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第十五話 血の狼煙その二
「結婚していると何かとだな」
「とにかくです」
 ナタルはムキになった顔でミスマルに言う。
「兄に伝えておいて下さい」
「何をだね、ユリカ」
 ここでミスマルはぼけてしまった。
「そもそも御前にはお兄さんは」
「あの、お父様」
 ここでそのユリカ本人が言う。
「私は何も」
「むっ!?」
「申し上げているのは私です」
 ナタルなのである。
「ですから」
「す、済まない」
 慌てて言葉を引っ込めて訂正する。
「声が似ていたのでな。つい」
「お父様も間違えましたね」
 ユリカは何かやけに楽しそうであった。
「皆さん間違えるんですよね」
「似ているというものではないな」
 ミスマルもそれを言う。
「同じにしか聞こえない」
「私もです」
 ナタル本人もそれを認める。
「どうにもこうにも。しかし」
 ナタルは強引に話を戻してきた。
「あの兄が。よく結婚なぞ」
「そんなに不思議かね」
「正直信じられません」
 ナタルははっきりと言い切った。
「あの浮気者でいい加減な兄が」
「おいおい少佐」
「ちょっとナタル」
 アムロとミサトが顔を引き攣らせてナタルに声をかける。
「幾ら何でもそれは」
「確かに噂の多い人だけれどお兄さんなんだし」
「相手もよくはいと言ったものです」
 それでもナタルは言う。
「どうしてそうなったのか」
「うむ、それがな」
 ミスマルはあらためて畏まって述べる。
「相手は絶世の美女だ」
「絶世の」
「しかもガンダムファイター並の戦闘力だ」
「ガンダムファイター!?」
「また極端な」
 どうやら相当な人物のようである。
「だから浮気は出来ない。安心してくれ」
「だといいのですが」
 しかしそれでもナタルは安心してはいなかった。
「兄ですから」
「そういえばだ」
 ミスマルはナタルのその言葉で気付いた。
「君のお兄さんは何度乗艦が撃沈されても」
「はい、生きています」
 語る顔がかなり忌々しげであった。
「残念なことに」
「残念とはまた」
「尋常じゃないな」
 ブライトとアムロはそれを聞いて思わず呟いた。
「殺しても死にません」
 妹の言葉ではなかった。
「それは私が保障します」
「そうか。ではまだ騒動は続くな」
「兄の女好きは病気です」
 さらに言う。
「我が兄ながら。嘆かわしい」
「だからかしら」
 ミサトはそれを聞いて気付いた。
「ナタルの生真面目さは」
「そうみたいだな」
 それにアムロが頷く。
「どうにもこうにも」
「しかし。結婚したというのはいいことです」
 笑顔になった。ナタルの笑顔は可愛いので評判だ。
「それは心から祝福します」
「そうか。それは何よりだ」
「次は妹さんの番ね」
 ミサトが余計なことを言う。
「どうかしら、そこんとこは」
「なっ」
 その言葉に顔を真っ赤にさせる。
「わ、私は別に」
「それでキースとは何処までいったの?」
「何処までって」
「ベッドまでいった?」
「それはまだですっ」
 ムキになって言い切ってきた。
「キスまでです。ベッドまでってそんな」
「やれやれ」
 リツコはそこまで聞いてまた呆れてしまった。
「少佐」
「何でしょうか」
「また自分で言ってるわよ」
「あっ」
 言われてやっと気付く。
「しまった・・・・・・」
「こんな簡単に引っ掛かるなんてねえ」
 ミサトも呆れた顔になっていた。
「ナタルはちょっとそういうところ気をつけなさい」
「うう・・・・・・」
 何も言えない。自爆そのものだったから。
「それはそうとです」
 ブライトが話を戻してきた。
「今のところ補給路は安全なのですね」
「一応敵はいない」
 ミスマルもそれは認める。
「大丈夫だと思うが」
「ですがゲートのことがあります」
 シナプスがここで述べる。
「警戒は必要かと」
「そうだな。何かあった時は頼む」
「わかりました」
 ブライトとシナプスが答える。
「それではそのように」
「お任せ下さい」
「わかった。それではだ」
 ミスマルはあらためて一同に告げた。
「宜しく頼むぞ」
「了解」
 こうして月から補給が為されることになった。とりあえずはロンド=ベルにとってはよいことであった。しかしトラブルは付き物である。
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