第十七話 フラッシュ=ディその四
「要はあのコロニーを相当数破壊すればいいのですから」
「まずは一般市民を殺戮し我等の戦力を彼等に見せ付ける」
男は言う。
「ハザル司令やル=カインの考えだな」
「そして死鬼隊の」
「あの者達は違う」
だが彼はここで死鬼隊は別だと言うのであった。
「別ですか」
「そうだ。彼等はただ殺戮を楽しんでいるだけだ」
忌々しげにそう述べる。
「ただそれだけだ。違うか」
「いえ」
その部下もそれに同意しているようであった。
「私も。そう考えます」
「そうか」
「本来戦争というものはあくまで武器を持つ者同士が」
「それ以上は言うな」
彼は部下にそれ以上言わせなかった。
「いいな」
「申し訳ありません」
「これはハザル司令が決められたことだ」
そう述べるのだった。
「だからだ。司令の御言葉は絶対だ」
「はい」
部下はその言葉に頷いた。
「左様でした。これは失礼致しました」
「わかればいい。だが今は」
「我々はまずは目の前の敵をですか」
「あくまで目の前の敵をだ」
そこを強調する。
「作戦遂行はそれからでいい。わかったな」
「了解っ」
他の部下達もそれに応えるのであった。
「確かに地球人は好戦的で野蛮だ」
男は地球人に対しては偏見を持っているようであった。
「だがそれは彼等を教化すればいいだけのこと」
「そうですね」
グラドス軍の者達が彼の言葉に頷く。
「その劣った文化を滅してな。それだけでいいのだ」
「そうですね。歯向かう者にだけ罰を与えればいいのです」
「我々が本当の平和と正義と自由を教えてやればいいのだ」
彼はこう考えていた。自分達が間違っているなどとは全く考えていない。
「それがバルマー直系である誇り高き我々の聖なる義務だ」
「ではその聖なる義務を果たす為にも」
「勝利を収める。いいな」
男の指揮の下一斉にロンド=ベルに攻撃を浴びせる。しかしロンド=ベルも負けてはいないのだった。果敢に反撃を浴びせていた。
「速度は確かに速い」
「そうだな」
スレイはアイビスのその言葉に頷いていた。アルテリオンとベガリオンはその機動力を活かして自由自在に攻撃を浴びせていた。
「しかし。動きならこちらも」
「負けてはいない!」
二人は動きを合わせて敵を次々と屠っていく。SPTの機動力を上回る動きを見せて彼等の上につきそこから頭部を撃ち抜くのを常としていた。
「アイビス」
ツグミは彼女達の戦闘を見てアイビスに声をかけた。
「どうしたんだい、ツグミ」
「どうやら彼等のコクピットは頭部にあるみたいね」
「そうなのか」
「ええ。頭部を撃ち抜かれたら動きを止めるわよね」
「ああ」
それはアイビスもわかってきていた。だからこそ頭部を狙って攻撃をしているのだ。
「だからね。それをやっていれば」
「いいんだね」
「そうよ。それで行きましょう」
「よしっ」
アイビスはそれを受けてさらに頭部に攻撃を続ける。何故か彼女はSPTに対しては容赦するつもりが一切起こらないのだった。
「武器を持たない市民を狙うような奴等だ」
スレイがここで呟く。
「容赦することはない」
「そうだね」
そういうことだった。アイビスも彼女と同じ考えだったのだ。
「そんな奴等。死んでも」
「天罰ということだ」
「そうなんですか」
だがキラはそれを聞いても納得してはいなかった。
「だから。殺しても」
「違うのかよ、坊主」
迷いを見せる彼にムウが声をかけていた。
「今までそうした奴等は随分いたよな」
「はい」
それは彼もわかっていた。ティターンズもそうだったしブルーコスモス急進派もそうだった。キラも彼等のことはよくわかっていた。
「だったら。どうすればいいかわかるよな」
「頭ではわかっています」
しかし感情は。こう言っているのだ。
「けれどそれでも」
「キラ、核ミサイルだ」
ロウが彼に言う。
「それを忘れるな」
「核ミサイルですか」
「奴等はそこまでする奴等だ」
見ればロウもイライジャもSPTに対しては積極的に頭部を狙っていた。
「容赦する必要はないんだ」
「俺も同じだ」
「けれど僕は」
それでも迷いのある彼だった。しかしその迷いはすぐに消し飛ぶことになるのだった。
激戦の続くプラントの裏側で。四機のマシンが蠢いていた。
「よおし、もうすぐだな」
「ああ」
他の三機に乗る異形の者達がやけに人相の悪い男の言葉に応える。
「じゃあ仕掛けるか」
「一気にな」
「ゴステロ」
彼等はリーダーの名を呼んだ。
「このまま滅多撃ちにしていいんだよな」
「ああ、その通りだ」
ゴステロは彼等の言葉に応えた。
「ゲティ、ボーン、マンジェロ」
仲間達の名を呼ぶ。
「コロニーは一撃でいい。わかったな」
「ああ、わかったぜ」
「じゃあよお」
彼等はまず一基のコロニーを狙う。そうしてミサイルを放った」
「ひゃはははははははははは!」
「死にやがれ!」
「後方にエネルギー反応!」
ミリアリアの声はほぼ悲鳴だった。
「プラントに向けてミサイルが!」
「何ですって!?」
マリューはその悲鳴に血相を変えた。
「馬鹿な、どうして後ろに」
「後方にSPT四機!」
サイも叫ぶ。
「そんな・・・・・・しかも核ミサイルまで」
「やばい、じゃあ!」
トールはそれを聞いて急いで操縦桿を動かそうとする。
「早く行かないと!」
「行くって言っても!」
カズイもまた叫ぶ。
「間に合わないよ、とても!」
「間に合わないで済むか!」
シンが真っ青な顔でアークエンジェルのモニターに怒鳴り込んで来た。
「俺が行く!間に合わせてみせる!」
「無理よ、シン君!」
だがマリューはそのシンに対して言うのだった。
「今からじゃとても」
「じゃあどうしろっていうんだよ!」
それでもシンは叫び続ける。
「このままだとプラントが。マユが!」
「行けるのなら私だって行くわ!」
マリューもシンと同じ考えだった。だからその気持ちもわかっていた。しかしそれでも。
「けれどもう」
「そんな。それじゃあ」
シンはその真っ青な顔で言う。
「マユは・・・・・・」
「これで終わりだぜえ!」
ミサイルを放ったゴステロは誇らしげに笑っていた。
「俺様の手柄だあ!どいつもこいつも死んじまえ!」
「あら、残念」
ところでここで声がした。
「生憎だけれどそうはいかないのよ」
「何だと!?」
「正義の味方参上」
不意にブーメランが現われた。そうしてミサイル達を両断していく。ミサイル達はプラントを直撃することなく宙で爆発するだけであった。 |