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Lost Memory
作:菜乃葉



第2話:その人ってだれ?







 あれからこの2人のことで分かったこと。それは
 「明里、それ以上食べると太るわよ」
 この小柄で可愛い子は見た目に似合わずとても冷静で、物事をはっきりという。
 「うっさい!太ることなんて気にしないから!」
 少し綺麗な明里はすぐ感情的になって言葉遣いが悪くなる。顔が恐くなってますよお嬢さん。
 「ひよこもなにか食べたら?」
 「うん、そうするよ」
 みんなでのんびりと冬音が持ってきたミカンを食べていた。
 沈黙が私たちをつつんだ。なぜかしんみりとした空気になっているが、最初の沈黙とは違い、気まずい感じがない。まだ出会って少ししかたっていないけれど、少しはうちとけたのかもしれない。
 


 明里が口を開いた。
 「比奈が生きていて本当によかった。事故にあったって聞いたときはどうしようかと思ったよ」
 その目にはうっすらと涙が浮かんだ。 
「もう無理しないでよ。ひよこは1人しかいないんだからね」
 冬音はまっすぐにこちらを見ている。心配したんだから!という声が自然と聞こえてきそうだった。
 その言葉に私は感動した。
 記憶を忘れてもやっていけるんじゃないかってだんだん思うようになってきた。だってこんなにも優しい友達がいるんだから。
 
 
 あれ?なにか引っかかる気がする。
 そういえば
 

 「私って事故にあってこうなったの?」
 
 「「えっ??」」
 
 2人が見事に声をそろえて言った。かなり驚いた顔をしている。
 「ひよこは自分がなんでここにいるのか分からないの?」
 よく考えれば、なにもないのにこんな所にいるわけがないもんね。
 「さっぱり分からない」
 2人にあきれた顔をされた。……ショックが大きい。
 さっきのしんみりとした雰囲気はどこへやら。
 
 「比奈は事故に遭ったんだよ。車にはねられたんだ」
 明里からの説明を聞いて事情がはっきりした。
 なんで今まで気にならなかったのかが不思議だ。
 「本当に信じられない。まあ、ひよこらしいっていえばひよこらしいけど」
 わたしって前からこうだったんだ。……悲しくなってきた。
 「ほら、落ち込まないで。今更性格は変えられないんだから」
 明里から励ましの言葉をもらってもなにもうれしくない。っていうか励ましでもない。
 うう、今更って言われた……。
 
 
 「大丈夫よ。ひよこはうっかりしてるけど、明里なんて思いこみは激しいし、怒ると般若になるから」
 「ちょっと!大丈夫ってどういう意味!?」
 明里、般若になってるよ…。
 「今のその顔が般若なのよ。鏡を見てみたら?」
 「ふん!こんなチビッコなんかにいわれたくないわ!」
 「あら、背が低いのはまだ可愛いと言われることがあるけれど、般若は人におそれられるわよ?」
 「だから般若じゃないっていってるだろ!ね、ひな?」
 「ひっ!……えっと、うーんと」
 正直、般若だと思う。悪いとは思うけれどそれが般若じゃなかったら鬼だろうな。
 しかも、言葉遣いが悪いよ。
 「なに考えてる?」
 明里に、にっこりと笑いながら言われた。
 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
 笑っているけど般若に磨きがかかってるよ。
 明里の顔がまともに見られなくなってしまう。…冷や汗がでてきた。
 「ひよこがおびえているけど?」
 
 それからしばらくは明里般若についてしばらく話していた。
 とても和やかな雰囲気で、明里の顔が般若じゃなかったらずっと笑っていたかもしれない。
 明里が急に叫ぶまでは。
 
 
 

 「あっ!般若っていえばあの人のこと言うのを忘れてた!」
 ん?あの人?
 「そういえば言ってないわね。ちゃんとひよこに言わないと……」
 2人とも急に真剣になってしまった。誰だろ、あの人って。たぶん、いや絶対に私に関係があると思うんだけど。
 
 「比奈、絶対にあの男には『誰ですか?』なんて聞いてはいけないからね!」
 明里の顔が青ざめている。男の人ってだれ?
 二人ともその人を思い出した途端血相を変えて私に説明をし始めた。
 「今からその男の情報を教えてあげるから、少しでも覚えているふりをしててね」
 冬音も今までにないくらい焦った顔をしている。この2人をこんな風にさせてしまう人がいるなんて!……でも、
 「さすがに覚えているふりは無理なんじゃないの?」
 「名前だけでいいから!他は忘れてしまったことにしていいから!」
 「あと、敬語も絶対に使ってはだめよ。怒らせるから」
 二人が混乱しすぎていて何を言いたいのかよく分からない。白熱しすぎていて、さっきまで座っていたはずなのに立ち上がってどんどんこちらへと迫ってくる。
 いったいどんな人なんだ?しかもこの人のことを思い出した単語って『般若』なんだよね。…関わりたくない。関わらなくちゃいけないのかな。


 「いい、その人は………」
 ごくり。

 その瞬間
 
 「比奈、大丈夫!?」

 勢いよくこの部屋へと、どこかで聞いたことのあるセリフを言いながら入ってきた人がいた。
 







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