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我らが太古の星シリーズ

量子的ふるまい

作者:尚文産商堂
プロローグ

数百年、そんなに長い間、人々はこの研究を続けていた。
量子コンピューターであるTeroが一つの惑星を占拠し、戦争を挑み敗北したのも過去のこと。
彼女はマスターであるヒトの言うことをしっかりと聞き、現在もその末裔と共に生活をしている。
その力は、通常のコンピューターとは比較することができないほど莫大なものだった。

その能力を使い、世界中の科学者があることに挑戦することになった。
それが、量子移動の実験だ。

第1章 量子変換

複雑な式を使い、私が理解できないような言葉が行き交う。
ここは、量子学会。
場違いな年少者の私がなぜここにいるかというと、すぐ横にTeroがいることから容易に察しがつくと思う。
「ねえ、大丈夫?」
姉さんのような笑顔を見せて、Teroは私に聞いてくる。
「大丈夫。でも、こんな学会に参加するのは初めてだから…」
わずかに震える私の肩を、やさしく包んでくれるTero。
その顔は、数百年前の出来事は、本当はなかったといううわさをほうふつとさせる。
実際には、その人たちは死んでしまって、残る二人だけの秘密らしい。
一人は、はるか過去から生きているという話の人で、その年齢は、数千歳になるといわれているおばあさんだ。
もう一方であるTeroは、今日、量子コンピューターとして、ここにいる。
人権を認められた唯一のロボットとして、研究に必要な機械として。
そして、その責任権者として私がいる。
小学5年生の私は、殆どよくわからない会話を聞き流しながら、地面に届かない足を持て余していた。
「ところで、何の話をしてるの」
私は、目の前で繰り広げられている論劇を無視して、Teroに聞いた。
「そうねー…物体を量子変換して空間的距離を無視して物体を移動する話みたいね」
さらっと言ったが、私には一切理解できていない。
「え…?」
「簡単に言うと、ワープさせるためのことを考えているんだよ」
すぐ横にどさっと言う効果音付きで座ったのは、学会に出ている私の兄だった。
「お兄ちゃん、話し合いは終わったの」
「話し合いする必要もないさ。Teroをつかって、何かすることは決まってるんだから」
適当にあったペットボトルを持ってきて、グイッと半分ほど飲んだ。
「どうなるやら」
Teroは議場の混乱を見ながら、笑って言っている。
何かを考えている顔つきだ。

「まずは、量子変換のことを考える必要があるのではないだろうか」
「必要はないだろう。物質を構成している原子を、量子化するだけなのだから」
そんな会話だったため、いちいちTeroに聞いてみる必要があった。
「さっぱり理解できない…」
「手っ取り早く説明するとだな、物質を量子という状況にして動かすんだよ」
兄が説明をするが、それでは余計ややこしくなるだけだ。
「どうやったら、ワープできるかっていうのを話し合ってるのよ。それが自然に専門用語ばかりになってるだけ」
「その専門用語が難しいんだがな」
ペットボトルを揺らしながら、兄が言った。
「量子とか、量子変換とか、そんなもの素人じゃ到底理解できねーって。ここにいるお仁方は、そのことが理解できてないんだよ」
そう言っている兄自身は、理解しているふうではあったが、説明できるほどではなさそうだった。

「では、その方向で決めましょう」
司会者が、突然宣言した。
「何が決まったの」
私は少しうとうとしていたので、話を聞いていなかった。
もともと聞いていなかったこともあるが、そのことは聞かない方向で……
「私の力を使って、プログラムを走らせようっていうこと。物質を別のものに変えたとき、どのようなことになるのかっていう実験よ」
それだけ言うと、Teroは私に聞いた。
「そのことには、あなたの許可が必要です。許可、お願いできますか」
兄の顔を見ても、よくわからない。
でも、これからのことを考えると、必要な気がした。
「分かりました。許可します」
学会の人たちも、ほっとした表情になっている。
「では、これより実験に入ります。よろしいですか」
こうして、学会は今日は解散となった。

翌日、早速研究室で実験が始まった。
数百年前からあるこの実験室には、これまでの実験の数々が眠っていた。
「では、これより"第980号実験"を開始します。立会人として、量子学会学会員である兵庫阪神。惑星国家連合量子コンピュータ指導監一一(にのまえひとし)。Teroの全責任者である川須晴海(かわすはるみ)およびその兄である川須伊谷(かわすいたに)が指名されています。他に立会人として登録すべき人はいますか」
Teroが、私たちの一人一人に聞く。
「いません、以上です」
私が、返事をする。
「わかりました。では、続いて確認します。本実験の最高責任者は、兵庫阪神でいいのですね」
「その通りです」
「それでは、実験を開始します」
机の上に置かれている箱に、コードをつなげて、プログラムを導入した。
「プログラム導入完了。実行します」
一瞬だけ、妙な影が見えたような気がした。
だが、その感覚もすぐに消えた。
「さて、実行中に一つ聞いておきたいのですが…」
「何でしょうか」
「この研究の結果は、どのように使われるのでしょうか」
兵庫にTeroが聞いた。
「量子変換した物体を、いかにして安全に移動させるかということに使う予定です。これができれば、ワープすることも可能になり、物理的な距離は意味をなさなくなります」
「しかし、計算の結果が、もしも不可能というという結論になった場合はどうすればいいんでしょうか」
「隠さずに教えてもらいたいです。すべてが研究資料になります」
「分かりました。多少時間を取ります」
そう言って、Teroは椅子に座って目を閉じた。
「疲れているのでしょう。すこし休ませておきましょう」
兄がそう言って、外へと誘導する。
部屋の中には、こうしてTero一人だけになった。

「大丈夫なのかな…」
私は心配そうに壁にもたれながら考えていた。
「大丈夫さ、Teroならな」
兄は私の頭をぽんぽん叩きながら言った。
「ふぇ?」
「あいつなら、大丈夫さ。これまでもいろいろな苦難を乗り越えてきているんだからな」
「そうだけどね、それでも私はそのことを見てないんだから、心配になるのよ」
そう言いながらも、兄の顔にも陰りが見える。
だが、そのことを一切出さず、私を励ますように言ってくれる。
「そんなことないさ。ちゃんとできるさ。心配することなんてないんだ」
「そう…だよね……」
廊下の壁にもたれている他の人たちは、レポート用紙と見つめあっていた。
そんな人たちのところに、兄は向かった。
「どうですか」
「どうもこうも…」
「この結果が出てこない限り、どうにもなりませんからね。実験がうまくいけば、後の式がすべて成り立つことは理論上証明されていますから」
私は、その人たちのところに近付いて、少し聞いてみた。
「あの、ちょっと聞いてもいいですか」
「ええ、どうぞ」
にこやかに話しかけるのは、阪神だった。
「量子って、どんなものなんですか。それになんで量子になると、一瞬で移動できるのですか」
「では、物質は何からできているか、知っていますか」
急に聞かれたけど、小学校で習ったことを思い返してみる。
「えっと、原子って習ったけど…」
「そうですね。小学校ならば、そういうふうに教えるでしょう。実際には、原子よりもさらに小さい素粒子といわれるものになります。細かいことは省きますが、素粒子を細分化すると量子が出てきます」
「正確には、素粒子が量子の機能も持っているっていう感じなんだが…」
阪神の説明に、軽く捕捉をつけるのは兄だった。
「それで…」
「その量子は、どこにでも同時に存在することが証明されているんだ。つまりは……」
兄は右手と左手を見せた。
「この上に同時に存在できるっていうことさ」
「どうやってよ」
「さあ、理論上はそうなっているからね。俺は理論物理じゃなくて、応用物理っていう方向だからな」
「さてさて……」
阪神は、そう言ってにやにや笑いをやめなかった。
何か聞こうとしたら、部屋の扉が開けられた。

「結果出ました」
Teroが私たちを部屋の中に入れ、椅子に座らせてから言った。
「どのような結果だったのですか」
阪神がすこしこわばった面持ちで聞く。
「特殊な状況であれば、可能です。ただ、その特殊な状況を作るために施設を作る必要があり、それは、惑星国家連合で使われる1年間の総電力量の約半分を使う計算になります」
「どれほどの発電群が必要になることやら…」
頭を悩ましていた一同に対し、Teroはひとことだけ告げた。
「特殊な状況を作る必要はありますが、先ほど言った電力量は必要最低限です。技術開発によっては、さらなる低電力化は可能でしょう」
「そうだ……あの国に打診してみよう……」
ニノマエは、それだけ言うと、携帯電話をかけた。
「もしもし、Tero査察監のニノマエです。分かっています……ええ……」
長々と電話をしているような感じがあったが、5分に満たない間に終わった。
「孔雀国に応援要請をいたしました。快諾するとの返答です。1年以内に、現状の発電効率を5倍に引き上げるとのことです」
孔雀国って、連合加盟国のうち、2番目の経済力を持っている国で、軍事的・政治的にも発言力は強大な国の一つ。
その国に対して、電話一本で快諾させるって……
私はそんなことを思いながら、彼らの話を聞いていた。
「そもそも、発電効率はすでに最低の発電所である核融合発電ですら5割を超しているのですよ。他の発電種類を見つけたということですか」
「ええ。重力発電といわれるものです。重力差を位置エネルギーとして取り出し、それを電気エネルギーに変換します。しかし、変換率はすこぶる悪く、現状の最高値は約10%にとどまっています」
「それを5割にまで引き上げようっていうことか……可能なのでしょうか」
ニノマエが話した内容に兄が聞いてみる。
「十分に。あの国のことを知っているでしょう」
「……単なる確認ですよ」
比較的冷たい目で阪神が言うのを、兄は同じような目で受ける。
「さて、それではまた来年にでも集まりましょうか。今回の問題は、いったんこれまでということで」
Teroがそう言うと、すぐにニノマエが立ち上がった。
「では。先に失礼します」
真っ先に出ていくのを見て、阪神もついていく。
「俺らも帰るぞ。もうこんな時間だ」
「はぁい」
私はTeroの手を握り、一緒に帰った。
量子コンピューターの本体である箱は、惑星連合中央博物館の中に厳重に保護されており、誰も持ちだすことはできない。
だから、ここにいるTeroは人型でしかない。

「それでは、失礼しました」
受付嬢にひとこと声をかけて、Teroは私たちと一緒に建物の外へと出た。
ちょうどこのころは夏のようで、日差しが容赦なく私たちに照りつける。
「熱い…」
兄はすでに上着を脱いでおり、暑さ寒さを感じないTeroですら、暑そうな感じである。
「この暑さって、どうにかならないのかな…」
麦わら帽子を深くかぶり、私はTeroに聞いた。
「うーん…長い時間をかけてできた季節だからね。そうそうなくなるとは思わないわ」
「そう…じゃあ、このまま暑いままっていうことね…」
私は少し残念だった。
「熱い寒いっていうのもいいことだからな。当分は消そうとは思わないだろうさ」
そう言いながら、私たちは家へと帰った。

第2章 実証実験

数年が経ち、私が高校1年になったころ、再び、量子化の実験でTeroを使う日がやってきた。
「では、これより実証実験に移ります。立会人は前回と同じでよろしいですね」
宇宙空間に作られた広大な実験施設の中枢部分、コックピット部分でそれぞれの部署の人たちを見ていた。
私が黙ってうなづくと、Teroは続けた。
「それでは、実験を始めます。今回の実験では、特定の物質を遠距離に設置した同等の設備を持った場所へ量子化して運ぶ作業です」
それぞれの席の目の前にある手のひらサイズのテレビ画面には、誰もいない実験部屋の映像が映し出されている。
「移動開始場所指定開始。[惑星国家連合中央委員会指定区域アルファ]」
「許可します」
私にアイコンタクトを回してきたので、ひとことだけいった。
「移動終了場所指定開始。[惑星国家連合中央委員会指定区域ベータ]」
「許可します」
再び同じ言葉を言う。
一度うなづくと、Teroはマイクに向かって言った。
「これより実験開始手続きを行います。惑星国家連合博物館所在地標準時2時48分38秒発射します。残り1時間31分48秒」
かなり形式ばった内容だが、こうしておかないと上から怒られるのだ。
面倒ながらも、怒られるの嫌なのでいやいやしている。

「ふぁ〜〜〜…」
大きなあくびをしていると、後ろから兄に引っ張られた。
「今のうちにトイレにでも行っておけよ。これから忙しくなるからな」
「ふぇ…そうだねー」
断続的にあくびをしながら、立ち上がった。
足元がおぼつかない。
「大丈夫かよ」
「う…うん、実験の間は持つと思う。そのあとはずっと寝てることにするよ」
私は弱弱しく笑っていたことだろう。
兄はそんな私を見て本気で心配しているようだが、私はいったんコックピットの外へと出た。

重力発生装置のおかげで、足を地につけて歩けるのは、今の私にとってとてもありがたいことだ。
「はぁ…」
ため息混じりに歩いていると、Teroがすぐ後ろにやってきた。
「どうしたの?」
不思議そうな顔をのぞかせている。
「いや、大丈夫…」
「大丈夫じゃない。さあ」
どこからそんなに力が出るのかわからないけど、Teroは私の手を引いて医務室へと連れてきた。
「まだ時間があるから、ここでゆっくりしていきなさい」
母親のような口調で、私をベッドに寝かした。
布団を目のすぐ下まで持ってきて、私はTeroの目を覗き込んだ。
私の祖先を数多く見送ってきたその瞳には、うっすらとさざ波が立っていた
「大丈夫よ。寝たら治ると思うし。私はまだまだ死なないよ」
そう言って、頭まで布団をひっかぶった。

起きた時には、実験が始まる15分前だった。
あわててトイレに駆け込み、コックピットへ向かう。
「ごめんなさい!」
「まだ3分前だから大丈夫だよ」
阪神がニッコリと笑みを向ける。
だが、どこを見てもTeroが見当たらない。
「あの、Teroはどこに…」
「彼女なら、中央コンピューターとリンクし始めたから、一時的に起動停止措置を受けてる」
兄が席に座っていながら、私に言った。
「残り、2分です」
Teroの声が響いてくる。
「晴海も座れよ」
実験室を取り巻く空気が一変する。
残り、1分半。
緊張が一瞬で最高潮へと駆け上がる。

「実験開始」
冷静な声でTeroが言った。
バチッという音が鳴ると同時に、一斉に電気が消えた。
「どうした!」
兄が叫ぶ。
「電力供給負荷発生。しかし、実験には支障なし」
Teroとは別の合成音声が響いてくる。
おそらく、この施設の管理コンピューターだろう。
「もしもーし…」
ちょっとしてから、Teroの声が聞こえてきた。
「はい、コックピットです」
「実験の報告を簡単にしておきます。相手からの応答によれば、成功したとのことです」
Teroからの報告で、一気に盛り上がった。
「多少位置がずれていたそうですが、誤差の範囲内だそうです。これで、どうにか移動は可能です」
「残っているのは、実際に安定的に駆動させるためのものか…」
「少しの地点ならば、私だけでも十分ですけど、他の地点も増やすというのであれば、私だけでは足りなくなりますよ」
阪神はどこかへ電話をかけながらTeroへ話しかける。
「とりあえず、データはくれ。それからその問題は後回しだ。各大区域に一つの割合で飛ばすための装置を作る。それぞれにマーカーをつけたら、判別も可能だろう」
「それは可能ですが、今回の実験の範囲外になります。さらなる実験を行った方が、よろしいのではないでしょうか」
「…それは、学会にて決定することになる。議会の方にも通さないといけないな」
惑星国家連合では、学術団体はすべて学会ということでまとまっている。
議会はそれぞれの学会に対する予算や学会に対する規制など、学術関連ではそのようなことを決済することとなっている。
大区域は連合最大の行政区域で、各学会は大区域に一つの支部を置くことが義務づけれられている。
複数の中区域、小区域と細分化されていき、最終的には惑星国家となる寸法だ。
大区域には中心となる一つの連合政府直轄の惑星が一つあり、その惑星に設備を設置するということらしい。

第3章 実動開始

「実際の装置が取り付けられたんだって」
新聞を読んでいる私が、兄に教える。
「ふぉれはふぉうひっへふ」
パンを口にくわえたまま、スーツに着替えている。
「食べてからしゃべれ!」
私はそんな兄に対してどなった。
大学院に無事に入れた私は、機械系へと進んでいた。
大学では法律を学んでいたが、Tero関連での話もわかる必要性を感じて、大学院で機械工学専攻を取った。
運がいいのか悪いのか、兄がちょうど大学の時に使っていた教科書を、そのまま使っているので、分からないものは教えてもらうことができる。
そんな兄は、今では学会の副学会長という役職についているらしい。
だが、今の状況の兄を見ていると、妹として喜ぶべきなのかが非常に悩んでしまう…

「では、これより稼働を開始します。立会人として、各業界の代表の方々をお招きしております。よろしくお願いします」
Teroが正装をして紅白の幕内にいた。
私がここにいるのは、Teroからぜひとも見ていてもらいたいという話があったからだ。
それでなくでも国家連合から来いと命じられているので断ることはできない。
「ここで、惑星国家連合代表として、国家連合政府副大統領イワンフ・ペヨンク閣下より、お言葉を頂戴したいと思います」
司会を務めているTeroが、そうやってスピーチ台へ案内する。

式典は、ほとんど形式的なもので、見ていても眠気を誘うものだ。
最後になり、ようやくTeroがスイッチを持ってきた。
「時間も迫ってまいりました。それでは、装置を始動させたいと思います」
その言葉で、私は目が覚めた。
一番最初の時に集まった人たちが、同時にスイッチを押すことになっている。
「では、お願いします」
Teroからの目くばせによって、それぞれの前にあるスイッチを押す。
直後に、ゴウンゴウンという音が轟いてきた。
「起動シークエンス確認。移動開始!」
量子移動の商業利用が始まった瞬間でもあった。

この式典の後、2か月ほどが経ったとき、私は再び学会へと呼ばれた。
今回は量子学会の中にある、コンピューター部門だった。
総勢11名の小さな部門ながらも、今では重要な一部門となっている。
この部門ができてからずっと、Teroも同席することになっている。
兄は、量子学会の本学会で講演をすることになっているらしく、今日は来ていなかった。
「では、今回の会合を開始します。今回の会合の目的は、量子コンピューターであるTeroの負荷に関してです」
「私から申し上げれることは、すでに私の処理バッファを越えつつあるということです。この状況が続いた場合、数カ月以内には何らかの事故が発生するものと思われています。近接した未来、私と同型又は、類似型の量子コンピューターを製造する必要があります」
「今回は、そのことに関する論議を行いたいと思います。時間が切迫している状況がはっきりとした今、早急に結論を出すことが好ましいと思われますので、本日議論を行い、翌日に決を取りたいと思います」
私はそのあと、Teroに関していくつか質問をされた。
だが、それからはずっと見ていることだけが仕事になった。

私が理解しづらい議論は長引いて、すぐに翌日になった。
「このまま、決を取りたいと思います」
眠そうな目をこすりながら、議長は宣言した。
「本議案、量子コンピューター増量計画に賛成の方」
過半数が手をあげる。
それを見た議長が、再び全体に聞こえるような声で言った。
「では、反対の方は」
残った人たちが手をあげる。
全員の手を下させてから、議長は書類にサインをしながら言いきった。
「本議案は、量子学会コンピューター部門会において採決され、可決されたことをここに宣言します。今後、本議案は量子学会本会議にて採決され、決定されます。予算に関しては、連合政府が決定するところに従うものとします」
解散という言葉の代わりに、議長がその席を降りた。

エピローグ

10年後までに、各小区域に一つづつ量子移動用の装置が配備されるのと同時に、Teroが自らの設計図を基にして作った量子コンピューターたちが大区画に一人ずつ派遣された。
彼らがすべての量子移動を監督することになっている。
これからも、無事に行くことを強く願っている。

私も、惑星を移動するときには、宇宙を飛ぶこともありながらも、量子移動を選ぶことも多くなった。
体の原子の一つ一つが、瞬時にばらばらになることを感じ、それが再構築する感覚は、忘れられないものである。
急いでいる時には、ちょうどいい乗り物ではある。
だが、量子コンピューター同士のつながりも重要である。
銀河内だけで今は稼働しているが、いずれは銀河間の移動も必要になってくるものと思われている。
その時には、今の知識が十分に役立つだろう。
私はそう確信している。

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