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銀杏並木

作者:キュウ
 買い物帰りに、ある公園で銀杏並木を見つけた。
 私はそれを懐かしく思い、その黄金色のトンネルに吸い込まれるように、トテトテと歩いて行った。
 こんなところに銀杏並木など在っただろうか。しばし考えてみたけど、すぐさま記憶に思い当たるものが無い。
 ただ、隙間から射れた陽の光を地面に散らばらせて、私の身体を点々とに照らしているだけ。そのどこか幻想的な空間に、そんな考えなどどうでもいいことに思えてきた。
 懐かしい記憶をなぞるように、そっと上を見上げた。……臭う。すごく臭う。
 およそ十年ぶりにその香りを嗅いだが、あの頃と何も変わらない。やはり銀杏と言えばこれだ。
 私が通っていた高校時代の華々しい記憶、その一ページ目を図々しく占める景色。校門を入ると、生徒達を銀杏の輝かしいトンネルが迎えてくれていた。その景色を私は、桜などよりもずっと鮮明に憶えている。
 だが、やはり臭かった。そこを通る人、誰もがそう思っていた。景色だけなら確かに素晴らしい。これほど芸術的な入り口が、他に在るだろうかと、何度か友人と取りざたしたこともあった。
 だが、やはり臭かった。
 だから、その銀杏並木は、多くの人から――とりわけ生徒達にはいつも嫌われていた。同情を加える余地などもほとんど無かった。
 ……それでも私には、この掌にヒラヒラと堕ちて来た黄色い葉に、言い知れない虚しさを感じられたのだ。皆が横目に樹を睨み歩く中、私はポツンと一人、歩くこともままならず、ただただ小さな命を散らずばかりの嫌われ者の横顔を見つめていた。
 足元に落ちた葉を拾い上げた。……今でもあなたは、あの時のままなの?
 私の問いかけに応える者など無く、ただただ葉を一枚二枚と渡してくるだけ。……それって、なんて言っているの? この小さな葉に、どれだけのものを詰めているの?
 私は、なんだかムショウにあのときの並木を見たくなって、母校まで走った。
 高校に着くと、古びた門柱が私を迎えた。
 ……でも、そこには銀杏並木の姿は失く、美しい桜並木が、笑顔の生徒達を穏やかに包み込んでいた。
 私は息を切らせながら、空に顔を向けた。あの時と同じだ。そして、
「ごめんね……」
 あの時言えなかった言葉を黄金の手紙に託し、風に乗せて渡した。

 目が覚めるとベッドの上にいた。
 ……全てが全て、私の幻想だったとは思いたくない。だからこそ、私は誰にともなく私は呟いた。
 今でも、返事を待っています。
気持ちの上がり下がりはあるものの、
始終ゆったりのんびりなお話になりました。
銀杏並木は僕の近所にもあり、
そこから連想したものがもとになってはいますが、
皆さんも一度銀杏並木を歩いてみてください。
何かしら感じるものがあったら、
こうしてネットのひと隅にミニ小説みたいなのを残してみてはいかがでしょうか(笑)

HP(→http://kyunote.blog.fc2.com/)にて
コメントや編集後記、ほかのお話のまとめも掲載しておりますので
ぜひこちらにもどうぞ

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