4ードキドキしよう!ー
僕は困惑する彼女を引っ張るようにして道を歩いた。
彼女の涙はもう止まっていた。
「ねえ? どこに行くの?」
僕は、はっきりと答えた。
「君を、ちゃんと見れるところ」
「え?」
彼女が驚いた表情をする。
「それって……どこ?」
「付いてきて」
僕はそれだけ言って足を早めた。
受付で部屋番号を聞いて、ついでに飲み物の注文もすませた。
扉を引いて部屋にはいる。
「おいでよ」
「う、うん」
彼女の後ろで扉がぱたんと閉まった。
部屋には二面にソファと真ん中にテーブル。
その奧におなじみの音響設備があった。
そう、僕らはカラオケ屋に来たんだ。
部屋に入った彼女が立ったまま僕を見ている。僕も立ったまま彼女を見つめた。
「カラオケ好きだって言ってたよね?」
そういって話を切りだした。
「う、うん。そうだけど。でも……」
「ごめん!」
彼女の言葉を遮って、僕は頭を下げた。
「ごめん。僕が、悪いんだ」
ほんの少しの沈黙。それから、
「……やっぱり」
彼女の哀しそうな声が聞こえた。僕は慌てて頭を上げた。
「違う! 違う! そうじゃないよ。聞いて!」
僕の必死の言葉に彼女は目を上げた。
「僕が謝ったのは、その……君をちゃんと見てあげなかったから。見られなかったから。でもそれは、嫌いになったからじゃないよ」
「ほんとに?」
「もちろん!」
彼女が首を傾げる。
「じゃあ、どうして?」
「……恥ずかしかったんだ。ものすごく」
僕の言葉に、彼女は思いがけないことを聞いたというような、ポカンとした表情をした。
「君の姿を見てびっくりしちゃったこともある。思ってた以上に恥ずかしくて、君を見てると心臓が痛くて、それで、まともに君を見れなかったんだ」
彼女はしばらく僕を見つめ、そして、
「……男の子も、恥ずかしいの?」
ほんとうにビックリしたように聞いてきた。
「うん。そりゃあね」
「そう……なんだ」
彼女の表情が初めて柔らかくなった。
「男の子も恥ずかしくなるんだ……わたし、全然知らなかった」
そりゃあ、人によって差はあると思うけど、でも、僕は、
「大好きな人の姿を見れば、ドキドキするよ」
僕の言葉に彼女の頬がぽぅと染まった。
それを見ながら僕の心臓もまたドキドキしてくる。
まだもう一つ、どうしても言わなきゃいけないことがあった。
「それと、謝ったわけは、もう一つある」
「え?」
彼女がもう一度僕を見つめる。
「僕は、まだ……覚悟が足りなかったんだ」
「覚悟?」
彼女が怪訝な表情をする。
「うん。君をちゃんと受け止める覚悟。あの時、あんなに大見得切ったくせに、ちゃんとわかってなかったんだ」
彼女はまだ首を傾げている。
「だから、ごめん。だけど、もう、決めたから」
僕の胸が急速に緊張してくる。
「え? なにを?」
彼女が疑問を口にする。
僕はありったけの想いを込めて、その言葉を言った。
「もっともっと、一緒に、ドキドキしよう!」
そう、たとえ恥ずかしさで胸が苦しくなっても、ちゃんと彼女と一緒にドキドキするんだ。
彼女と一緒に恥ずかしがるんだ。
もう、彼女から目を離さない。
僕はそう決めた。
その言葉で、彼女の表情が一瞬驚いて、それから、ぱあっと明るく変わった。
「よかったあ」
彼女が笑顔で言った。
「あなたに振られたら、どうしようかと思った」
それを聞いて、僕も心の底からよかったと思った。
そして、思い出した。ここに来た理由。さっきの約束。
恥ずかしくても、ドキドキしても言うぞ。
「あの、ここに来るとき言ったこと……」
「え?」
「君を……みせて」
「あっ!」
彼女が両手で頬を押さえた。
「ここで?」
「うん」
「でも、明るい……」
そういって彼女は逡巡する。
僕は黙って彼女を見つめた。
彼女は一度目をつぶって、それから開いた。
そして……ボタンに手をかけた。
ワンピースのボタンが上から順番にはずされていく。
その度に彼女の白い肌がだんだん露に見えてくる。
僕はドキドキしながらそれを見つめていた。
俯いて、ボタンをはずす彼女の指が震えている。
下のボタンをはずすために屈んだ彼女の胸元にはっきりと形のいい乳房が見える。
一番下の最後のボタンをはずして、彼女がもう一度背筋を伸ばした。
そして、おずおずと服の前を拡げた。
下着をまったくつけてない、生まれたままの彼女の姿が僕の目の前に露わになった。
まるで、グラビアアイドルのような綺麗なプロポーション。
そして、白い綺麗な胸も、お腹も、長い太腿も、上気したように仄かに赤く色づいていた。
真っ赤に頬を染めた彼女が恥ずかしそうに言った。
「ど、どう? ドキドキする?」
「うん。すごく、ドキドキしてる」
「う、うれしい」
彼女が恥ずかしさに耐えられないのか、小刻みに震え始めた。
でも、どうせなら……
「映画館の時みたいに、してもいい?」
彼女はちょっと目を見開いて、それから、小さく肯いた。
僕は彼女に触れるほど近づいた。彼女が震えながら目を閉じる。
ドキドキしながら、掌を、彼女の形のいい乳房に副えた。
「あ、あん」
たちまち彼女の口から吐息が漏れた。それが、なんだか嬉しく感じた。
彼女が掴んでいた自分の服の端を離して、僕の肩を掴んだ。彼女の膝が震えている。
「あ……もう、ダメかも……立ってられないよ」
その言葉に僕は片腕を背中に回して、彼女を支えようとした。
その時……。
キイ、という音がして、彼女の背後で部屋の扉が開いた。
「うわ!」
心臓が飛び出そうで、思わず声が出た。
「お飲物持ってきました」
「えっ?! あ! うん!」
彼女が声を上げて、その直後、倒れるように座り込んだ。
僕はその重みを支えながら一緒にしゃがみ込む。とっさに彼女の服の前を引っ張った。
「あれ? お客さん、どうかしましたか?」
飲み物を運んできてくれた従業員の女性が聞いてきた。
「う……あ……うん」
彼女のくぐもった声。僕の腕の中で彼女の体がびくっと震える。
「あ、いえ……ちょっと、彼女、くらっときたみたいで。そ、外、暑かったから。たぶん、少し休めば治ります」
「そうですか。じゃあ、何かあったら知らせてください」
そういって、女性は飲み物を置くと出ていった。
「大丈夫?」
僕は急いで彼女に聞いた。
「あぁ……うん」
しゃがんでいることが出来ず、彼女はゆかに尻餅をついた。
ワンピースがもう一度はだけて、彼女の裸が僕の目の下で露わになった。
彼女が赤い顔をあげた。少し目がとろんとしている。
「こ、声……漏れなかったかな?」
「え?」
彼女の裸をドキドキしながら見ていた。
「だって、ビックリして、わたし……イッちゃったから」
あ、ああ……やっぱり、そうだったんだ。
「よ、よかった?」
「……うん。とっても」
そして彼女は、羞恥で真っ赤に染まった顔で、えへっと、微笑んだ。
とたんに、僕の胸がカーと熱くなる。
うわぁ! かわいい! この笑顔!
今日見た彼女の笑顔の中で、一番だ!
僕はたまらず彼女を抱きしめた。
そして……2度目のキスは、今度は僕から彼女にした。
それから、2時間。
カラオケ店の個室で、僕らが、なにをしたかというと、それは……
当然、歌を唱ったよ。
彼女は、とてもカラオケが好きらしい。
僕も唱ったけれど、10倍ぐらいたくさん彼女が唱った。
マイクを持って、踊りながら、僕に手を振って唱う彼女。
とても、いきいきして、楽しそうで、キラキラしている。
時たま彼女がくるっと回って、スカートからあそこやお尻が覗くんだけど、もしかして、わざとやってるのかな?
でも、もう、そのぐらいじゃ、驚かないぞ。ドキドキはするけど。
うん。最初に思ったとおり、今日はとても素敵な日になったと思う。
どうかな?
これが、僕たちの初デートだったんだ。
おわり
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