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ゴシカ (Gothica) 作者:2bFYiQ

第 1 章 ―― 現存する悪の純粋和であるような がむしゃらな矢めいた狂犬は, 例えば, 三門公会 (cf. 古代プロパティー - GX 期) が述べざる理由としての レギスタ実線を開封できた影だ

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第 4 部分

〈ライゼア, 大理科を経て複数広場に着いたとき, ギーゼラはすでに一般的社会を離縁しおえていたに違い無い. 社会を解除するには, 自分の身体構造がどこまで単純シンプルであるか がキーになる. 硬く強くあればあるほど, よりラディカルに切りおとせるものだ. その点ひとびとは,「FUND ELGOLM」(: 領収書の元締めであった企業. ジックレラ期を環周しながら, 時代外で (遅くとも, その前々期: コツラ期までに) 12,463 % の広域にわたって散岐さんきしたとされる. 今ではチョコレートの爪痕つめあとに分かりやすい) の社名ロゴが印刷された〔見たことの無い電流が走りさる〕紙袋を, 細胞組織から漏れまどう青碧せいへきの光で満たしているし, 取りわけ〔対峙するレンズの戦慄に立った〕ギーゼラに関しては, 戻れる頼りを失う (実際的には, 例えば自宅や職場を失効させる) ことぐらい, およそ自然に確定できていた.

だが, 自分を一員として受けいれてくれている社会は, しかし そこから離れた瞬間, 寄るべ無い巨大な他人に変貌する. 景色が理解しがたい逆算を始め, 風が異邦のものとなるようだ. ささやかで莫大な連関を意思的に脱した単独者は, 自分に純粋に (どのような足枷も無く) 即応できる無尽のマナ・プールと引きかえに〔α = β を飛ぶ. とても明瞭な等式で〕, こうした ―― 決して自分ではない ―― 初対面の世界へずっと放逐されることになる. つまり, そこは数回通ったことがある界隈であったけれど, 複数広場に着いたギーゼラのまえには, 頼る当てが自分しかいない すでに既知性を失った土地が開けていた. 遊離した一電子にも似ていて,〔絶対に知らなかった〕この全身的予感ひとつを摘出しえたならば, きっと涼しく固化するのかも知れない. 旅はすこし寂しいものだ. そして, 広場に着くまでには終わっていた ような新生のための通過儀礼イニシエーションは, ギーゼラ個人の出力とした上で, (種のためには巣発ちが不可避であるように) なお世界の必然的な雫として, 理解されるべきであった〉

―― 横道が長くなってしまったが, 話をギーゼラに戻そう.

彼が複数広場に着いて偵察を始めてから, もう丸 2 日も経っていた. 睡眠は広場内の公衆トイレで取っていた. 大型観念のために起工された国営鉄道 (GR, ┼┼) が溝の 4 割弱にとどまると, それを埋めあわせるかのごとく ほかの電車理論が散岐さんき的に惹起された, とされているが, 広く知られている通り誤認である. 文節〈9〉を放たない回路が両腕を広げた. 現実的なフレーズでさえ全ての窓を走査する. 旧来の電車理論が少なくともスポンジ状であることは〈拡大しつつあったカーテンが葉軸ようじくを差しだすとき, 私を編成した簡単さ, あれは吐き気であった〉, ギーゼラも知っていた. 2 日も広場を偵察しつづけた彼は, 目的地である青い森へ行くには十分な路線を, すでに確立デフラグメントしていた. それまでの経緯を追おう:

初日, ギーゼラはまず古びた売店に入った. 複数広場の無料パンフレットを最前面と最後さいこう面との 2 部取り, パンをひとつ選ぶ.「それで ……?」「仮説が触れなかった空室です. それが鼓動, 文法的な砂糖」常連らしい客が店主についに開示しているらしかった. "仮説" とは, この町で飛びおりた, 雨を遠近性の集まりとするカーティール仮説のことであろう. 値札が風化しやすい港町特有の価格便覧ハンドブックを見もせずに, ギーゼラは十分すぎる金を置いて店を出た.

複数広場は, なまえは変わっているが ふつうの広場である. 正午過ぎに着いて広場に入ったとき, 板状の炎で顔の隠れた銅像が, 向こうからギーゼラを高圧的に指しおろしていた. この告発を寸分漏らさず了知するかのごとく, 数秒間, 彼はその指先がなす直線を見かえして立った. 昼どきにしては閑散としており, ギーゼラの横を運転手が, 次には子供たちが去っていった.

売店で 2 部取ったパンフレットは, 予想していた通り版が違った. 最前面のものが第 5 版, 最後さいこう面のものが第 2 版. つまり, 古いパンフレットが後ろに残っていたわけだ. 最新かつ安定版であるらしい第 5 版には, 各版の異同が載っている. 広場に着いた初日をすべて, 彼はパンフレットの暗記にてた. 高々数百文字の簡素なものだとはいえ, もの憶えが不得意なギーゼラにとっては半日でも難しい筈であったけれど, くらい情熱で憶えきったのであった. ふたつのパンフレットの大きな違いとしては, 第 2 版では, 広場が地理的に「送られた矢印」「黄色の矢印」「脱穀された矢印」の 3 領域に区分けされていた (↑↑↑) のが, 新しい第 5 版になると「都市部」「山間部」の 2 分割 (B./C.) に改められている.「都市部」は, 敷地の 7 割を占める, 舗装された もしくは芝生が生えた平地ひらちのことで, 残り 3 割の 木々が茂った高台及び都市部へ下るまでの斜面が,「山間部」に当たる. カラーリングが違い, 新版のたびに色を変えているようだ. また, 第 5 版によれば, パンフレットの版元は基本的に「複数広場委員会」(Aeras) であるが, 初版だけは「複数高速連絡 - 公園セクター」だそうだ. 暗記しおえたその夜, 買ったパンをようやくひと齧りして両手の器で 1 杯水道水を飲み, すでに触れた通り公衆トイレで眠った. 峭立する 24 時 51 分たちがゆっくりドット落ちしていく. おなじ記号でも不可能な壁が嬉しかった.

翌日, トウモロコシがトラックへ積まれるさいに解除されるものが, 確実な内容になっていた. なにかの誤りで浮きたった空のもと〈王国が時刻の重心と合流した〉, ギーゼラの行動律は恐ろしく暗黒的であった. 量子化された時化しけよりも遙かに危機的な硬貨の響き. まず彼は, ゴミ箱や自販機の下などから第 3 版のパンフレットを 4 部探しあてた (この時点で, あと初版と 4 版とが揃っていないことになる). 汚れたりして読めないところを 4 つ合わせて補完すると, 各版の異同といったデータが無い以外は, 第 5 版とおなじ内容であるらしかった. ただ, この 3 版に載っている広場の写真のほうが, より自然に映った (ちなみに 2 版では, ひと組の長方形が〈宝石の発音を温めるならば〉……).

昼よりも楕円形らしいこの時刻になると, 広場に日課的に来ているのであろう, 昨日も見かけたひとが数人見うけられた. 労働者の忘れたものが, 政治的な味のスープを飲むあなたに届いてほしい. ギーゼラは, 各施設に振られている 見おとしていた Id. に気づく代わりに, パンの残りを失っていた. さらに無線よろしく暗躍的に旋回し, 続けざまに, 第 4 版の発行日が国営鉄道の開通時期と合致していることも得た. みはるばかりの漆黒の翼が冷たい砂を撒きちらす. ここまでで, 僅かにふたりが, もう消えかかった彼の曳光えいこうに振りかえっただけだ.「答え」への無自覚的な結像であるにせよ, 遠雷や橋梁を予感させてならない遠い暗がりが, ギーゼラの脈動を司っていた. あらゆる挙動が消費段階の幼い瞳に曝されていく. 加えて, 倒れかかってくる影と影とのあいだをくらますように縫いめぐり, 広場を ―― 正確にはその都市部を ―― 重ね重ね精査した. なにも見つからなかったものの, それもひとつの裏づけになるらしかった.

砂丘 (尤も, 工業用途の砂山であるのだが) の連なりの稜線部分を通って, こちらへ近づきつつある一団の旗が, 遠方に見えた. 昨日, 塔門を抜けて広場に踏みいったギーゼラを戒めた あの銅像の跡地を, 彼は急ぎ足で渡った. 手がかりは出つくしたようだ. この複数広場の底に隠されている〈「名は要らない」と嘯いた〉世界が どういった深度にあるのか, 彼にはおおむね当たりが付いていた. 水道水をすこし含みのむ. 節欲的な, 喉の渇きを癒やすにも足りない量. まだ暮れはじめてもいなかったが〈もしも そこに覚悟があるならば, それはこうだ: 単複がうち鳴らされ, 背景輻射の感覚さえ壊滅的に新フェーズに突入していくのだとしても, 自分ひとりは回路と契約する ―― そういう覚悟だ〉, 彼はやおら山間部へ引きあげた.

(これは宿命だ. この (自分の) 上に落ちたしるしが, 自室をまっ向からみつめることを強制した ……. そこには, 確かにひとつところの言葉 ……, 絶えず予感を放つ観念があった)

ギーゼラは考えた. 折りに触れ, 飽くこと無く反芻してきた想念であった. 広場から微風のごとく聞こえてきた子供たちの喚声も, ときには, しかかってくる葉擦れの数多重あまたえどよめきが, 一気に上書きしていった. 見た目に分かる夜が来ずとも, 真実としての夜は願われるものだ. 都市部の夜は, 更けるに連れて新気風のグリッドを明るみに出していく, そして それよりも早く, 山間部の夜が醸されていくが, これらは相即的だ. 暗がりが献身的なやり方で伝えてくれた私語を, 外気に触れさせたくなかった. それは儚いものだから. このことを考えるたびに, ギーゼラはすこし怖くなった. 純金の下顎を満たしていた文字列は, 今では澄んで眠る蛇のための, なにか揺り籠のような位置に就いている. 眼界が向こうで収斂せる暗がりへ, 木立ちのあいだを茂みの中を, 暗然としてかき進んでいく. ふいと立ちどまって振りかえり, そこから彼がやってきたところの視線の先も, ことごとく茫洋たる闇に落ちていることを じっと見さだめると, 切って再び当てども無く前進しはじめた. 彼には聴きなれた歌が無かった.

パンフレットには載っていない無人の管理小屋が, 透過率に触れた涙をすべて残している. 夜の壁と背中合わせ, 耳を宛てがい息を殺したギーゼラに, パンフレットの初版から, これは関係者向けのクローズドな β 版といえたけれど, 5 版の先にまでわたる全初速が始まっていたことが, 空白のレシーバーを打った (また, ある初版のパンフレットの, ほとんど脱色してしまった古い広場の写真に, "生が死への片道切符ってほんとう? 信じられない" と書きつけられた, ま新しい筆跡があるらしい).
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