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ゴシカ (Gothica) 作者:2bFYiQ

第 1 章 ―― 現存する悪の純粋和であるような がむしゃらな矢めいた狂犬は, 例えば, 三門公会 (cf. 古代プロパティー - GX 期) が述べざる理由としての レギスタ実線を開封できた影だ

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第 5 部分

夜がりきった闇の中, より底知れず立ちつくしていたギーゼラは, おもむろに顔を上げた. 暗い現象液の水面みなもへ小さなグリザイユが浮かびあがる. もちろん, 山間部は高が広場の一区画だ. 下ればすぐに, 電灯に照らされた舗道に出られる. しかし, それは可能であった (山間部と都市部とは, 絶対に互いをおびやかしはしない (不可視の気配にきたつことも無い). 内在的に控えて意味を充填しあうものだ. だから, ハープシコードの空が足りないことを恐れないで良い. 広場という形式はエンクロージャーにしては軽すぎて, 中のミニアチュア的な 2 区分は, ほんものの都市や山では見さだめづらい弱さを, ぎゅっとその一身に凝縮している. ―― くして, 眼に見える複数広場は "複数広場" と結節するのだから). これまでに出てきた断片を余さずして一貫する理論を, 複数広場を組成そせいするところの底において, 見つけなければならない. そうして, 彼ら ―― 複数高速連絡, 及びその意思を継ぐ Aeras ―― が投じた世界に肉迫しなければならない. ギーゼラは, 夜が最も濃香な場所として 木々の立ちならぶここを選んだのだが, 推理は今, いっそう視認しがたく黒翳を帯びて離陸する.

第 4 版は, 唯一特に情報を摑めなかった上, 国営鉄道の開通と時期的に符合しているからには, 国鉄において消和されたのであろう. 半径は発火した. それが, 続く第 5 版に残響し 3 版にも遡及した結果が, 現在の都市部/山間部の区分けなのか. しかし, あの慄気おののけ立つ炎の合意が, 果たして 5 版の異同などの細目を保持しえたのか. ギーゼラは鋭く暗然と入射した.

(国営鉄道 ……, この無人のアプリケーションは突貫する. ―― ときどき, こういう顔を覗かせるんだ. ひとびとが必要した強硬なまでの速さ. 速さを欲したとき, すでにかる事態は織りこまれていた. 覚悟していたといっても良い. 山間部そして都市部が, 国鉄が結果した虚飾に過ぎないのなら, これら区画は虚飾の域を脱せられない. 大工場プラントの中性的排煙のもとに線引きされる.

…… しかし, これは一概に否定しさって良いものだろうか. 一個の存在はいかなるインストーラーの冷たさをも遙かに振りきる. 閉じた向きあいに限っていえば, 残酷な鉄柵は無かった〈慰める最後の硬さを嚥下した〉. ここにある意味は, 単複が展開された絶壁をてさえ, 生きられる意味において生きているのだから. 確かにこの生は曖昧だ. 簡明にそれとは分からない. だけれど, 現にここはとても深々としているではないか)

推理は仮借無く論理的に進行しなければならない. 彼の推理はふつう踏むべき厳密さを欠いていたが, それを補って余りあるほどの 全的新生の「答え」へ向かったくらい情動が, 背後でふるえわびていた.〈私がおなじ私に賛成すること. 擁壁にあらためめられていた, この覚醒. それでも幸せであった〉計りしれず繰りだされる直感を過給して加速する.

(これは複数広場に限らず, 確定的に拡張されていくべきだ. 自ら虚飾を選びとったぐらいの事実が多発する. 時制に対し可知性を持ちつづけ, "私" が次の瞬間には知りうる (もしかしたら, 知らないままかも知れない) もの ―― 存在. 非在は, 存在しないもの, しかし「存在しないもの」として存在するでもなく, 認知の指さきを無限に逃れていく. 国に達した画面が大きかったノイズの中で, 自分の呼気を見つけたひとがいる. どよめく論理的な潮騒によって圧搾された 細いガラス繊維のごとき道の, その結語へまで叩きあげ, 不可避のあかし立てを握りしめたもの,〈さきんじてあって合意された身体〉これが存在, 非在だ. 計算尽くの出自に出くわす, ひずみそのものが自分である ―― 恐ろしい印象に違い無かろう. だとしても, ただ "私" としての存在は, ついに主張されうるのだから. この重みだから, 存在するものは (ここでギーゼラは, なぜか次をためらった. 数瞬後, ともかく決心した風に) …… 良い, 非在するものも良い. ゆえに〈雲は青い紐に自由だ, そして終焉しない〉, 第 2 版までの矢印は, 裏で国営鉄道によって難読化したわけではない. 矢印の速度は都市部/山間部に通じ, つきりと保存された)

ここまで, 送られた矢印/黄色の矢印/脱穀された矢印に国営鉄道が打ちおとされ, 都市部/山間部が生じたとする「矢印 ┼┼ 都市部/山間部」モデルを擁立し, そこから話を広げてきたギーゼラであったが, 勢い次のように転換した.

(―― くして水準が完備されたところで, 仮説としてのこの「都市部/山間部の国営鉄道への眼ざし」は, しかし斥けられなければならない. なぜって, この水準においてさえ, 国鉄を契機に仕くまれた, 存在未然を曝しふるいだす あの意思としての凄惨な確率は, ついぞ無傷に発現したままなのだ. 息を殺せ. なまえを摑もうとする微小でありすぎた志向に, 未だ我々はなにひとつ保障を与えてやれていない. Aeras はどこにいて, 初速はどう了解されるのか. これでは, 都市部/山間部に達する未然に, 国鉄に突きあたって自罰的に落ちていった ―― つまり, 自分に対し存在 (ないし非在) を許せなかった ---- 従って, 存在とも呼んでやれない ---- なにかがありうる ―― 可能性を, 排撃できない ……)

僕のように第三者としてでなければ, この批判はなしえなかった ―― とも, ギーゼラは思う. 数学的に理論化された室外機が秩序を犯しはじめる. 国営鉄道は, 周囲の個々に, あらわに所相的パッシブな (ギーゼラは「虚飾」といった) 出生の現場を打ちこんだ. いっぽうで, 周りの個々の主辞に織りこまれることにより, 国鉄は強靭に原理づけされているのであろう. サンドイッチが一律に秘教化されることを, 私たちは知らず知らず認めてしまっていたのかも知れない. 佇立していた彼は, 枝葉や茂みの擦れあうざわめきの向こうに, 広場横を走る車の音を聞きとると, 再び奥へと歩みはじめた. ただちに黒い波の方法に書きとめるべきだ. 帯電したプロンプトの, 銘文を目もとに翳すような素朴さが, ひとすじの視線に収まって眠っていた. Aeras の視線に違い無い ―― これより彼は, いよいよ叩きつけるように思考を稼働する. 重い雷のごとく壊れきった推力で破綻をさらなる破綻で捩じふせ, 剥落しゆく錯体がかけたさきで, 国鉄に ……, いや国鉄を超えて照準された歌が, そうして浮かびあがってきた. Aeras を捉えかえしたのだ.

(それまでの矢印に国営鉄道が打ちおとされ, 今の都市部/山間部に決着したとする時系列的な理解には, そもそもレンジが不足していたのだ. この不足のせいで多くが取りこぼされ, 結果, 達するまえに錯誤してしまう. 幅を広く取りなおせば ……, 複数高速連絡に発した全バージョン (= 初版, 第 2 版, 第 3 版, ···) に定めてやれば, これは間断無く, 初版からさきへと連なる いうなら「バージョン・ライン」(V. L.) を, 国鉄に先駆してく. ここに至って, V. L. を貫く基軸たる第 1 - 2 - 3 - ··· 版を射はなった理論者として, ようやく複数高速 続く Aeras が召喚されるのだ. この基軸 ―― まったく逆向きに穿たれた輝線だ. 追おうとも考えつかない先天的な速度 ……. 彼らは早くも β 版 (= 初版) の時点で, 国鉄を見すえ それをカバーするほどの射程を, すでにいだいていた.

つまり, こうだ. 各版をばらばらのものと見てはいけない. 飽くまで, 全版で一帯のベクトルとして撃ちだされたのであって, この深度からのみ, 個々の版も正しく摑みうる ……. 矢印 ―― 送られた矢印/黄色の矢印/脱穀された矢印は, はなから都市部/山間部を内包するところを目ざした, 原型なのだ. 従って, 第 3 版で区画法が変わっている現状に (一見) 反し, なにも断絶は起こらなかった. 関われる散岐さんきはすべて可読だ.

朝食に組みこまれた平均は, 空気へ新しい枠を送ってきた. 3 版に改版された当時の〈鍍金ときんされた小さなクルミの試みし光を増幅する〉もとの姿が具体的にどうだったかは, 今となっては分からない. でも もしかしたら, それは, 今ある都市部/山間部に似ていた ―― そう思いたいのだ. 複数広場が, 僕のこのマルスの故郷くにへの企てと整合するには, そうあらねばならない. 丸い窓の横で挙がった手の指さきで, 銀貨は静まる.「青い森」と「山間部」という これらの自然的な符牒は, 決して偶然ではない筈なのだから.

そうだ. Aeras の細く強く研ぎすまされた計略は, 最新の第 5 版に至って, 意図的に開放されている. それは, 消音が熟したあとに残された最後の使命だった. 国営鉄道が残響している 5 版での, 各版を俯瞰的にさらえる異同といったデータは, V. L. における より深い準位に気づかせてくれる ……. あらゆる探傷を溶解させる最高深度. 初版から 2 版, 3 版, …… と続いてきたパンフレットの一連性 ―― その真象しんしょうが, ここに基軸として発見される. この軸は国鉄からの衝撃にも動じなかったし, もとはそれを見すえて, これほどの深みが達成されたのだが ……. 消和された第 4 版も, この深度から, 消和されたこと自体によって復元された. いや. 消和されたというより, V. L. の中で自ら緩衝した.

V. L. とは, いってしまえば, 各版にまったくただちに意味を充填し, それらを〈恐ろしい確率はもう聞こえなかった〉それらたらしめている全体なのだ. Aeras が企てた世界はここに表徴されよう. それは取りも直さず, 複数広場を意味的に補い支えあげてゆく. ような水準に立ったとき, Aeras がそのためにこそ全霊を賭け, もはや陰謀的なほどの計画を費やしてきた "都市部/山間部" が, 初めて確保されるのだ. この山間部と例の森との符合が, しかして, 協奏するひとつの志向にまで達する今, マルス揺籃の地へと通じる路線は敷きはなたれた)

私たちは, この絶えまない不可思議な炎の連立に支えられてきた. 歩きつづけていたギーゼラは, ように一気に考えきると, 不意にゆっくり立ちどまった. どこか虚脱的な動作であったが, 瞳の中では, 未だ次から次へと湧きでて止まない暗黒が, 捉えがたく不明瞭に渦巻いていた. 生成と消滅. 彼はまた, ほとんど確信といって良い予感をも持っていた ―― (まだだ ……. 5 版で終わりではない. 表には現れないところで, 今も新しい版が続いている ……)
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