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白の涙。 作者:朝登 優
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ねずみ色の成因。


「先生、今日は帰る、ね」
「え…あ、甲斐崎!」
『へ?甲斐崎?』
「…ユキ…てめぇ」
『えっ俺?なに怒ってるの先輩』

 大切な人との逢瀬を邪魔した後輩は、訳が分からない、と電話の向こうで本気で悩んでいるようだった。

 いや、こいつが悪いんじゃない…俺が空気を悪くしてしまったのだから。
 あと強いて言うならこいつの名前が『美幸』と書いて『ヨシユキ』と読むが為によく勘違いされるというくらいで……

『…先輩?』
「…はあ…や、いい。でなんだよ、返答しだいではコロス」
『ちょ、ちょっと聖職者がコロスとか言わないでよ…ねえそれより甲斐崎って…彼女?』
「ああ?…違うよ」

 彼女、ではない。
 男だし。

『ふうん、じゃあ彼氏だ』

 隠す気はないけど、相変わらずこいつはばかだ。

「そうだよ」
『え、マジ?』
「悪いか?」
『まさか。応援するよ』
「ほう?たった今お前のせいで帰っちまったんだが」
『え…あ、すんません』

 ソファに深く座りなおしてタバコをくわえる。
 最近は禁煙してたんだけどな…

「で、用件は」
『あ…それが…』

 この後、乗用車と事故ったというこいつを迎えに行くことになり、あまつさえ家に送り届けてやった。
こんなやつ放ってすぐに甲斐崎を追いかけたかったけれど、まだ、俺にはそれをする資格がない。


 しかしまさか送り届けた先で甲斐崎に逢えるなんて、俺は信じたこともない神に生まれて初めて感謝した。




 …驚いて目を見開く甲斐崎がひとり泣いてなくてよかった、なんて柄にもなく思った。




      
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