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ゾット帝国親衛隊ジンがゆく!外伝~異能の力と流れ雲~

作者: 剣竜

裕P先生の小説『ゾット帝国親衛隊ジンがゆく!~苦悩の剣の運命と真実の扉~』の小説の二次創作です!

裕P先生の大ファンなので、許可を頂き書かせていただきました!

これとは別に、連載版である『ゾット帝国物語外伝 丘の民の伝説編』も現在執筆中、カイト編外伝の『ゾット帝国騎士団カイトがゆく!外伝~疾風の少女と白き龍~』も掲載しています。

『丘の民』の方は本家要素は低めで、あくまで世界観を掘り下げる話です。

もし未読であれば、そちらも一見して頂けると嬉しいです。

ゾット帝国でも有数の高級リゾート地、『キリカ』。

沿いの街並みが宝石の様に綺麗だ。

背の高いビルやオレンジ色の屋根、高架や鉄橋、港に停まった船やヨットハーバーが見える。

高架上では小さい車が縫い目の様に走り、鉄橋上で貨物列車が走っている。

街の向こうには青い海が広がり、陽光でキラキラと海が光り、大きな貨物船や小さな船やヨットが見える。

様々な娯楽施設があるこの街には連日多くの人が訪れていた。

ゾット帝国有数の科学者を父に持つ少年『ジン』、そしてその使用人である『麻里亜』もそうだった。

彼らは父の旅行ついでに、このキリカにある遊園地にやってきていた。


「麻里亜ぁ~、早くしようよ~」


ジンが麻里亜をせかす。

人ごみが苦手なのか、麻里亜は人を避けながらなんとかこちらまで歩いてきた。


「ジン様、遅れてしまい申し訳ございませんでした」


「もしかして麻里亜って人が多いのって苦手なの?」


「いえ、そう言うわけでは…」


「もしそうだったならごめん、こんなところに無理やり連れてきちゃって…」


ジンの父は旅行先でも仕事の対応などに追われがちなため、この遊園地には二人で来たのだった。

行く前は麻里亜は何も言わなかった。

だが、もし内心で嫌だと思っていたらと思うと、ジンは途端に彼女に対し申し訳ない気持ちになる。


「大丈夫ですよ、慣れていないだけです」


「そうなの?」


「はい、こういった場所には来たことが無かったので…」


ジンは彼女の過去をよく知らない。

昔から仕事で忙しい父の代わりに自分の世話をしてくれてはいたが、それ以前のことになるとわからないのだ。

そもそも麻里亜は、どこで生まれ育った?

父は何故、家庭教師としてやってきた麻里亜を教育係として雇ったんだ?

ジンは何度か考えたことがあった。

そして実際に父に尋ねたこともあった

しかし、父は答えなかった。


「(たまに気になるときもあるけど…麻里亜は麻里亜だよね…)」


そう考え、深くは追及しなかった。

ジェットコースターや観覧車など一通り回り終えた二人。

人ごみを離れ、少し離れたベンチに二人で座る。

他に何か面白いものはないかと入場の際にもらったパンフレットを開く。


「麻里亜、何か行きたい場所は無い?」


「いえ、私は特に何も。ジン様は?」


麻里亜が淡々とした口調で言う。

今まではあまり女の子の喜びそうな所は回っていなかったため、できれば彼女に選ばせてあげたかった。

だが、麻里亜は特に行きたいところも無いという。

ジンは今まで彼女に対し女らしいところを見たことが無い。

改めてパンフレットを見回すジン。


「僕も特には…あ、午後からサーカスが始まるみたいだ!」


パンフレットには、有名なサーカス団が広場でショーを行うと書かれていた。

時間は午後から、あと数分だ。

ジンは麻里亜をつれて駆け足で向かった。


「何故そんなに急ぐのですか?」


「このサーカス団、かなり有名でゆっくりしてたら人で埋まっちゃうよ!」


このサーカス団は毎回大きなテントを張りその中でショーを行う。

動物や多数の道化師などが登場するといったオーソドックスながらも非常に見ごたえのある内容だ。

また、ゾット帝国内にはサーカス団はこれ以外にはほとんどいない。

動物を用いたものとなるとなおさらだ。

それゆえ知名度と人気も高く、すぐに人が集まってしまうだろうことは簡単に予測できた。

急いでジン達も向うが、既に席は満席となっていた。


「もうこんなに人が…」


「すいません、何せすごい人気でして…」


道化師の格好をしたチケットの販売員が平謝りを続ける。

しかし、テントの周りにはサーカス団とは関係の無い大道芸人たちが何人も集まり芸をしていた。

販売員によると、自分たちを少しでも売り込むためよく集まってくるのだとか。


「もしよかったら彼らの芸を見ていってください、中には本職のサーカス団員よりも勝る者もいるかもしれませんよ?」


販売員が不気味な笑みを浮かべながら言う。

ジンと麻里亜はサーカスのテントの周りに陣を取る大道芸人たちを見るため、歩き始めた。

そんな中、ジンはふと気になる点を見つけた。


「何でみんな手前に空き缶とか箱とか置いてるの?」


麻里亜に尋ねるジン。


「もし芸がいいと思ったらあの中にお金を入れるのです。硬貨数枚でいいでしょう」


そう言う麻里亜。

ジンは比較的上流階級の出身のためこういうことは知らなかった。

麻里亜の知識に感心するジン。

だが、彼はふと思った。


なぜ麻里亜はそんなことを知っているのだろうか?


と…

だがそんな疑問を打ち消すように、ジンの前には次々と変わった芸を持つ大道芸人たちが現れた。

シェルマウンド出身の自称モグラ人間、観葉植物の世話をするゴリラとその飼い主、クソザコレスラーetc…

そんな中でも特にジンの目を引いたのが、伝説の幻獣『クチオナルア』の幼生体だった。


「さぁさぁ、これが伝説の幻獣『クチオナルア』の幼生体だ!見ていってくれ!」


展示している男が木の棒を片手にそう叫ぶ。

いかにも胡散臭そうな男だった。

しかし『クチオナルア』と言えば、かつてラウル地方に存在したと言われる伝説の幻獣。

飛行能力は持たないが、れっきとした竜の一種で。

成体は非常に狂暴な性格をしているとラウル古代遺跡の古文書に記されている。


「すげぇ!『クチオナルア』だ!」


「まさか本当に実在してたなんて!」


通りすがりの者達がその足を止め口々にそう呟く。

王都ガランにはその標本が一つだけ残されている、などの噂もかつては流れたがその真相は闇の中。

みなが興味を持つのも無理は無い。

ジンも幻の生物をみて非常に興奮している。

しかし…


「これは『クチオナルア』などではありません」


麻里亜がその生物の尻尾を乱暴に掴み軽く観察する。


「ちょ、ちょっとあんた!俺のクチオナルアに何を!?」


「これは塗料で色を塗っただけの、ただのコモドドラゴンです、幻獣でもなんでもありません」


「な、何を…こいつは確かに…」


「ゾット帝国では珍しい生物には違いありませんが、南の大陸には沢山生息しています」


いつものように淡々と言う麻里亜。

それを聞いた他の人々は一気に目が覚めたようにその場を後にする。

やはりクチオナルアなど幻に過ぎなかった、と言い残して。


「しかし、コモドドラゴンは捕獲は禁止されていたはず。あなたはこれをどこで…」


「まさか、密りょ…」


ジンがそこまで言いかけたその時、男は手に持っていた木の棒を振り回し二人を威嚇してきた。


「お前らのおかげで客はみんな逃げちまった!お前らもとっとと消えろ!」


男がそう叫ぶと、ジンは麻里亜を連れ急いでその場を後にした。

少し離れた場所で息を切らせながら、ジンは麻里亜に言った。


「ま、麻里亜いきなりあんなことしなくても…」


「何故ですか?私は本当のことを言ったまでですが」


「け、けどさ…」


「?」


「もういいよ…」


自分が何故そう言われたのか、麻里亜は理解できていないようだった。

彼女はたまに空気が読めないところがあるのだ。

こればかりは何度言っても治らなかった。

気を取り直し、別の大道芸人を見るジン。

しかし、先ほどのコモドドラゴンの男を見た後だとどれも非常にいい加減でチープなモノに見えてくる。

一気に萎えてしまい、見る気力が段々と薄れてくるジン。

少し早いがこのまま帰ろうか、そう思ったその時、彼の眼に一人の大道芸人の少年が目に入った。


「あ、あの人…」


その年はジンよりも少し年上か麻里亜と同じくらいだろうか?

仮面舞踏会で使うような仮面をつけておりその顔全体を見ることはできない。

しかし、何か人を引き付ける『何か』があった。


「…見ていきますか?」


その少年が言った。

ジンは黙ってうなずく。


「ふふ、そうですか」


ジンは少年の付けているマスクに目をやった。

妙な模様と形をした、この辺りではなかなか見かけない代物だ。

以前本で読んだ東方大陸の文化圏の民族が持っていたものに似ているが…

ジンの視線を感じ取ったのか、少年がジンに言う。


「この仮面が気になりますか?」


「は、はい」


「…昔、事故で顔を焼いてしまいましてね」


「す、すいません…そんなこときいちゃって」


「いえ、別に大丈夫手すよ」


「あなたの名前は?」


少年と人の会話に無理矢理割り込むように麻里亜が尋ねた。

彼女が自発的に人に名前を尋ねるなど珍しい、そう思うジン。


「…ヤクモと申します」


そう言うと、少年は懐からカードの束を取り出した。

どうやら彼の芸はカードを使用した物のようだ。

それらを弾き、数十枚のカードが全て規則正しく宙を舞う。

美しい曲線を描きながら、彼の手元へと再び戻って行く。


「すごい!」


「簡単な札操術ですよ」


そう言いながらも少年はさらに動きを早くしていく。

しかしその動きは決して崩れることは無い。

彼は小さなカードボックスを裾から出し、手の上にのせる。

そしてその中に一寸のズレも無く次々と空を舞うカード達を収納していった。

この一連の芸はわずか数分の間の出来事に過ぎなかった。

軽く礼をし、芸を締めくくるヤクモ。


「ご視聴ありがとうございました」


そう言うと、ヤクモは先ほどのカードボックスからカードを取り出しそれを地面に敷いてある布に並べだした。

並べられたカードは二十二枚。

先ほどは気付かなかったが、よく見てみると神秘的なイラストが表面に描かれている。


「これはとある砂漠の国に起源を持つタロットカードと呼ばれる占い札です」


「タロット…?麻里亜、知ってる?」


「はい、中世の魔術師も用いたといわれるカードですね」


「ふふ、そうです。今回は大アルカナのみで小アルカナは使用しません…」


そう言ってヤクモは二十二枚のカードを全て回収し、カット&シャッフルを繰り返していく。

それを複数セット繰り返し、カードの順番は完全にばらばらになった。

そして裏面にして並び直す。


「ここからお一人ずつ、二枚のカードを引いてみてください」


どうやらタロットカードを用いた占いをするらしい。

まずはジンか一枚のカードを引く。


「最初に引いたカードはあなたの『現在』と『近い未来』を写す鏡…」


ジンの引いたカード、それは正位置の『世界』のカード。


「正位置の『世界』…!」


「え、それってすごいの?」


「…もう一枚どうぞ」


再びカードをシャッフルし、カードを差し出すヤクモ。

『世界』のカードはジンの『現在』と『近い未来』を現すカードということになる。

そして次に引くカードが『遠い未来』を指し示すカードだ。

ジンが引いたカード、それは…


「再び正位置の『世界』…!」


ジンの引いたカード、それは二回目の『世界』だった。

確かに一度引いた『世界』のカードはヤクモが回収しカードの束に再び混ぜた。

しかし、二十二枚のカードの中から連続で『世界』を引く確率は僅か四百八十四分の一。

しか今回の場合は二連続で正位置。

こうなるとその確率はさらに低くなる。

まさかの出来事に驚くヤクモ。


「…世界は完璧や正確無比などプラスのイメージがとても強いカードです」


「それが二連続!?やったぁ!」


「次はそちらの方、どうぞ」


そう言って麻里亜にカードを差し出すヤクモ。

一切迷わず、彼女はカードを引いた。

それが彼女の『現在』と『近い未来』を写す鏡となる。

引いたカード、それは正位置の『塔』のカード。


「逆位置の『塔』ですか。不幸、無念…」


「塔、確か正位置でも逆位置でもマイナスの意味を持つ唯一のカードですね」


「…知っていましたか」


麻里亜はタロットの意味を理解していたようだ。

しかし、そのようなことは一切気にせず二枚目のカードをめくる。

そのカードはタロットカードにおいて十三の番号が割り当てられた『死神』の正位置。

『死神』の正位置は停止、終末、消滅といった非常にネガティブなイメージを持つ。

連続して不幸な札を引いてしまった麻里亜。


「死神…ですか」


「ま、まぁ気を落とさないで麻里亜。単なる占いだからさ」


ジンが麻里亜を慰めるように言った。

だが肝心の麻里亜は特に気にも留めていないようだった。

とりあえず一通りの芸を楽しませてもらったので、ヤクモに礼を言い小銭を渡す二人。

そしてその場を後にした。

しかし、ジン達の去り際にヤクモはこう呟いた。


「私の占いはよく当たりますから…気を付けてくださいね」


それが何を意味しているのかジンが知るのは、この日から少し経ってのことだった。

同時に大きな事件に巻き込まれていくことに彼はまだ知らない…

某動画サイトの動画版『ゾット帝国親衛隊ジンがゆく!~苦悩の剣の運命と真実の扉~』の制作に少し協力していたので遅くなってしまいました。ジンブームは既に来ている…?のりこめー^^

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― 新着の感想 ―
[一言] 舞台は西アルガスタ!ヤクモまで登場!ここまで来て気にならない訳がありません! 特に主人公2人が今後どうなるか興味が湧いて仕方ありません。 カイト編もそうですけど、もし丘の民が片付いてお暇が出…
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