Chapter4:部屋
「―へぇ、龍也君も結構大変な人生おくってるんだね」
「ま、な」
あれから本当に俺の家に遊びに来た雪音は、俺の身の上話が聞きたいと駄々をこねた。
本当は思い出してしまうから言いたくはなかったんだけど、あまりにもうるさかったから、特別に聞かせってやった。
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「俺の両親は、俺が三歳の時に死んだ。家に強盗が入ったんだ。茶の間でテレビを見ていた両親を殺し、箪笥の中に入っていた現金十万円と通帳を持って逃げた。俺は犯人の気まぐれで命拾いした」
「その犯人は捕まったの?」
「いや、まだ捕まってない」
「そうなんだ、それで?」
「あぁ、そんで俺はまぁ、親戚の家に引き取られる事になったんだけど、後はまぁ、定番っていうか、まったく、やっかい物を残して死んでくれたもんだ、的な感じで暴力うけたりメシ食わせてもらえなかったり」
「へぇ、そんな事やる人いるんだね。・・・大人なのに」
「そうだよな、俺もびっくりだったぜ」
「それで、その後は?」
「あ?えっと、高校あがる時に、あんたもう高校生なんだから一人暮らしくらいできるでしょ?みたいなトンデモねぇこと言われて、金はやるから出て行けって言われて、両親の保険金と通帳渡されて、このマンションに引っ越してきたんだ」
「あれ?でもさっき通帳盗られたって言ってたじゃん?」
「あぁ、その盗られた通帳には金、ほとんど入ってなかったんだよ」
「なにそれ」
「だから、盗られた方は少ししか入ってないニセモノで、ちゃんと預金されてた方は違う所に隠してあったんだよ」
「何処に?」
「仏壇の裏」
「なるほど」
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そんなことを話して今に至る。
「じゃあさ、なんでお前は親死んじまったんだ?」
「火事よ、火事。放火だって」
「ふーん」
こいつも大変だな。
「ねぇ」
「あ?」
「龍也君はさ、その両親を殺した相手を憎んでる?」
「いや、別に。そんな、人を殺すような奴低レベルで話になんないし、両親だって別に死んだってこの世に未練があるわけではないだろ。そもそも、人間なんてなんで生きてんのかさえ分からない」
「え?」
「だってそうだろ?皆明日の暇を潰す事ばっかり考えてるような奴じゃないか。そんな奴等、生きてる意味なんてないんだよ」
俺は長年体内に収めてきた気持ちを外に吐き出す。
「俺にしたってそうだ。何をするでもなく、ただ何となく日々を生きてる。俺だって生きてる意味のない人間だよ。人を幸せにする事だってできないし、なにか夢があるわけでもない」
「・・・まったく、皆死ねばいいのに」
「・・・龍也君」
永い沈黙。
「・・・生きる意味を探すために生きてる、っていうんじゃ、だめかな・・・?」
「・・・あ?」
「生きる意味の話だよ。確かに今は、龍也君には何もないかもしれない。でも、その何かを見つけるために、今を生きてるんじゃないのかな」
「・・・あぁ」
「多分、何もしてなさそうに見えたり、必死に暇を潰そうとしてる人でも、人生っていう道の上では生きる意味を探してバタバタもがいてるんだよ。今は自分には何もないけど、将来、絶対に何か大切な、かけがえのないものを見つけてやるんだーってさ」
「・・・。」
「だから龍也君も、一生懸命足掻いてる人を、死ねば言いなんて言っちゃダメだよ?」
「返事は?」
「お、おう」
「よろしい」
そっか。
今は何もなくても、必ず何かが見つかる。
ちょっと希望を持てた気がするな。
「だから、学校でも、いつまでもむすっとしてないで、積極的に明るく振舞うこと」
「それはヤダ」
「なんでよ?」
「あいつらは人の事を勝手に怖がりやがる。怒ってもいないのに、俺の顔色をうかがって教室の外に逃げていく」
「龍也君がいつも仏頂面してるからでしょ。君がニコニコ笑ってればきっと友達になってくれる」
「・・・。」
「小鳥たちは君の肩に止まりたがっているの、チャンスが見つからないだけで」
「そか」
「そうなの」
なるほどね。
「・・・ちょっとしんみりした空気になっちゃったなー。でもだいじょーぶ!夜はこれから!さあ、飲むぞー!」
「おいっ、俺らまだ未成年・・・!」
夜はふけていった。
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