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あとがき
 私の作品に最後までお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。多くの方々にこの作品を気にかけていただいたこと、書き終えて感謝の念で一杯です。それから、何人かのドクターの方には、具体的な助言もお願いいたしました。丁寧なアドバイスを頂いたこと、心から感謝申し上げます。 
 WEB小説としては、内容的にかなり異端であると自覚しています。今回の作品には恋愛要素も全くなく、娯楽的な要素もほとんどありません。そんな私の小説に、想像以上の数の方々がアクセスしてくださいました。これは、昨今、様々な医療関連ニュースが取り上げられるようになり、多くの一般の方々が医療問題へ関心を寄せるようになった一つの証なのかもしれないと感じています。
 
 20年前、まだ私が学生だった頃、米国出身の女性英語教師に頼まれて、病院へ付き添ったことがありました。初めて日本の病院に行くから心配だと言うのです。
 診察を終えて、彼女は感激していました。アポなしですぐに専門家に診てもらえたこと、担当医師が優しかったこと、そして、何より格安であったこと(保険証を持っていました)。帰りの車の中、しばらく彼女が興奮していたのを今でも覚えています。何しろ、彼女は10万円を準備していたのに、請求されたのが800円程度だったからです(実際には2〜3万円位と思っていたようです)。駐車場代より安い、と繰り返していました。「じゃあ、駐車場代払ってよ」と言いましたが、「これはあなたの車だから私が払う筋合いはない」と、他人に車まで出させておいて酷いアメリカ人でしたが(笑)、外国人の目に日本の医療制度がどのように映っているか、教えられた瞬間でした。勿論、どんな制度であっても問題がゼロということはありません。しかし、彼女の話を聞いて少なくとも米国よりはずっとマシだと思いました。

 皮肉なもので、日本の医療制度は米国のそれを追いかけようとしているように思えます。国の上層部の人たちは皆保険を潰すつもりのようですが、表立ってそう明言することはありません。非難が集まることは目に見えているからです。
 ではどうするのがいいか? 医療費を下げ続けることで、実質的に病院が運営できない所まで持って行きます。現実に、赤字で消えている病院が増え続けていますね。そうすると必然的に自由診療の病院が増えてきます。自由診療では医療の値段を自由に設定できるからです。自発的に保険診療を放棄する医師が増えれば、制度を変えなくても、皆保険制度はいずれ破綻するでしょう。直接手を下すことなく破綻させる。実にうまいやり方だと思います。

 さて、一度自由診療の方向に進んでいけば、どこかの段階で、企業が乗り込んでくることは間違いないでしょう。いえ、むしろ、大企業のトップが積極的に政府に働きかけている、と考える方が自然だと思います。
 もしかしたら、企業が入り込むことで国民の望む素晴らしい医療制度が展開されるのかもしれません。けれども、米国が抱える医療問題を見る限り、私たちを待っているのは、小説で示したような悲惨な状況である可能性の方がずっと高いのではないかと思います。

 石油産油国が政府系ファンドとして日本の医療特区の病院に100億円を出資する、というニュースを先日耳にしました。世界に誇る日本の医療技術、そして、米国の十分の一以下というドクターへの人件費。産油国の王様達に日本の医療はどのように映っているのでしょうか。アラブの研修生をそこで研修させる計画もあるそうです。将来は日本のドクターが外国に買われていくのかも知れませんね。

 すでに、皆保険崩壊、医療崩壊のシナリオは動き出しています。
 
 私の役割は、これからの10年を私たちが黙って眺めて過ごした場合、日本の医療制度がどうなっているかを皆さんにお見せすることでした。どう判断されるのか、それは皆さんの自由意志に任されています。
 
 
 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 私は現在小さな町で開業医をしています。
 一生を勤務医という形で医療に捧げるつもりでいましたが、結局挫折してしまいました。あのまま勤務医を続けることは不可能だった、という気持ちと同時に、何とも言えない罪悪感を背中に乗せて生きています。そして、その罪悪感が私に小説を書かせています。
 私は、どうしても「医師」という立場で物を見てしまいますので、私の作品も、鼻につく所があるかも知れません。そういう所を見つけたら「ああ、あんたは医者だからね」と割り引いて読んでいただけると、助かります。
 
 連載を3本続けて書いてきましたが、少々本業の方に支障が出てきました。2018年シリーズは、本業を置いてでも急いで書く必要性を感じていました。日本の医療制度が大変な勢いで変化しているからです。書き終えて、ホッとしています。
 ここで、3ヶ月ほどお休みを入れようと思っています。溜まった仕事(患者さんの診察以外にも色々やることがあります)を済ませたら、また戻ってくるつもりです。書かなくてはならないテーマが、まだあるからです。

 本作品が、少しでも医療問題について考える材料になったら、作者として、これほど嬉しいことはありません。
 どうも、ありがとうございました。
 また、お会いできる日を楽しみにしています。  GFJ


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