いつも君を見ていた。
明るく素直な君は人気者で、いつも周りには人がいる。
僕とは正反対の君・・・・
「小泉、掃除当番代われよ」
「あ・・・うん」
嫌だと言えない僕に、みんな仕事を押しつけてくる。
そりゃまぁ僕が悪いんだけどさ・・・
「ちょっと、だめだよ!今日は小泉くんが当番なわけじゃないでしょー」
「華岡〜まぁ良いじゃんw」
「だめっ!!」
そう言って僕が持っていたほうきを彼らに渡す。
「しっかりやってね!」
「へいへい」
助かった。
掃除やんなくてすむんだ。
「もーちゃんと断んなきゃだめだよー?小泉くんだって掃除なんてやりたくないでしょ?」
「・・・でも、僕は別に・・・」
「優しいのも良いけど、つけこまれちゃうよ」
違う、別に優しいわけじゃない。
ただ僕が弱虫だから言えないだけなんだ。
それに、好きな人に助けられるなんて・・・
僕ってなんて情けないんだろ。
僕なんか彼女の足下にも及ばない。
想っていても無駄なだけなんだ・・・
帰り道、いつもと違う道を行ってみた。
なんとなく今日はまだ家に帰りたくないから遠回りをした。
「離してよっ」
近くで女の子の叫び声がする。
この声は・・・華岡さん?
僕は思わずその場へ行ってみた。
「良いじゃんちょっとくらい〜」
「俺らと遊ぼうぜー!」
「やだって言ってるでしょっ!!」
華岡さんが男2人に腕を捕まれてた。
ど、どうしよう・・・
助けたい・・・けど、怖いよ。
でもでも華岡さんすっごく困ってるし・・・
「はっ・・・華岡さんを離せ!!」
僕は男の腕を掴む。
「あ?んだてめー」
「は、華岡さん嫌がってるじゃないか。離せよ」
「こ、小泉くん」
「うざってやろーだなぁ」
そう言って1人の男が僕に殴りかかってきた。
「ぅわっ・・・?!」
「小泉くっ・・・・・・・誰かぁっ!!!!!」
華岡さんが大きな声を上げたとともに、男は殴るのをやめた。
「ちっ。興ざめだぜ」
「行こうぜ」
そして男たちはいなくなっていった。
よ、良かったー・・・
無事だった。
殺されるかと思った。
「小泉くん、大丈夫?」
「あ、ああ・・・うん」
「ありがとう」
小泉さんが二コッと微笑んだ。
「え・・でも僕なにもしてないよ」
「そんなことないよ。小泉くんがきてくれなかったらどうなったかわかんなかったもん」
そっか・・・
僕、華岡さんの役に立てたんだ。
「怖かったよね?ありがとう」
そして、その日を境に僕らはじょじょに話をするようになっていった。
と言っても、いつも話しかけてくるのは彼女ばかりで、僕からはまだ一度も話しかけたことはない。
迷惑なんじゃないかとか
学校の奴らが見て変に思うんじゃないかって考えると、どうも話しかけづらい。
・・・なんてのは口実で、勇気がないだけ。
弱虫で臆病な僕なんて嫌だけど、なかなかなおせない。
「ねぇ小泉くん、今から暇かな?」
「え?うん・・・」
「じゃあ手伝ってほしいことがあるんだけど」
どう言って彼女は中庭へ僕を誘導する。
「花壇のお手入れ手伝ってほしいの」
「あ、うん。良いよ」
僕はシャベルで土を少し耕す。
花壇の手入れはけっこうよくやるから、もう慣れてるんだ。
「ごめんね、嫌だったよね。でも小泉くんにしか頼める人いなくって」
「ううん、僕花とか好きだから全然だよ」
「ほんと?」
「うん」
それに、華岡さんと一緒にできるんだ。
これ以上の幸せってないよ。
「良かった。あたしまた小泉くんが嫌って言えないだけかと思ってた」
「え?」
「小泉くんには嫌なことは嫌って言ってほしいの。やりたいことはやりたいって言ってほしいの。堂々としてるほうが良いよ」
「そうかな・・・」
「うんw」
堂々としてる僕・・・か。
考えたこともないな。
「それにまだ1回も小泉くんから話しかけてきてないのよーw」
「あ・・・なかなかタイミングがなくって」
「そんなのいらないってwいつでも良いから気軽に話しかけてよ。あたし小泉くんとはもっと仲良くなりたいんだっ」
「どうして・・・」
どうして僕にそこまでしてくれるの?
どう言いたかったけど、やっぱり勇気がなくって言えなかった。
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「は、華岡さん」
「んー?あっ小泉くん!」
「あの・・・先生が華岡さん呼んでこいって・・・」
「なぁんだー。てっきり話しかけてくれたのかと思ってたのになぁ」
そうして彼女は渋々先生のとこへ行く。
僕も席に戻ろうとした。
「おい小泉」
「え・・・」
「お前最近華岡と仲良いよなぁ」
それはこの前掃除当番を押しつけようとしてきた中丸だった。
「じゃあいつでも華岡に助けてもらえるってわけだ?なっさけねー」
・・・確かにその通りだ。
言い返す言葉もない。
「だけど勘違いすんなよ。華岡は誰にでも優しいんだからな。お前だけじゃねぇんだよっ」
「・・・わかってるよ」
そうだ、華岡さんが優しいのは元からで、僕にだけじゃない。
僕と華岡さんじゃ全然違うんだ。
そんなことはじめからわかってたことなのに・・・
なに期待してるんだろう。
「やほー小泉くん☆」
「あ・・・うん」
「?どしたの?なんか変だよ」
「別になんでもないよ」
そう言って僕は華岡さんの前から立ち去る。
これで良いんだ。
もう華岡さんにも迷惑かけちゃいけない。
ただ僕がこんなだから話しかけてくれるだけ。
だから、良いんだ・・・これで。
だけど、なんで?
今心の中はすっぽり穴が開いてるような感じがするんだ。
僕は華岡さんのことが好きだ。
それすらも伝えられないなんてのは・・・やっぱり嫌だ。
「元気ねぇじゃん、華岡」
「中丸くん。んーちょっとね」
「なにしたんだよ?」
「最近小泉くんがなんだかよそよそしくって」
「ああ、それなら俺のおかげよ」
「え?」
「俺があいつにお前とあいつの立場をわからせてやったんだ」
僕はやっぱり諦めたくないから、だからせめて最後に伝えようと、その足で華岡さんの元へ向かう。
・・・あれ、華岡さん中丸と話してる。
どうしようか、後にしたほうが良いのかな。
「ちょっと・・・それどういうこと?!」
「だから小泉にうぬぼれんなって言ったってことだよ」
え・・・僕?
「華岡は誰にでも優しいからお前だけじゃないってな」
またそれか。
でもなんでそれを華岡さんに話してるんだ?
「さいってー!!」
そう言うと華岡さんは中丸の頬をパンッと叩く。
「いっ・・・」
「あたし小泉くんだから仲良くなりたいって思ったのよ!誰でも良いってわけじゃない!」
え・・・そうなの?
僕がこんなだからってわけじゃないの?
・・・僕も言わなきゃ。
今ここで言わなきゃ一生弱虫で臆病のままなんだ。
僕は一歩を踏み出した。
「中丸」
僕は中丸の前に立つ。
「こ、小泉くんっ」
華岡さんは僕が突然現れてびっくりしていた。
「僕・・・僕はこんなだからなにを言われても仕方ないけど、でも華岡さんを傷つけるようなことだけは許さない」
「こ、小泉・・・」
「次なんかやったら今度はその面ぶん殴ってやる」
そして僕は向きを変えて、華岡さんに言う。
「僕は・・・華岡さんが好きだ」
いつまでも守られてばかりなんて嫌なんだ。
今度は僕が君を守りたい。
「小泉くん・・・」
立場が違うって言うんなら、僕が華岡さんのその立場とやらに追いついてやる。
逃げるだけの人生なんてもう嫌だ。
そう思えたのは、君のおかげ。
「・・・あたしね、ずっと前から小泉くんのこと見てた」
「え」
「強風や雨で荒れた花壇をいつも綺麗にしてくれてたよね。そんな小泉くんとずっと仲良くなりたいなって思ってたの」
僕が歩めば、世界が変わる。
「これからも一緒だねw」
それは、僕という世界の扉が開けた証拠。
たくさんたくさん坂道や曲がり角があったけど、でもやっと1つの道に辿りつけた。
「華岡さん・・・」
勇気という名の扉を、僕は今ここで開いた。
fin |