第十五話 血の狼煙その一
血の狼煙
アクシズに補給物資を頼むことになったロンド=ベル。ところがここで問題が生じていた。
「アクシズでは無理なのですか」
「済まない」
ミスマルがシナプスとブライトに謝罪していた。
「知っての通りアクシズは前線基地の一つだ」
「はい」
「あそこの物資は置いておきたいのだ。戦略上の判断でな」
「わかりました。しかし」
ブライトがモニターのミスマルに言う。
「それでは我々が」
「物資が足りないのですが」
「それでだ」
ここでミスマルは言う。
「月から送らせてもらいたい」
「月からですか」
「そうだ。ギガノスが倒れ月は安全になった」
そういういきさつがあった。
「だからだ。月の物資をゼダンまで送りたいのだがどうかね」
「そうですね」
シナプスは少し考えてから述べた。
「それでしたら」
「ではすぐにでも御願いします」
「うむ、それではすぐに出発させる」
ミスマルはそうブライトにも告げた。
「明日にでもそちらに到着すると思う」
「わかりました。それでは」
「あとだ」
彼は言葉を付け加えてきた。
「そちらの生産施設は復旧していないのか」
「もう暫くかかりそうです」
今度は大文字が述べた。
「今復旧作業中ですが」
「そうか。それが終わればそちらも困らないのだがな」
「ええ、確かに」
大文字はミスマルのその言葉に頷いた。
「そうなるかと」
「そしてだ」
ミスマルはさらに言葉を付け加えてきた。
「ゲートについてだが」
「ゲートですか」
「遂にバルマーが姿を現わしたようだな」
やはりそこに言及してきた。
「はい、その通りです」
シナプスが答える。
「同時に一人のパイロットを保護しました」
「クォブレー=ゴードンだったか」
その名はミスマルも聞いていた。
「褐色のマシンに乗っているそうだな」
「その通りです」
シナプスはまた答える。
「今だその素性はわかりませんがどうやらスパイではないようです」
「そうか。まずは安心といったところだな」
「はい」
ミスマルの言葉に頷く。
「とりあえずのところは」
「わかった。しかし油断はできない」
ここでミスマルは軍人としての厳しい顔になっていた。
「まだ気をつけておいてくれ」
「はい、そちらはもう」
ミサトが答える。
「二人つけていますので」
「うむ、頼むぞ」
「了解しました」
「今のところは静かだな」
ミスマルはあらためて述べた。
「もっともそれが崩れようとしているが」
「閣下はゲートについてどうお考えですか?」
ヘンケンが尋ねてきた。
「あのゲートは」
「おそらくバルマーのものだな」
「やはり」
「最初からおかしいと思っていたが。今回の件でな」
「ではあそこからバルマーの軍勢が」
「その可能性は高い」
それが彼の結論であった。
「常に監視を怠ってはならない」
「はい、それでは」
「暫く君達にはあの方面で頑張ってもらいたい。必要とあらば、そしてその方法がわかればの話だが」
「どうされよと」
またシナプスが問う。
「あのゲートを破壊してくれ」
そういうことであった。
「いいな」
「了解」
「それでは」
「ではな。ユリカ」
最後に予定調和のようにユリカに声をかけてきた。
「無理をするんじゃないぞ。お父さんはな、お父さんはな」
「安心して下さい、お父様」
だが当のユリカはいつものように能天気であった。
「私は大丈夫ですから」
「しかしだな、ロンド=ベルは最前線だ」
また言う。
「だから。御前に何かあればお父さんは」
「皆さんがおられますし」
ユリカは仲間を信頼していた。
「何もありませんから」
「だったらいいのだがね。やっぱり」
「私に似てる方もおられますし」
「こほん」
ナタルがその後ろで咳払いをした。
「むっ、バジルール少佐」
「閣下」
ナタルは堅苦しい動作と声でミスマルに声をかけてきた。
「ミスマル艦長は立派な方ですので。御安心を」
「そうなのか」
まだ心配なのがはっきりとわかる。
「それならばいいのだがな」
「はい。ですから」
「それはそうとだ」
ミスマルは元の顔に戻ってナタルに声をかけてきた。
「貴官の兄上だが」
「兄が。どうかしましたか?」
ナタルの顔が急に曇ってきた。
「今度結婚するそうだ」
「えっ!?」
ナタルはそれを聞いて目を点にさせた。
「今何と」
「だから結婚するのだ」
ミスマルはまた彼女に告げる。
「お相手はだな。かなり奇麗な方で」
「それは本当ですか」
それを聞いてもまだ信じられないといった顔であった。
「兄が。あの兄が」
「何か不思議なのか?」
ブライトがナタルに問う。
「私と大して変わらない歳の筈だが、バジルール中佐は」
「それはそうですが」
ナタルの兄も軍人だ。階級は中佐だ。
「それでも。あのいい加減な兄が」
「おいおい、バジルール少佐」
アムロが驚きを隠せないナタルに苦笑する。
「それでも結婚はできるぞ」
「はあ」
「だからそれは関係ないんじゃないかな」
「私はもっと若くして結婚したしな」
ブライトが言う。
「それでもう二人の子持ちだ。アムロ」
「おっと、俺はまだそこまで歳を取っちゃいないぞ」
苦笑いのままだった。最近ブライトにしきりに言われているのだ。
「生憎だがな」
「いや、しかしな」
それでもブライトは言う。
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