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三十二話です!

はやてのターン……かと思ったらアインハルトのターン!
第三十二話
side咲夜



「この服とかええんちゃうか?ほら、着てみぃ?」

「い、いえ、私は……お、押さないでください」


なんかフリフリした服(俺にはそうとしか表現出来ない)を持ったはやてさんがアインちゃんを試着室に押し込む……あ、アインちゃんってアインハルトちゃんのことな。そして今俺たちがいるのは服屋。

どうしてそんなところにいるのかというと、アインちゃんを助けた……というか不良たちを助けたの方が正しいか?まぁ、その時まで遡るんだが……あの後、はやてさんも合流して話したんだが、ああいう奴らは半殺しにまでされるという目に遭っても存外しぶといこともあるから、このままアインちゃんを放っとくのは良くない。という結論に至って、じゃあどうするかと考え込む……と思ったら、はやてさんが『じゃあ私らと一緒にいればええやん』と言い、アインちゃんは迷惑はかけられないと遠慮していたが、結局はやてさんが押し切って……。


「ほれほれ、脱いだ、脱いだ!」

「その、そういう服はあまり……ひ、引っ張らないでくれますか」


今現在アインちゃんは試着室内ではやてさんにもみくちゃにされている。いや、カーテン掛かってるから見えてないけど。はぁ、はやてさんったら……なんでアインちゃんを連れてるか忘れてるんじゃないか?


「はやてさん?アインちゃん嫌がってるじゃないですか」


俺がそう注意すると、試着室の中からえー、という声が聞こえた。いや、えー、じゃないでしょ。


「嫌がってるのに無理矢理なんて、アインちゃんかわいそうでしょう?」

「……あの、咲夜さん」

「あれ?アインちゃん、どうしたの?」


アインちゃんが試着室から顔だけひょこっと出してきた。どうしたんだろ?


「出来れば、アインちゃんというのは止めて頂けませんか?」

「え?なんで?」


可愛いと思うんだが。
アインハルトちゃんは呼びにくいし、ストラトスちゃんも何か違うし……結局アインちゃんが一番呼びやすいんだけどなぁ。俺がそう思っていると、アインちゃんは試着室のカーテンの端っこを指でいじりながら、


「いえ、その……恥ずかしいので」

「いやー、もう!アインちゃんかわえーなー!」

「ひゃうっ!?へ、変なところ触らないでください」


ひょこっと出ていたアインちゃんの顔が試着室の中に引っ込む。引っ込む時に見えた顔、凄く赤くなってたけど……何してんすか、はやてさん。

しかし先程から俺に突き刺さるお店の中にいる人たちの視線がキツい。あれか?微笑ましいわね、とか思われてんのか?……いや、それはまぁ、良いんだけど、なんか四つほど変な視線感じるんだよなぁ。しかもその内の一つは殺気っぽいの放ってるし……。いや、他の三つの視線も大概なんだが。


「よし、完璧や!なぁなぁ、咲夜くん!見て、見て!」


試着室のカーテンが開く。その先にいたのは……。



「あ、う……」


―――顔を真っ赤にしながら、ヴィータさんのバリアジャケットを真っ黒にしたような服を着ているアインちゃんがいた。……ふむ。



「って、何着させてんですか!?」

「えー?似合ってるからええやん」

「うぅ……」


ほら、アインちゃんすっごい落ち込んでる!そりゃ無理矢理こんな服着せられたら落ち込みもするよ!


「せめてフリフリを無くしましょう!その方が絶対良いです!」

「このフリフリがええんやんか~。分かっとらんなぁ」

「……ぐす」

「「!」」


え?アインちゃん泣いて……ちょっと、ちょっと!?







あのあと、泣き出しそうになったアインちゃんをなんとか慰め、暴走気味だったはやてさんを抑えて、なんとか普通の服を買わせる……というか、アインちゃんが元々着ていた純白のワンピースに戻させました。


「うん。これで、よし!」

「……なんや、咲夜くん。私が無駄なことしてたみたいな言い草やな」


はやてさんが口を尖らせて不満そうに言う。
それは被害妄想というモノです、はやてさん。


「さっきのよりは格段に上です。それに似合ってますし」

「……そうですか?」

「うん。さっきのよりは……というよりアインちゃんは白い服が似合ってるよ。うん、さっきのは無い」

「なんか今日の咲夜くん、キツぅないか?」


背後から突き刺さる疑いの視線を無視する。俺はいつもこんな感じですよ。


「あの……なんではやてさんは私に服を買ってくれようとしてくれたんですか?」

「ん?いや、着せ替え人形に……コホン。少しでも見た目変えとけば、さっきの不良たちにバレないと思ってな?まぁ、良く考えたら咲夜くんがいるんやから心配はないわな……アハハ」

「そうですか……着せ替え人形?」


アハハと笑うはやてさんをアインちゃんがジト目で睨みつける。
はやてさん、誤魔化しきれてないですよ!?というかそれが目的だったんですか!?……なんかアインちゃんの身体から魔力溢れ出てる!うわ、凄い魔力……って、やばい、やばい!


「アインちゃん!?押さえて、押さえて!」

「……あ。す、すいません。ちょっと気が動転して……」


アインちゃんは先程まで放出していた魔力を抑える。しかしはやてさんへのジト目はやめない。……相当根に持ってるよ、アインちゃん。


「そ、それで?これからどうするんですか?」

「え?あ、ああ、そやなー。あの不良たちのせいでデートもおじゃんになっちゃったし……」


やっぱりさっきまでのはデートだったらしい。ほとんど俺が振り回されてただけだったと思うんですが。


「デート……逢い引きのことですか。でしたら私は邪魔なのでは……」

「今ここで俺たちと離れたらまたあの不良どもが近寄ってくるかもしれないだろ?だったら一緒にいた方が良いよ」


というかアインちゃんがいなくなったらあの色々とおかしいはやてさんが復活しちゃうから、いてくれると嬉しい。てか逢い引きって……古いな、アインちゃん。


「うーん……じゃあアインちゃんが行きたいところでええよ」

「え?いえ、私は」

「でも街にいたってことはどっか行きたいところがあったってことやろ?どこでもええで?金は仰山あるから」

「その金は一体どこから出てるんですか?」


俺がそう聞くと、はやてさんは横を向いて口笛を吹き始めた。……まさか経費じゃないでしょうね?

アインちゃんは少し迷ったあと、決心したのか顔を上げ、俺を見る。……何故俺?


「咲夜さん。あなたは魔導師ですよね?」

「ああ、魔導師っていうか騎士だね。でも使うのは刀だから剣士かな」

「それでは拳を使った近接戦闘(クロスレンジ)は出来ますか?」

「拳を使った近接戦闘(クロスレンジ)?まぁ、そこらのやつより出来る自信はあるけど……」


前に(正宗)と引き分けた経歴があるし。スバルちゃんやギンガには負けるだろうけど。というかそんなこと聞いてどうするつもりなんだろう?さっき不良に襲われてた時の身のこなしで何か武術っぽいのをやってる気はしたけど、まさか戦ってください、なんて言うはずないよな……。


「では、私と戦ってくれませんか」


……マジですか。


「えーっと、なんで?」

「私の実力を確かめたいんです」

「……俺より適任がいるんじゃない?それにアインちゃんは女の子だし」

「性別は関係ありません。それに、私はあなたと戦いたいんです。【闇を切り裂く者】東条咲夜さん」


小学四年生の女の子にまで知られてるってどんだけだよ。だからあの名前受け継ぐの嫌だったんだよな……っと、今は現実逃避してる場合じゃないか。どうしようか……。


《やってあげたらええやん》


はやてさんが念話で話しかけてきた。やってあげたらって……。


《相手は女の子ですよ?》

《ほう?女の子やから戦えないって言うんか?あれか、咲夜くんは女の子は戦うべきじゃないとか言う人か。だったら六課の大半を敵に回したことになるなぁ?》

《む……》


そう言われると反論出来ない。それに今考えたらそんなことをシグナムさんやヴィータさんの前で言ったら、大変なことになりそうだな……ハァ、仕方ないか。


「分かった。やるよ」

「本当ですか?」

「疑わなくても大丈夫だよ。男に二言は無し。……でも、どこでやるの?」

「あっ……」


戦う場所を失念していたのか、アインちゃんはおろおろしながら慌て始めた。考えてなかったのか……でも、この辺りで戦えそうな場所なんて……。


「だったらあそこがええんちゃうか?」


はやてさんが指差した先にあったのは……。


「「ストライクアーツ練習場?」」

「そや。あそこなら適役やろ?」


ストライクアーツ……ミッドチルダで最も競技人口の多い格闘技だったか?確かにそこの練習場なら多少暴れても問題無さそうだな。


「よし、じゃああそこで良い?アインちゃん」

「はい」


三人で練習場に向かって歩いて行く。気のせいか、アインちゃんの足取りが少し軽い気がする。いや、少しだけどな。







十分後、ストライクアーツ練習場の中で、俺とアインちゃんは対峙していた。
今俺たちがいるのはストライクアーツ練習場の非会員の練習場。非会員はここ、会員はもっと設備の良い場所があるらしい。まぁ、ただ手合わせするだけならここで充分だけど。

俺は拳にナックルガード、足にレッグガードを着けているが、いくらこれを着けてるっていっても女の子を殴りたくないんだが……というか。


「……はやてさん。なんかギャラリーが多くないですか?」

「そりゃ大の男がちっちゃな女の子と戦うってなればみんな見に来るやろ」


冷静なお言葉ありがとうございます、はやてさん。ちなみにはやてさんは審判。
視線がキツイ。物凄くキツイ。イジメか?イジメなのか?流石にこの視線の中、やりたくないんだが……。


「……私がちっちゃな女の子でなければ、問題は無いんですか?」

「ん?ま、まぁ、そうなるかな」

「そうですか。では―――武装形態」


アインちゃんがそう言った瞬間、アインちゃんから光が発生し、その光が収まると、そこにははやてさんぐらいの背丈になったアインちゃんがいた。……凄いな。


「変身魔法か?」

「そのようなモノと思ってくれれば結構です。……これなら問題無いでしょう?」


アインちゃんは拳を構える。次いで俺も拳を構える。
俺たちの間の空気が張り詰める。試合の合図を出すのは―――はやてさん。


「じゃあいくで?試合―――開始ッ!」



「では―――いきます」


瞬間、三メートルほど前にいたアインちゃんが俺の目の前に現れた―――ッ!?


「ちぃっ!?」


顔面に向かって放たれた右拳を間一髪避ける。速っ……!?


「しっ」

「くっ!?」


腹に向かって振るわれた左拳を右腕で受ける。
チッ……!速いし、重い!これが、子供の力かよ!?


「ふっ!」


俺はアインちゃんの腹に向けて左拳を放つ―――が。


「―――せいっ!」

「うおおお!?」


左腕を掴まれ、そのまま投げられてしまった。何とか空中で態勢を立て直し、着地する。
マジかよ、アインちゃん強すぎ……!?

気付くと前には右腕を振りかぶっているアインちゃん。マズイ!
咄嗟に両腕を交差し、ガードの態勢を取る。だが、




「―――覇王断空拳」

「ぐ、ぅ……!?」



―――ガードした程度で防げる程、甘い攻撃では無かった。



「がっ……!けほっ」


ガードの上ごと吹き飛ばされ、練習場の壁に叩きつけられる。出鱈目だ……なんだよ、あの打撃……!

アインちゃんはゆっくりと俺に向かって歩いてきて、三メートル前ほどで止まり、


「手加減は無用です」


信じられないことを言った……おいおい。


「……俺は最初から本気だったけど?」

「いいえ、あなたは無意識に力をセーブしています。やろうと思えば試合開始直後に私を昏倒させることも出来たはずです」


……確かに最初は女の子を殴るのはどうかと思ってたから、初動が遅れたけど。だからって、本気を出してないわけじゃない。ただ単純にアインちゃんが強いんだ。多分この子は天賦の才ってやつを持ってる、所謂天才だ。本職が刀振りの俺が拳での近接戦闘(クロスレンジ)で勝てるわけがない。


「もう一度言います。手加減は無用です。本気で、お願いします」

「ったく、案外アインちゃんって我が儘……グッ!?」


突然左目に鋭い痛みが走った。思わず左目を手で押さえる。なんだ、これ……ッ!




『また僕の負けか―――。いつになったらキミに勝てるのかな、■■■■■』




閉じているはずの左目に、俺のバリアジャケットと似た服を着ている男が映り、頭の中にその男らしき声が響く。しかし男の顔はぼやけていて見えない。


―――誰だ?こいつ。なんなんだ?これは。




『そう簡単に負けるわけにはいきませんね、■■■■。私は一応■王家の正統王女なのですから』




今度は肘の上まであるガントレットを着け、騎士甲冑のような服を身に纏った女が現れた。やはりこの女も顔がぼやけていて見えない。




『ごっめーん、遅れた!どっちが勝った……って、聞くまでもないか。もうこれで0勝三十敗だよ?■■■■』




続いてどこか聞き覚えのある声が聞こえた。全身真っ黒で、所々に白いラインが入っている騎士甲冑を着た女が現れた。この女も顔がぼやけていて見えないが、腰に提げているのは、


―――凪……!?


新たに現れた女の腰に提げられていたのは、俺の唯一無二の相棒―――凪。なんで、凪が……?




『今度こそ、いけると思ったんだけどな。やっぱり■■■■■は強いよ……■■!今度はキミが相手をしてくれないかい?試してみたい技があるんだ』

『なに?■■■■■で駄目だったから次は私?節操無いわね~、■■■■』

『そっ、そんなんじゃない!』




男が慌てるのを見て、凪を提げた女はニヤニヤ笑い、男と戦っていた騎士甲冑の女は口に手を当てて笑う……待て。俺は、あの凪を提げた女を知ってる?そんな気がする……けど、思い出せない。頭に靄がかかったみたいだ……!




『ふふふ……それで?その試してみたい技というのはなんなんですか?■■■■』

『聞かなくてもいいわよ、■■■■■。どうせ大した技じゃないだろうしさ~?』

『む!だったら自分の身で試してみるかい?僕が編みだした新技……断空を!』

『ふふん。■■■■■にも勝てないのに、この【■■■■■■■】に勝てると思ってるの?』




―――断、空?そういやさっきアインちゃんも、断空とか言ってたような……。



「ッ!?」


そこまで考えたところで左目の痛みが引き、さっきまで見えていた映像も、聞こえていた声も途絶えた。……なんだったんだよ、あれ。


「咲夜さん、どうしたんですか?目を怪我でもしたんですか?」

「ッ!?そうなんか、咲夜くん!?」


アインちゃんとはやてさんが心配そうな声を俺に向ける。……アインちゃんの立ってる場所が、さっきと変ってない?さっきの映像を見てた間は、時間は進んでなかったのか……ぐぇ。


「咲夜くん!?大丈夫か!?大丈夫なんかっ!?」

「だっ、だいじょ、うぶ、ですか、ら!揺らさないで、くださ、い!」

「あっ、そうなん?」


はやてさんは俺の肩から手を離す。し、死ぬかと思った……と。

身体の調子を確かめる。さっきのアインちゃんの攻撃のせいで節々が痛いけど、まだ動ける。


「それじゃあ、続きをしようか。アインちゃん」

「―――え?」

「な、何言っとるん!?止めた方がええよ!」


アインちゃんは呆然とし、はやてさんは止めてくる。むぅ……大丈夫なんだがな……。


「じゃあ全力全開の一撃を一発だけ。それでどうですか?」

「……ホンマに大丈夫なんか?」

「大丈夫ですって。それに女の子に負けるなんて、カッコ悪いところ見せたくないですからね」

「……分かった。帰ったらなのはちゃんと一緒にお話な」

「え?」


最後に恐ろしい一言を呟いてはやてさんは離れていった。……今は考えない!

さてと。全力全開なんて言ったんだから、それ相応のやつを放たなきゃな。

俺は足元から練り上げた魔力を右の拳に乗せ、振りかぶる。これを見たアインちゃんの顔が驚愕に染まる。おっ、流石に自分と同じことされたら驚くか?


「何故、あなたが断空(それ)を?」

「いや、なんか分からないけど、いきなりやり方が頭に浮かんでな?出来ちゃった」

「そんな馬鹿な……。それは、覇王の……」


アインちゃんは何かショックを受けたのか、俯く。おいおい、俯くんならあとにしてくれないかな。


「アインちゃんが言ったんだよ?本気で来い、って。今は何も考えずに―――ただ全力をぶつけて来い」

「……そうでしたね。すいませんでした」


アインちゃんは頭を下げたあと、俺と同じように足元から練り上げた魔力を右の拳に乗せた。良いね、お互い全力全開だ。


「では―――いきます」

「応!」


俺たちは同時にその場を跳び出し、



「「覇王!」」



同時に拳を放った!



「「断空拳ッ!」」




いつの間にかバトルになってた。これが覇王の力か!(違

アインハルトさんがキャラ崩壊してる気もするけど、自分の中ではアインハルトさんこんな感じ。もう最強です。


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