夜の笛
15.1.14 推敲(微細)
夜、テレビを見ていたら、か細い音が聞こえた。
笛の音のようだった。始めは無視していたが、だんだんと気になりだしたので、上着を着て表へ出た。裏の方から笛の音は、ぴぃー、ぴぃーっと細く聞こえている。道へ出て家の裏の方を見ると、裏手の角にある電信柱の蛍光灯の明かりの切れ目の暗がりに、何かいるようだった。そちらから笛の音も聞こえてくる。
歩いて近づいた。どうやら子どものようだった。小さな笛を手に持っているようで、それをぴぃー、ぴぃーっと吹いている。
「ちょっと。」
声をかけたが、こちらを見ない。私は蛍光灯の明かりの下に立っている。子どもは暗がりにいる。
「ぼうや。」
聞こえないのだろうか。まだ笛をぴぃー、ぴぃーっと吹いている。俯いて吹いている。私は、戸惑ってしまってじっと子どもを見下ろしている。
「ちょっと。」
また、私は声をかけた。すると、子どもは笛を吹くのをやめてこちらを見た。随分と暗い目をしているなと、思った。
「おじさん。呼んだね。」
子どもは、とうめいなでも暗いこえで言った。
「こんなところで、何をしているんだい。」
私はこんな子が近所にいただろうかと、思い出しながら尋ねた。
「笛を吹いているんだよ。」
「どうしてこんな夜に吹いているんだい。」
「悪魔の笛を吹いているんだよ。」
子どもの返事を聞いて、私は背筋に冷たいものが走った。まずいと、思った。
「そうかい……。早く家に帰るんだよ。」
私はその場を離れようとした。
「だめだよ。もう、だめだよ。」
子どもはなぜかそう言って、私についてくるようだった。
「帰りなさいよ。」
「おじさん。怖いの。」
「何を言ってるんだ。帰りなさいよ。」
私がそう言って歩き出すと、子どもは立ち止まった。そして、また笛をぴぃー、ぴぃーっと吹いた。
私は蛍光灯の明かりの切れた暗がりにいた。子どもは明かりの下にいた。
そして私は俯いて小さな笛を、ぴぃー、ぴぃーっと吹いた。