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フユガタリ

作者:アンナ月と
春には春の歌があるように、夏には夏の歌がある。
秋には秋の歌があるように、冬には冬の歌がある。

それぞれの季節には、それぞれの歌い人がいました。
ところが、春の歌い人が突然いなくなってしまった冬の女王は、春の女王と交代する事が出来なくなってしまいました。
そんな事は知らない春の来なくなった国の王さまは、国中にお触れを出す事にしました。

~~~~~~~~~~

誰かおらぬか。

ハッ、ここに。

ウム、これを国中に配るのだ、そしてお前は塔に行き、詳細を聞いて参れ。

かしこまりました。

~~~~~~~~~~

この雪では塔に辿り着くのに、どれ程時間が掛かるか分かりません。
それでも、何もしないで待っている訳にもいかないので、王さまは配下の騎士を塔に派遣する事にしました。

数人の騎士を率いて塔を目指すタルタトは、雪の降り積もる中を行軍していましたが、日も暮れる少し前に、その日は休むことにしました。

開けた場所で休んでいると、そこに白い頭巾を被った女の子がやって来て、タルタト達をじっと見つめている事に気が付きました。

~~~~~~~~~~

おい、こんなところに一人で何をしている。

別に。

お父さんはどこだ。

いない。

そうか、ではお母さんはどこだ。

知らない。

ん、困ったな。

ねえ、遊んで。

悪いがこれから色々とやらねばならぬ事があってな、あまり時間が無いのだ。

良いから遊んで。

ん、仕方ないな、ちょっとだけだぞ。

ありがとう。

~~~~~~~~~~

それから二人は、雪ダルマを作って遊んだり、雪玉を投げ合って遊んでいました。
少しの時間だったが、それでも女の子は、十分に楽しかったようでした。
一緒にいた数人の騎士は、楽しそうに遊んでいる姿を眺めながら、苦笑いをしながらも二人を見守っていました。

二人で遊んでいる時に、女の子はこう言いました。
女の子にはとても頭の良い主がいて、何時も色んな事を教えてくれるが、一緒に遊んでくれた事は無いのだと。
その時の、女の子の寂しそうな顔に、タルタトは困ったように笑っていました。

~~~~~~~~~~

ありがとう。

お前の家はどこだ、連れて行ってやろう。

あっち。

~~~~~~~~~~

そう言って女の子の指差した方向を見て、もう一度女の子の方を見ると、白い頭巾を被った女の子は、もう何処にもいませんでした。
タルタトは、女の子のいた場所の周囲を暗くなる迄探したのですが、女の子の足跡さえ見付けられず、その日は休む事にしました。

次の日、タルタト達は塔を目指して、雪の降り積もる中を行軍していました。
昨日の女の子の事が気になりましたが、王さまの命令を無視する訳にもいかず、塔へと向かう事にしたのです。
そうして、日も暮れる少し前に、凍った川の辺りで今日は休むことにしました。

するとそこに、茶色い頭巾を被った女の子が現れて、こう言いました。

~~~~~~~~~~

何か、お話をして下さい。

何だ、どこから来たんだ。

何でも良いので、お話をして下さい。

いきなり言われてもな、取り敢えず君の事を教えてくれないか。

その前に、何かお話をして下さい。

ん、仕方ないな。

ありがとうございます。

~~~~~~~~~~

それから、タルタトは此処へ来る迄にあったことを、茶色い頭巾を被った女の子に話して聞かせました。

冬が終わらなくなった事、王さまの頼みで塔に行く事、昨日あった白い頭巾を被った女の子の事を話して聞かせました。

その時に女の子が言っていました。
私の主は、何でも与えてくれるが、一度もお話をしたことが無いのだと。
その子の、少し悲しそうな顔を見てタルタトは、少し暗い顔をしてしまいました。

~~~~~~~~~~

もう遅い、お前の家は何処だ、私が送ろう。

ありがとうございます。

~~~~~~~~~~

そう言って立ち上がった、女の子の見ている方向を見てから、手を繋ごうと振り向くと、茶色い頭巾を被った女の子は、いなくなっていました。
心配になって、周囲を隈無く探しましたが、何処にも見当たりませんでした。
昨日の女の子の様に、いなくなってしまった女の子の事が気になったが、この日も諦めて休むことになってしまいました。

次の日、タルタト達は塔に向けて、降り積もる中を行軍していました。今日も日の暮れる少し前に、大きな樹のある場所を見付けて、そこで休む事にしました。
そうしていると、今度は青い頭巾を被った女の子が現れてタルタト達の周りをグルグルと走り回っていました。

~~~~~~~~~~

君はここで何をしているんだ。

走っているだけだけど、なにか用なの。

用があるのは君の方じゃ無いのか。

別に無いけど、どうしてもって言うなら、一緒にご飯を食べてあげても良いわよ。

そうか、これから食事にするところだったのだ。
丁度良い、一緒にご飯を食べて行くと良い。

そう、なら一緒にご飯を食べてあげるわ。

~~~~~~~~~~

そう言って女の子は、タルタトの隣に座って一緒にご飯を食べる事になりました。
お腹も一杯になり、温かい紅茶を飲んで休んでいると女の子は、私には何時でも微笑んでくれる優しい主がいるが、一緒にご飯を食べた事が無いと言って笑っていました。
すっくと立ち上がった女の子は、軽く会釈をしてから、走り去ってしまいました。
その日タルタトは、女の子達の事が気になって、ゆっくり休む事が出来ませんでした。

次の日、今日には塔に着けるだろうと意気込んで出発したタルタト達は、お昼頃に塔へと辿り着く事が出来ました。
やっとの思いで塔に辿り着いたタルタト達は、冬の女王様に話を聞く事になりました。

~~~~~~~~~~

お久しぶりです女王様。
今日は冬が終らない理由をお聞きしたく、参上致しました。

久しぶりですね、タルタト。
実は私も困っていたのです。
私には、冬をもたらす力はありますが、春を呼ぶ力を持っていないのです。

それは、どう言う事でしょうか。

私達には歌い人と言う従者がいて、その従者の力で次の季節を呼ぶのです。
しかし、その従者が突然いなくなってしまって困っていたのです。

なんと。
それでは、その従者を探して来れば宜しいのですか、女王様。

その通りです、タルタト。
残念ですが、私が塔を離れる事は出来ません。
私には、貴方にそれをお願いする以外に、出来る事がありません。
どうかお願いします、あの子を此処に、連れて来て下さいませんか。

かしこまりました。
私がその従者を、探して連れて参りましょう。
それで、その従者はどの様な者なのでしょうか。

その者は、黄緑色の頭巾を被った女の子なのですが、それだけでは分かりませんね。

なんと。
私が此処に来る迄に、白い頭巾を被った女の子と、茶色い頭巾を被った女の子と、青い頭巾を被った女の子に出会いましたが、あの子達も従者だったのでしょうか。

そうかも知れません。
あの子以外の従者に会った事が無いので、私には分かりませんが恐らく間違いないでしょう。
どうして他の従者達が外にいたのかと言う事も、私には分かりませんが、あの子は私にとっても、大切な者なのです。
どうか、お願いします、あの子を無事にここへ連れて来て下さい。

かしこまりました。
何としても、お連れ致します。
どうか、ご安心を。

ありがとう、宜しくお願いいたします。

~~~~~~~~~~

それからタルタト達は、塔の周辺を探して回りました。
これ迄に出会った女の子の事も考えると、遠くにいるとは思えなかったからです。
3日程経ったある日、やっと黄緑色の頭巾を被った女の子を見付ける事が出来ました。
女の子は、塔の見える山の上の洞窟の中で、座って泣いていました。
やはりそうだったかと、タルタトは気持ちを落ち着かせてから、女の子に話掛けました。

~~~~~~~~~~

こんなところで何をしているんだい。

………。

一緒に遊ばないか。

………。

それじゃ、お話でもしようか。

………。

そうか、お腹は空いていないか。

………。

…、お前は主の何処が嫌いなのだ。

……嫌いじゃ無い。

そうか、では大好きなのだな。

…分からない。

なら、どうして欲しいのだ。

……分からない。

何が嫌なのだ。

………。

~~~~~~~~~~

どうにも困ってしまったタルタトは、思わず女の子を抱き締めてしまいました。
自分では、どうにも出来ない。
それでも、救ってやりたかったのです。
これ迄に出会った、頭巾を被った女の子達は皆、愛情を欲していました。
きっとこの子も同じ筈だと、思っていたからです。
これ迄に、経験したことの無い感情に支配されたタルタトは、どうして良いのか解らなくなっていました。
抱き締められた女の子は大きな声を出さずに、大粒の涙だけをその瞳から溢し続けていました。

~~~~~~~~~~

……ありがとう。

ウム。

…ありがとう。

ウム。

ありがとう。

ウム。

~~~~~~~~~~

沢山の時間をそうして過ごしてやっと、女の子は笑ってくれました。
女の子は笑って言いました。
私は主が大好きだけど、一度も抱き締められた事が無かったのだと。
女の子は、ずっと大好きだと伝えたかったのです。
しかし、それを言って嫌われたくなかったのだと、そう言っていました。
タルタトは、何も言わずに立ち上がると、女の子を抱えて塔へと戻りました。

タルタトは、その一部始終と自分の感じた事を、女王様に伝えました。
それを聞いた女王様は壁に寄りかかり、走りよった女の子に抱き止められて、二人は泣いていました。
これで、安心だとばかりに塔を離れるタルタト達は、王さまの待つ城へと帰るのでした。

その帰り、タルタトの頬を伝う一滴の涙はとても温かく、まるで春を告げているかのように感じたその顔は、まるで皺だらけのお爺さんのようでした。

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