に天真に襲い掛かってくる。
防御系の魔術を発動させるにも、時間が無い。かと言って逃げ道はことごとくトマホ―クに遮られるので、直撃した。
「「ッ!!」」
翼だけではなく、緋睡も驚いた表情を見せていた。緋睡は天真の実力の程を知っているので、なおさらであろう。
少なくとも天真は、そこらのザコには負けないくらいの実力は持っていた。……にもかかわらず、その天真が倒されたのだ。
先ほどの攻撃をまともにうけて、天真は何本か木を折った先でぐったりと倒れていた。
「……おまえら」
身体が未だに悲鳴を上げる。だが、今の翼には関係なかった。
腸が煮え返りそうなほどの感情、怒りだ。
怒りと言う感情が翼の身体を動かそうとしている。
「……緋睡」
「は、はい。なんでしょうか、兄上」
緋睡は翼の表情を一目見て驚く。……いや、少しばかりの恐怖感も雑じっていた。兄に対する恐怖感が。
明らかに翼の眼が据わっているのだ。鋭い、鷹のような眼光。
「援護を頼むよ」
「……兄上、まさか戦うつもりですか?」
「そうだよ。それが何か?」
いつもの翼とは違ってた。怒りで完全に冷静さが失われている。
「……わたくしがこのようなことを申すのもなんですが、やめておいたほうが、わたくしはいいと思います。あの天真すら、歯が立たなかった相手なのですから――」
「そんなの関係ないよ」
そう。今の翼には関係なかった。そして、そう言い返すと自分の先輩を傷つけた魔術師とその連れ添いに、鋭い鷲のような眼光を向ける。
「やる気かい?あんた」
「見ればわかるでしょ」
ややいつもよりト―ンの落ちた声でそう言い返す翼。冷静に言い返してはいるが、怒りを押し殺しているように傍から見える。
「そっちの子は?」
トマホ―クは緋睡に視線を向ける。
緋睡は少し迷ったが、自分の兄が戦う気なのだ。そしてそれを、自分が援護するように言われた以上、身を引くわけにはいかなかった。
「わたくしも、おまえたちの相手をしてさし上げます」
そういうと緋睡は『召喚法』で弓と矢を召喚する。
もう、後に引く気なんてものはなかった。
「それじゃあ、――行くぞッ!!」
翼が相手との距離をつめる。標的は、魔術を唱えてくるミントだ。
当然のことながら、トマホ―クはそんな翼を行かせまいと進路を防ごうとするが、鋭い、魔力を込めた矢がトマホ―クに襲い掛かる。
それに気がつき、トマホ―クはその矢をガントレットではじこうとするが、バチィンと何かがはじけた音と共にトマホ―クはぶっ飛ばされる。
矢の先端に魔力を込め、威力を倍増させる弓術。緋睡が主力として使っていく技だ。
「ッ!Development」
危険を察知し、ミントは魔法陣を再び展開させる。………が、
「させるかあぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
ミントに剣の攻撃範囲まで接近すると、一文字に斬りつけようとする。
だが、とっさに反応したミントは魔法陣を展開させたまま、翼の攻撃を斧の長い柄の部分で受け止める。
すると今度は、力と力の押し合いとなる。ギチギチと剣の刃と斧の柄が耳障りな音を発するが、戦っている二人には関係なかった。
「兄上ッ!お下がりくださいッ!!」
緋睡のそんな言葉が聞こえたのでとっさにミントとの距離を離す。
離した瞬間、緋睡が放った計三発の矢がミント目掛けて飛んでいく。無論、魔力を先端に込めて、だ。
「Photospheres of thunderッ!―――Protect meッ!」
とっさにミントは雷の光球を魔法陣内に五つ召喚し、それをシ―ルド代わりにして緋睡の矢の攻撃をすべて防ぐ。
「Shootッ!」
残った二発でミントは緋睡に雷の光球で攻撃する。
それを見て緋睡は、懐から『守』と筆で書かれた札を二枚ほど取り出し、自分の前に盾のように札を展開させる。
すると、二発の雷の光球はその札によって緋睡への攻撃を防がれる。
「――!!」
驚くミント。あまりミントは、緋睡と同じように感情をあまり表に出さないのだが、今のは誰が見ても確実に驚いていた表情だ。
「はあぁぁぁぁぁッ!!」
翼は驚いて隙ができたところをとっさに斬りつけようとする。
ミントの足元には魔法陣は発生していない。いや、今から発生させても魔術詠唱で確実に後手にまわる。今後手にまわることはミントの敗北を意味している。
ミントは斧を構える。そして、金属音と共に翼の攻撃をミントは受け止める。
「こっのぉッ!!」
翼は力の押し合いをしたまま、一か八かの蹴りをミントに放つ。
「なッ」
想定外のことが起こり、ミントはその蹴りをまともに受け、そのまま地面に転がる。
魔力も何も込めていない普通の蹴りだったが、鋭かったのだ。
「……僕たちの、勝ちだ」
ミントに翼がそう言ったそのとき、不意に翼は腹部に拳を入れられる。――トマホ―クだ。
どうやら飛ばされた後、どうやらチャンスをうかがっていたようだ。
「かっはぁ……」
乾いた叫び声を上げ、翼は大きくぶっ飛ばされ、木に叩きつけられる。背中を直撃したため、一時的に肺の中に入っていた酸素がすべて吐き出され、無酸素状態になった翼はそのまま気を失う。
そんな翼に駆け寄る緋睡。
「それじゃ、この『ソ―サリ―・クリスタル』はもらってくよ」
トマホ―クは地面に落ちていた『ソ―サリ―・クリスタル』を拾ってそう言うと、ミントと共に宙に浮かぶ。翼が始めてこの二人と対面したときと同じように。
「じゃあねぇ♪」
「ま、まちなさいッ!」
トマホ―クの言葉に緋睡が叫ぶが、すでに遅かった。
ミントとトマホ―クはそのまま退却し、やがてその姿も見えなくなる。
学校の裏山に残ったのは、緋睡と気絶した翼と天真だけ。
辺りは、先ほどの騒動が嘘だったかのように静まり返っていた……。 |