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三十三話です!

はやてのッ!ターン!

※注意!
作者は暑さで頭がアレになってるので、作品の内容もアレになってる可能性がありますのでここから先を見る人は覚悟してスクロールしてください!
第三十三話
sideはやて



「で?なにか言い訳はあるか?」

「「……すみません」」


私の目の前で正座している咲夜くんとアインちゃんがシュンと頭をうなだれる。

ハァ、と溜め息を吐きながら横を見ると、そこには広い練習場で自らの存在をこれでもか、と主張するクレーター。まったく……!本当にまったく!


「どうやったらパンチをぶつけ合っただけでクレーターが出来るんや!?」

「どうやってって、全力全開の一撃をぶつけ合ったら……すみませんでした」


ギロッと睨みつけ、咲夜くんを黙らせる。
なんでも素直に答えるのは感心やけどこの場じゃ間違いや!


「あ、あの……咲夜さんを責めないでください。力加減を考えずに全力で放ってしまった私にも責任がありますから」


ビクビクしながらも咲夜くんを庇おうとするアインちゃん。……。


「可愛すぎるやろー!」

「ひゃあっ!?」


ビクビクしているアインちゃんに抱きつく!
もう何やねん、この子!どうにかなっとるんちゃうか!?いや、どうにかなっとるんは私か?ああ、もうどうでもええ!


「今はアインちゃんをいただくだけや!」

「ひゃ……は、はやてさん、どこ触って……ふぁ」

「って、本当に何やってるんですかっ!?」

「あたっ!」


ハリセンで叩かれた頭をさする……なんで咲夜くん、ハリセン持っとるん?
アインちゃんは私から神速で離れ咲夜くんの腰にしがみつき、私を睨みつけてくる。うぅ、ちょっとしたスキンシップのつもりやのに〜……。


「はやてさんってたまに暴走しますよね……」

「仕方ないやん、アインちゃんが可愛すぎるのが「……ッ」わ、私が悪かった!ごめんな、アインちゃん!」


アインちゃんの視線が一層冷たくなったので慌てて謝る。涙目はずるいわぁ……。


「……もう、しませんか?」

「せーへん、せーへん!」

「私の拳に誓って?」

「なんでアインちゃんの拳に……分かった、誓うわ」


流石に拳に魔力を集めながら言われたら従う他あれへん。そんなに嫌やったんか……でも。


「何時まで咲夜くんに引っ付いとるん?」

「え?」


私がそう言うと、アインちゃんは上を向いて咲夜くんの顔を見る。そして今自分が引っ付いてる場所を見る。咲夜くんを見る、引っ付いてる場所を見る……あっ、みるみる顔が赤くなってく。


「〜〜〜〜〜ッッッ!?」

「おっ?」


アインちゃんはまたしても神速で咲夜くんから離れる。
やっと気付いたんか……。アインちゃんは天然やな、特級の天然や。


「あ、わ、私、あの……!」


アインちゃんはオロオロしながら弁解しようとするが、うまく口が動かないみたいや。
……やっぱかわええなぁ。


「……はやてさん?」

「うっ……な、なんもせーへんよ?」


ど、どうも咲夜くんからの評価がグングン下がってる気がするわ……。私何かしたかなぁ?


「ほら、アインちゃん大丈夫だから。とりあえずここから出ようか」

「……はい」


あれ?アインちゃん、咲夜くんに懐き過ぎちゃうか?私と比べて反応が段違いやねんけど……。


「はやてさん?行きますよ?」

「あ、ちょお待って「あの」はい?」


振り返るとこの練習場の従業員さんがいた。従業員さんはにこやかに笑いながら右手の人差し指でクレーターを指差して、左手の親指と人差し指でまるを作っている……ああ、金か。







結局練習場の修理代を経h……自腹で払ったせいで、財布が空っぽになってしまった。これも全部咲夜くんのせいや……え、アインちゃん?アインちゃんは可愛いから許す。


「それでは、本日はありがとうございました」

「気をつけて帰りなよ?……アインちゃんに心配はいらないか」

「って、アインちゃん帰っちゃうんか!?」


まだまだ遊び足りひんのに!


「当然でしょう。アインちゃんを連れていた目的忘れましたか?不良たちから護るためですよ?……実際、いりませんでしたけど」

「そやな、アインちゃんメッチャ強いもんな……」


手加減してたとはいえ、咲夜くんを圧倒したんやもんな。これで小学四年生って一体どういうこっちゃ?……そういや私の周りにもいるなぁ。小学三年生で砲撃ぶちかましたり、大剣振り回したりしてた、いやしてるのが……私も大概か、広域殲滅魔法ぶちかましてたもんなぁ……小学三年生で。


「……あの、咲夜さん。一つお願いがあるんですが……」

「ん?何?」

「たまに。たまにで良いんです。私と、戦ってくれませんか?」

「良いよ?」

「やっぱり、迷惑ですよね……え?」


アインちゃんは驚いて顔を上げる……って、私が色々と考えてる間に話がメッチャ進んどる!


「い、良いんですか……?」

「良いも悪いも断る理由無いし、断空についてもっと詳しく教えて欲しいし……こっちとしては願ったり叶ったりだからね。はやてさん。別に問題無いですよね?」

「え、そ、そうやな。私を無視して話進めてたんは気に入らんけど……あっ、だったら一つお願いがあるんやけど!」

「な、なんですか……?」


警戒して後ずさるアインちゃん。
……確かにちょーーーっとやり過ぎた感はあるけど、そこまで警戒せんでも……。


「あのな?私と咲夜くんが保護責任者になってるヴィヴィオって子がおんねん。で、やな?歳が近い子があんまおらへんのや。だから、アインちゃん。ヴィヴィオの友達になってくれへんかな?」


もっと違うことを頼まれるのかと身構えていたアインちゃんがポカンと口を開けて呆然とする。
……何を言われると思ってたんや?

アインちゃんは少し考えたあと、私を見て、


「私なんかで良いんですか?」

「当然や!アインちゃんならヴィヴィオと仲良くなってくれそうやから頼んだんやで?」

「……分かりました。私で良ければ」

「ほんま!?ありがとう、アインちゃん!」

「どういたしまして」


抱きつこうとしたらススッと咲夜くんの背に隠れたアインちゃん。
……ちょっと複雑やけど、まぁ、良かった!これで歳が近い友達がヴィヴィオに出来る!


「―――それではお二人とも。本日は本当にありがとうございました」

「うん。それじゃあまたね?」

「またな、アインちゃん!」

「……はい」


最後にアインちゃんはペコリと頭を下げて、歩いて行った。色々と面白い子やったなー。


「今度六課にアインちゃんが来た時には抱き付かないでくださいよ?」

「分かっとるよー。心配性やな、咲夜くんは。あー、でも本当に楽しかった……」

「ど、どうしました?急に黙り込んで」


……そうやな。楽しかった、充分楽しんだ。だから、もう満足や。

私は咲夜くんを見る。私を護ると誓ってくれた子。私を四年間思い続けてくれた子。
私はこれからこの子に辛い思いをさせる。けど、逆に言わない方がこの子は傷つくだろう。この子はそういう子や。


「あの、はやてさん?大丈夫ですか?」


咲夜くんが心配そうに声をかけてくる。

黙っていたらどれほど楽なんやろう。そうすればこの子とずっと笑って過ごしていられるはず。ずっと一緒にいられるはず。でも、それじゃ駄目なんや。あの人(・・・)のことをこの子に話しておかな……私にはこの子の傍におる権利が無い。この子が傍にいなくなったら私は耐えられないだろう。でも……、


「話があるんや、咲夜くん。大事な、大事な話が」


―――それでも、話さなきゃならへんのや。









sideミーナ



「おっ、出て来ましたね」

「あのアインハルトってガキも一緒か?」

「一緒みたいね……というかヴィータ。ガキってあなたが言えること……ごめんなさい」


ヴィータさんがチラつかせたグラーフアイゼンを見てドゥーエさんは即座に謝る。良い反応、そして良い判断です。伊達に東条隊の一員というわけではないみたいですね。

ビルの陰から私たちが見据えるのは盗撮対象……もとい、監視対象の八神はやて部隊長と東条咲夜。そしてその二人に助けられた物静かな少女―――アインハルト・ストラトス。なんで名前知ってるかというとドゥーエさんが読唇術を駆使してくれたからです。この人、本当になんなんですかね。


「あっ、なんか話してるぞ」

「ドゥーエさん、頼めますか?」

「任せなさい」


さっきも言った通り、読唇術が出来るドゥーエさんに頼む。もう少し近づければ良かったんですが、元々勘の良い咲夜がいるというのに更にあの良く分からないけど凄腕っぽいアインハルト……長いです、アインちゃんで良いでしょう。がいるからこれ以上近づけません。


『……あの、咲夜さぁん。一つお願いがあるんですけどぉ……』

『ん?なんだい?』

「……なぁ。さっきから思ってたけど、ドゥーエ(こいつ)の読唇術合ってんのか?」

「一抹の不安はありますが……今はこれに頼るしかありません」


確かにあの大人しそうな子からあんな色っぽい台詞が出るとは思いませんが……それに咲夜がなんだい?って……帰ったらネタにしましょう。


『たまに。たまにで良いんです。私と、一緒に……』

『待ちなさい!この泥棒猫!私の咲夜を奪うなんて許さない!』

「「待て待て待て待て」」

『あんたなんかより私と一緒の方が……何?今良い所なのに?」


ブスッと不満そうな顔で振り返るドゥーエさん。いや、おかしいですから!


「どう頭の中で変換したらそうなるんですか!?大体今部隊長喋ってませんでしたよ!?」

「何よ、文句あるの!?私はいつも東条隊の奴らの尻拭いで疲れてんのよ!少しは楽しんだっていいじゃない!」

「ここで楽しまなくてもいいじゃねーか!なんだよ、今の昼ドラみてーな展開は!?」


ギャーギャー叫び合う私たち。もしかしたら重要なこと話してるかもしれないじゃありませんか!なんてことしてくれるんですか!


「大体私はね……って、行っちゃうわよ、あの二人?」

「なんですって?……いつの間にかアインちゃんもいなくなってる!」

「ちっ!追いかけんぞ……ん?」


たった今追いかけると宣言したヴィータさんが宣言後二秒で止まり、独り言を呟き始めた。あああ、もう!なんですか!見失っちゃいますよ!?


「……分かった。頑張って」

「ヴィータさん!何やってるんですか!このままじゃ「帰るぞ」はい!?」


ヴィータさんはそう言うと、カメラを持って身構えてたドゥーエさんとゴミ箱に寄りかかって呻いてたセナ―――いたんですか―――を引きずり、部隊長たちとは正反対の方向へと歩き出した。ええ!?


「何故帰るんですか?まだまだ……」

「はやてにバレてた。今はやてから念話があったんだ。『あの話するからここまでな?』って。ほら、行くぞ」

「ちょ、ちょっと待ちなさい!あと二十枚撮らないとノルマが……!」

「ぅぅぅ……」


ドゥーエさんとセナの叫びを無視してヴィータさんはスタスタ歩き始める。ば、バレてたって……?


「どういうことですか?それにあの話って……」

「はやては最初から知ってたみたいだな、あたしらがいたこと。あの話ってのは秘密だ」


そこまで言うとヴィータさんは空を見上げて、



「―――やっとはやてが、覚悟を決めたんだからな」



そう言うヴィータさんは、まるで子供を見守る母親のようだった。







side咲夜



「それじゃ、座って話そか?咲夜くん」


―――時刻は夜の十一時。

人が少なくなってきた街の中でも特に人気の無い公園のベンチに座ったはやてさんが自分の隣を手でペシペシ叩く。俺は無言でそれに従い、はやてさんの隣に座る。

そんな俺を見たはやてさんはむーっ、と唸って、


「なんや、無愛想やなぁ。いつもの咲夜くんなら可愛く顔を赤くするところやと思ったのに」


……ハァ。まったくこの人は。


「はやてさんが大事な話だ、って言うから意識しないようにしてたんですよ?」

「……そやったな。ごめんな、こういうやり取りが出来るのも今日が最後と思うとちょっとな?」


これから寂しくなるなぁ、とはやてさんは笑う。……は?


「ちょ、ちょっと待ってください。それってどういう意味ですか?」

「そのまんまの意味や。これから私が話すことを聞いたら咲夜くんは私を軽蔑して、二度と顔なんて見たくないと思うはずや」

「なっ!俺がそんなこと思うわけ……!」

「思うんや。これから私が話す『兄ちゃん』のことを聞いたらな」


その言葉を聞いて俺は石のように固まる。兄ちゃんって、はやてさんやフェイトさんたちが今まで秘密にしてきた、あの……?


「話して、くれるんですか……?」

「うん。今日一日一緒にいて、一緒に過ごして、やっと決心した。私はもう逃げへんよ。例え咲夜くんに軽蔑されようとも、な」

「……さっきも言ったでしょう。俺がはやてさんを軽蔑なんてするはずありません」

「するよ、絶対な。んじゃ話そか。今から十年前のことや」


十年前って言うと……確か、闇の書事件があった年。はやてさんが魔法を知るきっかけになった時のことだったか……?くそっ、こんなことなら詳しく調べときゃよかった。俺よりちょっとは知ってる凪も今いないしな……。


「私な?昔歩けなかったんよ。まぁ、原因は闇の書やったんやけど、そん時は魔法なんて知らんかったから、ただの病気やって思ってたんやけどな?」


はやてさんは昔を懐かしみながら話し出す。
……それは知ってる。昔ヴィータさんに聞いたからな。


「病気なら仕方ないって心の中では思ってたんやけど、公園とかで元気に走ってる子とかを見ると、なんで私は歩けないんやろう。とか思ってまうねん。そん時はよく神様のこと馬鹿とかハゲとか言ってたわ」


神様は悪かないのにな、と笑うはやてさん。
俺はただはやてさんの話す言葉を一字一句聞き逃さないように黙っている。


「で、ある日いつも通りに買い物して、いつも通りの道を通って家に帰ってたんや。でな?少し気が緩んでたんかな、食べ物が入った袋を落としちゃったんや。で、それを拾いに行ったら……トラックが来てな?」

「トラック!?だ、大丈夫だったんですか!?怪我とかしてませんよね!?」

「お、落ち着きぃ!ほれ!見ての通り私はピンピンしとるわ!」


はやてさんが両腕をブンブン振って元気なことをアピールする。
そ、そうか。トラックに引かれたらここにいるわけないよな……。ああ、ビックリした。


「まったくもう……でな?トラックに轢かれかけた私を助けてくれたのが、その『兄ちゃん』なんや」


……なんだ、そのヒーロー。格好良すぎだろ、兄ちゃんとやら。


「ちょっと黒めな碧銀の髪に、右目は紺に左目は青のオッドアイ。で、服は驚くことに今の咲夜くんのバリアジャケットと同じや」


ああ、だからはやてさんはクーデターの時に俺を見て驚いてたのか。


「てっきり嫌われたから避けられてるのかと思ってました」

「私が咲夜くんを嫌うわけ……いや、今の私が何を言っても信じられないやろな」


……さっきからなんだ?はやてさん、自分を卑下するようなことばっかり……どうしたんだろう?


「そのあと兄ちゃん―――サキ兄ちゃんは私をおぶって家まで運んでくれたんや。で、なんかお礼がしたいゆーたら、要らへんって言うんよ。私どうしてもお礼したかったから色々聞いたんよ。そしたら家が無いことが分かってな?だったら、と思って私の家に居候させることにしたんや」

「み、見知らぬ男と同棲!?大丈夫だったんですか!?」

「お、落ち着きぃ!私はこの通り……って、何の心配しとんねん!」

「え、それはその……ナニ、とか」

「しとらんわッ!」


俺のアレな疑問に対して、はやてさんは息を荒くして、顔を赤くさせながらも断言する。
よ、よかった……って、俺は何を考えてんだよ!


「ハァ、ハァ……ったく、話戻すで?……で、サキ兄ちゃんともう一人の連れとの同居生活が始まったんやけど……今まで一人やった私にとっては眩し過ぎてな?突然泣いて二人を困らせてもうた。私が悪いんやけど、二人が慌てる姿見るんは楽しかったわぁ」


本当に楽しかったのだろう。はやてさんは子供みたいに無邪気に笑う。


「しばらく三人で住んでたんや。で、ある日……というか私の誕生日に闇の書の封印が解けてな?私にとって一生モノの、かけがえのない家族が出来たんや」


シグナムさんたちヴォルケンリッターのことだろう。はやてさんとヴォルケンリッターの皆さんの間に強い絆があるのは見ているだけで分かる。


「楽しかった。ほんまに楽しかったんよ―――でもな?12月24日、クリスマスイブの時に起きたんや……闇の書の起動が」

「……知っています。当時のなのはさんとフェイトさんたちが止めてくれたんですよね?」

「うん、二人も頑張ってくれたよ?感謝しきれんぐらいや。……でもな?絶望に落ちようとしてた私を本当の意味で救ってくれたんは―――サキ兄ちゃんやったんや」


……むっ。はやてさんを助けてくれたのは感謝してるけど、どうも癪に触る。何故か分からんけど。


「そのあと、初代リィンフォースから暴走した闇の書の防御プログラムを引き離したんや。そいつはコアを破壊しない限り無限に再生するっつー厄介なやつでな?みんなでバリアを破壊して弱らせて宇宙に転送してアルカンシェルでコアを破壊する作戦に出たんや」

「成る程、無限に再生する親父を相手にするようなもんか」

「その例えはどうかと思うけど……まぁ、ともかく。みんなの一斉攻撃で転送出来るレベルまで弱らせよう思たんやけど―――ほんのちょっと、足りんかったんや」


……は?


「ど、どういうことですか?」

「言葉の通りやよ。ちょっと。ほんのちょっと足りなくてな?コアを露出させるまではいけたんやけど、宇宙に転送出来なかったんよ」

「え?じゃ、じゃあどうやって……」

「ふふ、もう分かってるやろ?」


……分かってしまった。今までの話の流れからして……。


「兄ちゃん、ですか?」

「そや。兄ちゃんがコアを叩き斬るって言ってな?みんな無茶や、って言って止めたんや。けど兄ちゃん行っちゃってな?そのまま……」


そうか、兄ちゃんはもう……。





「―――コア叩き斬って帰って来たんよ」

「バケモノか!?」


おかしいよ、兄ちゃん!はやてさんたちが全力で弱らせて、アルカンシェルでやっとって代物を叩き斬ったって!親父以上のバケモノじゃねぇか!


「まぁ、あん時は私もビックリしたわ。でも結局兄ちゃんやからでみんな最終的に納得することにしたんやけどな」

「……適当ですね」

「そうしなきゃクロノくんとかが発狂しそうやったんよ。……で、な?そのあと兄ちゃんは、いなくなったんよ」

「え?なんでですか?」


今までの話の中にその兄ちゃんがいなくなる要素なんか無かったと思うんだが。


「理由は今でも分からへんねん。兄ちゃんはただ一言『待ってる人がいる』って言ってどっか行っちゃったんよ。ひどいよな?まだ、助けてもらったお礼も満足に出来とらんかったのに」


その時見えたはやてさんの横顔で察してしまった。はやてさんは……。


「そのまま兄ちゃんが帰って来ないまま六年が経って、空港火災事件が起きて……キミに出会ったんや。どことなくサキ兄ちゃんに似た―――咲夜くん(キミ)に」



―――そいつ(サキ)が、好きなんだろう。



「私は、キミに会ってからずっと兄ちゃんをキミに重ねてきた。もちろんキミ自身のことも見てた。けど、私には……兄ちゃんの存在が大きすぎたんや」


はやてさんは自分の罪を懺悔するかのように自分の気持ちを話していく。だがそのほとんどは俺の耳に入ってこない。ただ、俺の頭の中には一つの言葉しか浮かんでいない。


「私は、咲夜くんの好意に甘えてたんや。咲夜くんと一緒にいることで兄ちゃんを思い出そうとしてたんや。ハハッ、最低やろ?私は、咲夜くんが私に抱いてくれた四年間の好意を出汁にして、兄ちゃんのことを思い出してたんや」

「……はやてさん」

「ごめん、ごめんな、咲夜くん。いくらでも嫌ってええ。罵ってもええ、殴ってもええ。私はそれほどのことをしたんや。私は……」

「はやてさんッ!」

「ッ!?」


はやてさんは殴られるとでも思ったのか、ビクッと身体を震わせ、縮こまる。
……馬鹿だな。俺がはやてさんを殴るわけないじゃないか。

俺は、先程から頭に浮かんでいた言葉、俺の気持ちを言い放つ。



「―――そんなことですか(・・・・・・・・)?」

「……え?そ、そんなことって!私は勇気出して……!」


ああ、もう!まだ分かんないのかよ!


「あんたが何言ったって!俺があんたを好きだって事実は絶対変わらないんだよッ!」

「えっ……どういう、こと?」


〜〜〜〜ッ!もうとことんまで言ってやる!


「あんたが誰を好きでも関係無い!俺はあんたが好きなんだ!四年前からずっとな!そんな俺があんたを嫌うわけ無い!」

「でも!私は咲夜くんを騙して……!」

「ッ!ああ、もう!」

「ひゃっ!?」


俺ははやてさんの両腕を掴み、はやてさんをベンチに押し倒す。
この分からず屋め……!こうなったらもう自棄(やけ)だ!


「痛ぁ……咲夜くん、いきなり何すん……むぅ!?」


何か喋ろうとしたはやてさんの唇に自分の唇を重ねて無理矢理塞ぐ。


「むーッ!むむ、むぅ……」


はやてさんは最初は身体を動かして抵抗していたが、抵抗しても無駄だと思ったのか、身体の力を抜いて目を閉じた。はやてさんの吐息が俺の顔に当たる……って、これ外から見たら俺が襲ってるみたいじゃねぇか!


「ッハァ!危ねぇ……!」

「ん、ふぁ……しゃ、しゃくやくん……?」


はやてさんが蕩けた目と呆けた顔をして、呂律が回らない口で俺の名を呼ぶ。
……ヤバい。可愛い……って、そうじゃなくて……ああ、もう!




「とにかく!はやてさんがその兄ちゃんが好きだろうとなんだろうと、俺ははやてさんが好きだ!

兄ちゃんを俺に重ねてた?上等だ!直に俺しか見えないようにしてやる!

俺を騙し続けてた?関係ねぇ!そんな些細なことで俺ははやてさんを嫌ったりしねぇ!

俺は【夜天の王】八神はやてを護る騎士だ!主の全てを受け入れるのが騎士ってやつなんだよッ!

分かったか、この馬鹿主ッ!俺の気持ちはその程度のことで薄れるようなもんじゃねぇんだよッ!」




はやてさんは俺が叫んだことが理解出来ていないのか、未だに呆然としている。
俺とはやてさんは見つめ合う。一秒、二秒、三秒……はやてさんの顔がみるみる赤くなっていく。かくいう俺もさっきから顔が熱い。なんだこれ。恥ずかしいぞ、ちくしょう。


「ほんまに、ほんまに私でええんか?私なんかで、ええんか……?」

「しつこいですよ。さっき言ったばかりじゃないですか。聞いてなかったんですか?」

「い、いや聞いてたけども!どうも信じられなくて……あんな大胆な告白受けたん、初めてやから」

「うっ……」


あ、改めてそんなこと言われるとメチャクチャ恥ずかしい。も、もっと控え目にしとくべきだったか?でもこんな真正面からちゃんとした告白すんの初めてだったからあれぐらいでちょうど良かったのかも……って。


「……はやてさん。何してんすか?」

「何って……抱き付いてるんやけど」


俺の右半身にピタッとくっつきながら平然と言うはやてさん。いや、あの、胸が……。


「あは。なんや?さっきはあんな強引にキスしといて、今更胸が当たってるだけで動揺すんのか?」

「……さっきのは、勢いです」

「じゃあ私のこれも勢いや」


はやてさんはそう言うと俺の首に両手を回し、更に密着する。なんか今日の最初辺りのはやてさんに戻っちゃったんだけど。


「咲夜くん。こっち向いて」

「……いきなりキスとかしないでくださいね?」

「なんでバレたん?」

「なんとなくです」

「なんやねん、それ……えい」

「うおっ!?」


首に回された両腕で強引に顔を向けられる。俗に言う目と鼻の先にはやてさんの顔がある状況。
うう、さっきキスした時は平気だったのに、どうしてこんな顔が熱くなるんだよ……。


「咲夜くん。最後にもう一度聞くわ―――ほんまに、私でええんか?咲夜くんを騙してた、こんなズルイ私でええんか?」

「―――当然です。俺はそんなはやてさんが好きなんです。はやてさんの全てが好きなんです」

「……ありがとう。ありがとな、咲夜くん」


俺に礼を言ったあと、はやてさんは二カッと笑って、




「―――大好きや♪」




―――そして、俺とはやてさんは本日二度目のキスをした。



あーあ。ナニやっちゃったか、こいつら。

アインハルト「あなたがナニをやったと思うのならそうなんでしょう。あなたの中では」

咲夜「ナニってなんだよ!?」


はい。というわけでやっと素直になったはやて。気持ちを吐き出した咲夜……。

シリアス(笑)かと思ったらシリアルだったぜ!反省はしていない!


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