第1話 運命の出会い
結局、フシギダネは踏ん切りがつかず、丘を下って、いつものバーに寄った。
そう、パッチールのカフェである。
「パッチールさん、いつものお願いします」
「てまえのジュースはいつも同じではないですよぅ〜」
「構いませんから」
フシギダネは懐からオレンの実を取り出す。彼はいつもオレンの実を使って作る特製ジュース、オレンジュースがお気に入りだった。
「ではシギさん、いただきますね〜」
シギ。それがこのフシギダネの名であった。パッチールはシェイクする容器にオレンの実を放り込み、水を入れ、容器を閉めた。すると、見事なステップでパッチールが踊りながら手を動かす。一級品な上に、いつもステップは違うから飽きない。しかし、悪く言うとパッチールは歩く時にフラフラしながら歩く習性があったりするので、足がフラフラしているのがいつも偶然に見事なステップに見えるだけなのかも知れない。
そうしているとパッチールが、出来上がりっ!と言う声と共に容器を開け、グラスを置く。そして、容器の中のジュースをグラスへ流し込む。ストローをグラスに立てるとシギへ手渡す。
「オレンジュース、出来上がりですぅ〜」
「ありがとう」
このバーは、2つの店がある。
まず、シギがジュースを作って貰ったのがパッチールのカフェ。ココは木の実さえ持ってくればタダで特製ジュースを作ってくれる。そのために多くの探検隊から愛されている。シギもそんな1人であった。そして、もう1つの施設。今日のシギには無縁だが、紹介しておこう。
ソーナンスとソーナノが経営するみんな幸せ探険リサイクル。ココはたまりすぎた道具と交換で、別の道具と交換してくれる場所だ。
オレンの実も手に入れる事が出来る。確か穴ぬけの玉が2ついるはずだ。あ、それだと復活の種だ。
リンゴ2つだった。シギがよく行くオレンの森にもよく落ちているから事あるごとに交換してもらう。だが、さすがにオレンの実がたまりすぎることがあるからくじ引き券と交換してもらう事もしばしばだ。
コレで運良くいけば、カクレオンの店で数千円程する高価な技マシンがたまに手に入る。この世界のお金は確か、円ではなく、ポケである。それを忘れてはいけない。
とにかく、探検隊にとってココはオアシスにも等しい。疲労が溜まった体を休めるのには最高の施設だ。
そこへバーの扉が開く。リオルが入ってきた。誰も気には止めない。誰でも歓迎が、このバーの常識だからだ。しかし、シギは見逃せなかった。
リオルの足がふらついていた。そして、体もフラフラしている。大分、疲れているのは解った。シギとリオルの目が合う。シギは座れ、とジェスチャーした。
リオルは素直に座りに来た。
「少し待ってて」
急いで誰も並んでいないパッチールの元へシギは走る。シギはオレンジュースをもう一本、注文した。別にストックは沢山あるから余裕な顔を浮かべる。
そうしてできたジュースのグラスをつるのムチでしっかり掴み、リオルの元へ持っていく。
「……」
リオルは無言で待っていた。無口なのか、シャイなのかは分からない。
グラスを置くと、こう言った。
「どうぞ」
「…………」
リオルは無言ながらも顔はひどく驚いていた。このリオルにもマナーはあるのか、大声は出さなかった。
一気にリオルはストローでジュースを吸い上げて飲む。シギも同様に飲んだ。
「君、誰?」
飲み干したシギが聞いた。リオルは無言である。その目の前には既に飲み干したグラスが置かれている。
「外にこい」
リオルは静かにこう言った。どこかひどく焦っているように見えた。連れて来られたのは海岸であった。
リオルは次の瞬間、こう言った。
「俺、人間なんだよ。何でリオルなんかに……」
「ぇ?」
シギはイマイチ信じきれない。人間? まさか、そんなバカな。
「嘘でもいい。俺から言うとポケモンが喋るなんて信じられない」
確かにリオルはシギが話し掛けた時、ひどく驚いていた。よくよく考えれば、辻褄は合う。
リオルの目に嘘は無かった。いや、シギにはそう見えたのだ。
「君、何か覚えてない?」
「何も。ただ、自分の名前と自分が人間だったことしか覚えてる」
「名前?教えてよ」
「デルタだ」
デルタ。確かに人間なら有り得そうな名前だ。でも、ホントにそうなのかはシギに分かるわけがない。
「シギ〜〜〜〜〜!!」
シギを呼ぶ声。女の子の声だ。デルタはシギをからかうようにこう言った。
「ガールフレンド?」
「ち、違うよ!」
シギは顔を真っ赤にして反論した。そんな事を言う余裕がよくあるな……とシギは思っていた。やってきたのはエネコである。その首にはスカーフが巻かれていた。
赤色のスカーフ。ただの装飾品である。
「シギ、約束は?」
「ぁ……」
シギはエネコに用がある、と確かパッチールのカフェに呼んでいたのを今、思い出した。そのためにわざわざ昨日、パッチールに頼んで席を2つ予約させてもらったのだ。
「そちらの子は?」
シギは軽く説明した。エネコが信じる信じないかは別として。
「人間ねぇ……。私はエネ。エネコのエネよ、アナタは?」
「デルタだ」
「宜しくね」
エネとデルタは軽く握手を交わす。確かこんな感じの話を聞いた事がある。そうだ、あったじゃないか。伝記にもなり、絵本にもなっている。
フレリーズのリーダー、レッカと同じ状況じゃないか!コレは凄いチャンスだよ!!とシギは考えていた。
「シギ、誘う気?」
エネは見透かすようにスバン!とシギに言った。完全にバレている。とにかく、シギはデルタにこう言った。細かい事は云々にして。
「探検隊、やらない?」
「は?」
デルタは馬鹿馬鹿しい、と思った。自分の事を探らなきゃならないのにそんな事をする暇などあるわけない、そう言い返す前にシギが話を続けた。
「昔、いたらしいんだ。君と同じ状況を持った者がね」
「マジか?」
にわかには信じられなかった。しかし、仮に本当だとすると無視は出来ない。
「案内してくれよ。何か知ってんだろ?」
「条件」
シギはそう言った。デルタはそこまでバカじゃない。すぐに解った。
「探検隊か……面白そうだし、仕方ないな。やってやるよ」
デルタは承諾した。交渉成立である。エネはこんなことを考えていた。
(……ようやくパートナーが決まったわね、シギ……)
エネは自分の出る幕はない、と考えたのか背を向けて帰ろうとする。体が動かない。多分、尻尾を掴まれたのだろう。犯人はデルタであった。
「やろうぜ、探検隊」
「……」
デルタの力は凄まじかった。1ミリも動かない。ワンリキーではあるまい。デルタはリオル、なのだ。これは素直にやった方が早い、とエネは考えたし、エネは少しながら探検隊に興味はあったのだ。
「わかったわよ……やればいいでしょ? バカ」
「「――!?」」
エネは少しキツくなりすぎる時がある。ツンデレなのかもしれない。
デルタが聞いた。
「どこに行くんだ?」
「プクリンのギルドだよ」
シギが歩く。その後ろをデルタとエネが追う。
こうして彼らは出会った。
そして、この出会いから再び長き物語が始まるとは、誰も知るワケが無かった。
目的地はプクリンのギルド。
日は既に傾きだし、深紅の空に海は赤く染まる。そして、その海岸を3人は歩くのだった。
デルタ
「新主人公、デルタです。宜しく」
シギ
「相棒のシギです」
エネ
「ヒロインのエネです」
何か律儀だな、君たち……。
デルタ
「普通だ」
次回はギルド入門のお話です!
シギ
「さりげなく、長かったね」
エネ
「バカ作者だから、描写はヘタだけど」
厳しすぎるぞ、オイ!
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。