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5話* 「やっぱり魔法の国だ・・・」

 お城の周りにあった、森から外に出るのは意外と容易いものだった。こんな広い森をすぐに出られるわけがないとたかをくくっていたのだが、不思議な事に私が城の門をくぐると同時に森の地面が一筋の道となったのだ。


「やっぱり魔法の国だ・・・」


 元の世界では確実にありえない現象。しかしこの世界だから自分自身も許せてしまうから不思議なものだ。その一筋の道を歩いて森を抜けると、RPGのような町並みが広がっていた。可愛らしい家々を抜け、大きな広場に着く、そこでは賑やかな出店が並び、活気良い声が響いている。


「すごいな・・・」


 現代の日本では見る事の出来ない店を眺めながら歩いていく。


「そこのお嬢さん 良かったらあげるよ」


 後ろから聞こえた声に、振り返るとそこには山盛りの果物を売りさばいているおばさんが私に綺麗な赤色をしたリンゴを私に差し出してくれていた。


「いいんですか?」


 その差し出されたリンゴを見て、声を掛けるとおばさんがニッコリと微笑みながら頷く。


「あぁアンタの瞳の色は珍しいからね 記念にだよ」

「そうなんですか?」


 その言葉に首を捻る。私の瞳の色はごく普通の黒。私が髪を染めていなかったら、瞳と同様髪色も黒。それがなぜ珍しいのだろうか・・・・


「あぁ瞳の色が黒の人間なんて、この世界には1万人に一人くらいの割合さ。私も今日初めてだよ 黒い瞳の人間に会ったのは」

「そんなに珍しいんですか!!」


 驚きすぎて、大声を出してしまった自分の口を思いっきり押さえる。


「ごっごめんなさい つい驚いて」


 その声におばさんが肩を震わせながら笑う。


「アハハハ そんなことも知らないなんてな あんたはどこかの良い家柄の娘なんだね」

「そんなことないと思うんですが」


 今現在は、王様の養子候補という有難くもないレッテルを持っているが、前の世界では普通の一般庶民だった。なのにどこぞのお譲と言われなんだか悲しい気さえしてくる、やっぱり私はこの世界の事を何も知らないらしい。その現実に外に出てよかったと改めて思った。


「それでアンタみたいなお嬢さんがこの広場で何してるんだい?買い物って感じでもないだろう」

「分かりますか?」

「そりゃあね 私はここに何年も店を出してるからね、客とそうじゃない人の違いはなんとなく分かるんだ それでアンタは?」

「私は、この街を知るために観光してるんです」


 その言葉に、おばさんが微笑む。


「あぁそうかい それじゃあいい事教えてやるよ ここの広場の右に道があるだろう」


 おばさんが指差した方向に目を向けると、そこにはおばさんが言うとおり道がある。しかし、とても薄暗く狭い感じだ。この手の異世界ファンタジーものにはあんな感じの、道に行くと怪しげな男たちに襲われるという構図を良く見る。


「あっ あそこですか・・・」


 少し引き気味に呟く。


「そんなに怯えることはないよ この町はお城のすぐ下にある国の保護区域だ。だから治安は他と比べ物にならないくらいにいいんだ」


 その言葉に、安堵の溜息を吐く。まぁ私は可愛くもないし、美人でもない、しかもお金も持っていないのだ。間違いなく襲われない部類の人間だ。しかも、ここは保護区域ということはまったくもって危険はないということになる。


「よかった」


 その言葉におばさんが苦笑いをした後、再びその道を指差す。


「あそこの通りを抜けると、とても美しい湖がある。まぁ水の国のアビリスの湖には叶わないが、とても綺麗だよ 一度見ておいで」

「そうなんだ」


 私も一応女 美しい景色や可愛らしいものには少しばかり目がない。美しい湖というならぜひとも見たい。


「分かりました!! じゃあちょっと行ってきますね おばさん ありがとう」


 おばさんから貰ったリンゴを手に持ったまま手を振りながら、その曲がり角に向かうと、おばさんも同じように手を振ってくれた。

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