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白の涙。 作者:朝登 優
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2/11

白の思想。

「甲斐崎、美術館行こうか」

 先生はそう微笑みながら僕に横長のチケットをくれた。



「…先生、どうして一度近くで見てからバックするの」

 休日。先生と美術館へきたのはいいけれど、やたらバックしてくる先生がさっきからドカドカ他人にぶつかるのだ。

「ん?んー…この絵画をこの距離からみてどう見える?」
「随分ざっくりした荒い作品だと思う」

 それは、大きなキャンバスに描かれた蓮の浮いた湖の絵画だった。

「そうだね。じゃあ…少し下がってみようか。それまで絵画を見つめていて」
「?…うん」

 先生の手を借りてゆっくり下がっていくと、段々と細かい線が見えなくなって、とても綺麗な蓮の浮いた湖の絵画になった。

「あ…」
「ふふ。さぁここに座ってごらん、この目線が一番美しいんだよ」

 後ろにすとん、と座らさせたのは革張りの小さなチェアだった。
 先生は僕の後ろに回って顔を横に寄せて小さく笑った。

「いつまでも見てしまうだろう?」
「うん…きれいだね」
「この差がたまらなく好きなんだよ」

 子供が内緒話をするように話す先生の声に耳を傾けながら僕と先生は暫くその絵画を眺めていた。



「凄いね、あんな小さいカンバスもあるなんて思わなかった!」

 美術館を見た後、昼食を食べた僕達は美術館で話せなかった分を取り戻すように話した。

「うん。楽しそうでよかった。甲斐崎は小さなカンバスに描かれた絵画が好き?」
「うんっなんか、凄く、なんていうのかな…写真よりも暖かい感じがする」

 言葉がうまく出てこなくて、ちゃんと伝わったか不安だったけれど、先生の表情にほっと息をついた。よかった、伝わったみたいだ

「甲斐崎らしい」
「そうかな」

 先生は、楽しそうに笑っていた。
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