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二杯目

「ごちそうさま」


 うむ、やはりカレーライスは旨い。孝が相変わらず変な目で見ているけど、きっとこの体の美貌のせいだろう。男らしくがつがつ食べたことを言っているのではないことを祈ろう。

 しかし、この十畳台所付きの狭い部屋に男女が二人か。ともすれば間違いでも起こりそうな環境だけど。


「おーい、いい加減こっちの椅子に座ること推奨だがしかし」


 孝は台所から動かない。立ったままずっと俺を観察するように見ている。 

 変態にしか見えなかった。


「……確かに言動も行動も千里そのままだが……まさか本当に……いやしかし」


 どうやら常識と戦っているらしい。


「銀髪美少女をじっと見つめる男。変態ですね、わかります」

「誰が変態か!」

「あれだよね、変態は自分が変態って気づけないんだよね……かわいそうに」

「勝手に哀れむな!」

「いいから現実を認めよう。たとえ孝が見とれてしまうような美少女でも、俺は千里だ」

「さっきからナルシスト振りに磨きがかかっているな」

「客観的に見ても変態的なほど美少女」

「変態って言葉好きだなお前……」


 うむ、打てば響く。孝のツッコミ属性は俺が変わっても健在、と。

 にへら、と笑うと、孝はそれを見てかため息をついた。失敬な。どこにため息をつく要素があったというのだ。

 孝は諦めたように苦笑すると、近づいてきてどかりと正面の座椅子に立て膝をついて座った。


「で、どういうことだ」

「信じるのが遅い」

「知るか。親友が突然銀髪女になりましたって非現実すぎるだろ」

「事実は小説より奇なり」


 ふふん、良いこと言った。


「その顔でドヤ顔しても、かわいいだけだぞ」

「バカな」

「いいから説明しろ」


 孝が苛立たしげにコメカミをトントンと指で叩いた。

 確かに説明したいのはやまやまなんだけど、その前にやらないといけないことがある。とても重要なことなのだ。


「カレー食べた器片づけるからちょっと待ってて」


 乾いた後洗うのは面倒だからね!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「よし、これまでも経緯を今キタ産業で説明しよう」

「せんでいい」

「昨日変な祠を見つけて、願い事をしたら、朝こうなった」

「願い事について詳しく」

「カレールーを見つめてても気持ち悪いって言われないようにして下さい!! って言った」

「それの経緯を詳しく」

「昨日幼女に気持ち悪いって言われあばばばば」

「哀れ」


 泣いてないからなっ!!

 

「……ああもう、泣くな。大の男がレトルトカレーを愛おしそうな目で見てればそうもなるさ」

「泣いてないし、フォローになってない」

「美少女特権というモノを知っているか?」

「美少女なら何をやっても許されるというアレか」


 待て、その考えでいけば恐ろしい事実が発生する。孝は立ち上がって俺に指を突きつけた。


「その祠の神様は美少女ならカレールーを見つめていても許されると思ったのだ!」

「ナ、ナンダッテー!」


 大げさに仰け反る銀髪、シュールだ。

 ふぅ、と孝は座椅子に戻った。


「実際問題、俺にはその超上現象の説明はできん!」

「そりゃそーだ」


 できたら怖いわな。


「ところで、一人称を変えた方がいいと思わないか」

「思わないな」

「喋り方も似てるからややこしい」

「声が違うな」

「なによりも折角の美少女なのに男言葉は萎える!」

「その発想はなかった」


 気がついたら孝が暴走していた。

 

「一人称はボク、私の二択だ!」

「オレだな」


 それを変えたら色々と詰む気がするのだよ。俺とオレの違いはニュアンス的な何かだ。つっこんだら負けだよ。


「くっ……! まぁいい。口調は元気っ娘か幼なじみな感じで頼む!」

「そんなオレはあなたの幼なじみ。ワンチャン解決おけ」

「ネットスラング禁止!」

「オレに死ねと申すか!」

「そんなにか!?」


 ふむ。


「ねぇねぇ孝ぃ? ネットスラング使ってもいーい?」


 オレは机に身を乗り出して、孝の腕をちょこんとつかんだ。


「もちろん!」


 チョロ……うぷっ。


「オロロロロロロロロロロロロロロロロ……!」

「自分に吐き気を覚えるくらいならやるな!」

「……それに引っかかった孝が一番キモい件……おぇっ」

「さて、これからについて話し合おうか」


 おい、ワザとらしく口笛吹くなし。しかも、ぷしゅーぷしゅーって吹けてないし。


「仕方がないね。どこのカレー屋に行こうか。個人的に商店街のインドカリーがオススメ」

「……カレーが大好きな銀髪美少女って嫌だな」


 大きなお世話だ。


「ってか、アレだな。すごく胸を見てるな」


 チラチラとだけど、見られてる側ってこんなに不愉快なのか。なるほど。今度から気をつけよう。


「ばっ! ち、ちげーし! パジャマの縫い目を見て興奮してただけだし!」

「もっと変態だった!?」

「返し縫いって興奮するよな!」

「知らないよ!?」

「ちょっとその縫い目触らせろよ……!」


 えっ、まじで縫い目触ろうとしてるん? 手がゆっくりと伸びてきて、


「……ひぃうっ!?」


 胸を鷲掴みにされた!? 変な声出た! 変な声出たよ!?


「我が生涯に一片の悔いなし!」

「ひゃふっ……! も、もむな……!」

「掴んでよし! 揉んでよし! 全部タダ!」


 鼻息が、顔が近い! 目がぐるぐるしてるよこいつ! 絶対正気じゃない!

 

「ド変態が! 死ねぇ!」


 狙いは急所! 一点突破!


「オレの右手が真っ赤に燃えるぅ! お前を倒せと轟き叫ぶぅ! ぶぅあくねつ! ゴッドフィンガー……」


 セット!


「ちょ、やめっ……!」

「ヒート・エンド!!」

「アピャッ……」

「ふっ……またツマらぬモツを潰してしまった」


 あ、白目剥いて痙攣した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 美少女に局部を握られたらきっとドキドキしちゃいますね。 男同士のお馬鹿な会話に華をそえてくれるTSものというのは本当にいいものですね。 カレーだけではたしてどこまでお話が展開していくのか読…
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