第十二話 龍を喰らうものその八
「どうにもこうにもです」
「あれもまた才能か」
「才能です」
それもまたはっきりと言う。
「兵器を作るのもまた」
「少佐はどうかね?」
「私ですか」
「料理上手だそうじゃないか」
「自分ではそのつもりはありません」
謙遜して言うのだった。
「私はただ普通に本を見ながら」
「そうか。意外と家庭的なのだな」
「いえ、それは」
急にしおらしくなるナタルであった。
「別に。私は」
「そうか。私もな」
何故か笑みを浮かべるヘンケンであった。
「エマ君の料理は好きだが」
「いいのでは?それで」
ナタルはよくわかってはいなかった。
「シーン大尉も料理の腕は」
「それがあまり食べられなくてだ」
ナタルがわかっていないのをいいことに罠にかけていく。
「そういえばキース君も」
「キース!?」
見事に引っ掛かった。
「エマ君の料理を褒めていたな」
「それは本当ですか!?」
血相を変えてヘンケンに問う。
「キースが他の人の料理を」
「らしいな」
「嘘です、それは」
ナタルはムキになってそれを否定する。
「キースは私の手料理しか食べないんですから、それは」
「嘘だというのかね」
「そうです、昨日だって」
罠にかかったまま言う。
「あんなに美味しそうに食べていましたし」
「そうか。ならいい」
ヘンケンはそこまで聞いて満足そうに笑うのだった。
「皆にそれは伝わったからな」
「えっ!?」
ここでナタルはふと立ち止まった。
「皆といいますと」
「だから皆にだ」
ヘンケンは楽しそうに笑いながらまた言うのだった。
「放送が入っているからな」
「な・・・・・・」
ようやく事情がわかった。顔が次第に赤くなる。
「そうだったんですか、それじゃあ」
「今の話は皆聞いているぞ」
「皆、それじゃあ」
「あの少佐」
そのキースから通信が入ってきた。
「キ、キース」
「何でまたそんな見え見えの誘導に引っ掛かるわけ?」
困り果てた顔でナタルに言う。
「折角内緒にしていたことがまたばれたし」
「ご、御免なさい」
顔を真っ赤にして俯いて応えるナタルであった。
「つい。どうにもこうにも」
「まあいいか」
諦めた声をあげる。
「今更ってやつだしさ」
「うう・・・・・・」
「まあそれはいいから」
もうそれは強引にいいことにするキースであった。
「今から帰るから。宜しくね」
「今日は何がいいの?」
ナタルはここでまたミスを犯してしまった。
「貴方が好きなものを作ってあげるから」
「あの、少佐」
流石に今の言葉にはヘンケンも呆れていた。
「今の言葉は流石にだね」
「えっ、何か」
しかも本人はここではまだ気付いていない。
「あるのでしょうか」
「大尉はこれから帰投するんだが」
そこを言う。
「だからこの場合は」
「あっ・・・・・・」
言われてまた気付く。そうしてまたしても顔を真っ赤にさせる。
「そうでした、すいません」
「いや、私はいいが」
もうこうなっては処置なしであった。
「大尉がねえ」
「御免なさい、キース・・・・・・じゃなかった」
慌てて言葉を訂正する。
「気にするな、大尉」
「わかりました」
「わかったな」
「わかったも何も」
「今のは幾ら何でもあれじゃないのか?」
オデロとトマーシュは何と言っていいかわからない感じになっていた。
「なあ、絶対に」
「そうだな。モロバレだ」
「五月蝿いっ」
ナタルはそんな彼等に顔を真っ赤にして言う。
「もう終わったことだ。あれこれ言うなっ」
「はいはい」
「わかったよ、それじゃあ」
「とにかくだ」
二人を強引に退けた後でキースにまた言う。相変わらず顔は真っ赤なままだ。
「大尉、早く戻ってきてくれ」
「了解っ」
こうしてキースは無事戻ってきた。しかしどうにもナタルは顔を真っ赤にさせたままでそれからも周りにあれこれとからかわれたのであった。
「それにしてもだ」
呉に戻った一同はあらためて話に入った。その対象は言うまでもなかった。
「孫光龍ですね」
「はい」
クスハはイーグルの問いに答えた。
「一応は知っているつもりですがまた僕達の前に現れるとは」
「あの時は何でもない感じだったけれどな」
「そうだね」
ザズはジェオの言葉に頷く。
「ただあのガンエデンの部下か何かだった感じで」
「そうだったな」
「しかしじゃ」
アスカがここで言うのだった。
「あの力は半端なものではなかったのう」
「ガンエデンの時で既に」
シャンアンはそこを指摘してきた。
「かなりのものでしたな」
「それが今は」
続いてサンユンが言う。
「もっと強くなっていますよ」
「そうですね」
タロラは彼のその指摘に頷いた。
「それもかなり」
「あの強さはあれだ」
タータは真顔で述べる。
「ガンエデンにも匹敵するな」
「ガンエデンにも」
クスハはそこまで聞いて顔を暗くさせた。
「そこまでの力が」
「あるな、間違いなく」
レーツェルはいつものクールさで述べた。
「それもかなりだ」
「そうですか」
「しかもだ」
レーツェルは言葉を付け加える。
「間違いなく我々の敵に回っている」
「彼の正義で、でしょうか」
ブリットはそこでレーツェルに問うた。
「あの時俺達に言ったように」
「どうかな、それは」
レーツェルはそれには首を捻ってみせるのだった。
「違うのですか?」
「考えが読めない」
そう述べて首を捻るのだった。
「どうにも。あえてそうさせているな」
「そもそも何者なんだ?」
ヒューゴは話の核心をついてきた。
「それすらもわからないが」
「やっぱりどう見てもアジア系ではないし」
アクアも言う。
「あの顔はむしろ」
「むしろ?」
「ユダヤ系の顔なのよ」
そう皆に告げるのだった。
「ユダヤ系!?」
「ええ、そんな感じよ」
こう言うのだった。しかも。
「それも古代ユダヤ系」
「古代の!?」
「何でそんな顔に」
「そこまではわからないけれど」
アクアでもわかるのはそこまでであった。
「ただ。そこにも何かあるのかも」
「古代ユダヤ系。そういえば」
今度気付いたのはリツコであった。
「バルマー帝国の名前は」
「バルマー!?」
「奴等も」
皆バルマーと聞いて顔色を一変させる。言うまでもなく彼等の不倶戴天の敵だからだ。
「彼等のそれぞれの名前があるわね」
「ああ」
「ラオデキアとかユーゼスとかですよね」
「どれも。古代ヘブライ語よ」
リツコは言う。
「使徒達と同じで」
「使徒達と!?」
「まさか」
「いえ、リツコの言う通りよ」
今度はミサトが真顔で言うのだった。
「私も調べたけれど。どれも」
「ヘブライか」
サコンはそれを聞いて顔を顰めさせるのだった。
「孫光龍にバルマー帝国に使徒。その三つがヘブライと何かしらの関係にある」
「そこに大きな謎が」
「まだ確信ではないけれどね」
ミサトはブリットに告げる。
「けれど。何かあるのは間違いないわ」
「そうですか」
「けれどまだそれを断定するには」
「あまりにも。何もわかっていないわ」
リツコは歯噛みする顔で述べた。
「何もかもがね」
「そうですよね」
「結局は」
「今はまだ敵を追うしかできない」
大文字が無念そうに言うのだった。
「残念だがな」
「わかりました」
「それじゃあ今は」
「今度は宇宙に出る」
大文字は告げた。
「宇宙にですか」
「そうだ。今は連邦軍の再編成で宇宙の戦力を地球に編入する」
そうした流れになっていたのだ。地底の勢力をとりあえずは止めた今それを徹底させる為にさらなる戦力を投入するということだった。
「だからその間我々は」
「宇宙の守りを固めると」
「そういうことだ。いいな」
「了解」
「わかりました」
皆大文字のその言葉に頷いた。
「それではすぐに」
「宇宙に」
「整備が終わり次第台湾に向かう」
大文字はそう指示を出した。
「そして宇宙に出る。いいな、諸君」
「はいっ!」
皆その言葉に頷く。こうしてまず彼等は宇宙に出ることになった。これがまた新たな星達の巡り合いとなるのはまだ誰も知らなかった。
第十二話 完
2007・9・29
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