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第十二話 龍を喰らうものその七
「覚えておいてくれたらいいよ」
「それでどうしてクスハ達を攻撃しているんだ!」
「おいら達の敵だっていうのか!」
「その通りだよ」
 弁慶と武蔵に答える。
「そういうことだから。覚えておいてくれ給え」
「くっ!」
「何かいけ好かねえ野郎だぜ!」
「それにしてもな」
「はい」
 麗は神宮寺の言葉に頷く。
「半端じゃない気みたいだな」
「気をつけて下さい」
 麗は神宮寺だけでなく他の皆にも言う。
「彼は。かなり手強いです」
「それにしてもまた見たけれど」
 マリの顔が曇っていた。
「何て大きさ」
「洸さん」
 猿丸は洸に問うた。
「あれですね」
「ああ」
 彼も頷く。
「あれが俺の感じた巨大な念の正体だ。間違いない」
「洸君もあの超機人の念を感じたのね」
「やはりあれは超機人なんですね」 
 クスハに言う。
「ええ、そうよ」
「奴は四霊の龍王機」
 ブリットがそう説明する。
「自らを真龍王機と名乗っている。」
「真の」
「そしてわかっているのは俺達の敵ということだけだ!」
「ではやっぱり」
「そうだよ」
 孫はロンド=ベルの面々に対して告げる。
「本来はこの真龍王機こそがガンエデンの剣だったんだよ」
「本来は!?」
「そうさ」
 また言う。
「けれどガンエデンは真龍王機を起こさずに君達という新たな剣を選んだ」
「だからか」
「それで」
 彼等にも事情はわかった。孫はさらに言う。
「僕と真龍王機にとってこの事実は結構な屈辱でねえ」
「最後になって出て来たのか」
「以前から起きてはいたけれどね」
 そう一同に告げた。
「一応はね」
「そしてあの時に」
「そういうこと」
 クスハに告げる。
「戦いにも参加したんだよ。これでわかってもらえたかな」
「一応はな」
 鉄也が答える。
「だが。信用できないな」
「まあ信用してもらうつもりもないし」
 これは本音だった。
「しかし。これだけの数になるとあれだね」
「何が言いたい」
「いや、簡単なことさ」
 囲まれてはいたが余裕は変わらない。その余裕のもとに言葉を続ける。
「これで退散させてもらうよ」
「手前逃げるのかよ!」
「そうさ」
 甲児に笑って言い返す。
「気が変わったんでね。それじゃあ」
 そのまま姿を消した。後には何も残さなかった。
「何だ、あいつ」
 甲児は姿を消した孫について言った。
「訳わかんねえ奴だな」
「全くだぜ」
 それに忍が頷く。
「いけ好かねえな、どうにも」
「けれど。あれですね」
 ツグミは警戒を露わにさせていた。
「かなりの力を持っています」
「そうだな」
 それはスレイも感じていた。
「少なくとも甘く見れる相手ではない」
「ここでまた変なのが出て来るなんて」
 アイビスはこう言うのだった。
「さらに厄介になってきたわね」
「それがロンド=ベルとはいえな」
 マイヨも難しい顔をしていた。
「あの男はその中でもとりわけ問題になりそうだ」
「孫光龍」
 ブリットはその名を呟く。
「一体何者なんだ」
「一応は言っているけれど」
 クスハがブリットの言葉に応える。
「本当なのかしら、全部」
「少なくともだ」
 レーツェルがここで言う。
「彼の本名は違うだろう」
「違う!?」
「じゃあ中国人ではない」
「あの姿を見るのだ」
 レーツェルは孫の姿を指摘してきた。
「あれは中国人のものか?」
「そういえば」
「確かに」
 髪や目の色もその顔立ちもどれも中国人、アジア系のものではなかった。それははっきりわかる。混血していたとしてもあまりにも違っていた。
「あれはむしろ」
「白人!?」
「それもかなりルーツの古い顔だ」
 こう言うのだった。
「混血が見られない」
「じゃあ一体あいつは」
「何者なんだ」
「それもやがてわかるだおる。だが」
 レーツェルはまた言う。
「それがわかる時は戦いは今とは比較にならない程激しくなっているだろう」
「そうですか。やっぱり」
「では帰るか」
 レーツェルは全てを話し終えると撤収を促した。
「彼もいなくなったことだしな」
「わかりました」
「それじゃあ」
 皆もそれに頷いた。
「帰りましょう」
「呉に」
「さて、それでは」
 レーツェルはここでブリットを見るのだった。
「ジュースを飲むとするか、帰ったら」
「えっ」
 今のレーツェルの言葉に息を飲むブリットであった。
「ジュースってまさか」
「そのまさかだよ」
 にこりと笑ってブリットに告げる。
「折角クスハ君が作ってくれたのだしな」
「いや、俺はその」
 ブリットは青い顔でレーツェルに言う。
「あまり喉は」
「それは気にしないで、ブリット君」
 ここでクスハが話に加わってきた。
「どうしてだい、クスハ」
「だってスタミナ回復用だから」
 にこりと笑ってブリットに述べた。闇のない笑みだった。
「喉が渇いていなくてもね」
「そ、そうなんだ」
 ブリットはそれを聴いて引き攣った笑いを浮かべた。
「それは何より」
「うん。じゃあ早く帰りましょう」
 クスハは何もわからずに言う。
「ジュース一リットルもあるから」
「一リットル・・・・・・」
 ブリットの顔がさらに強張る。
「そんなに」
「うん。それ食べて体力つけて」
「わかったよ」
 ブリットはそこまで聞くと肩をがっくりと落として呉まで帰るのだった。ナタルはその後姿をラーディッシュから見て言うのであった。
「気の毒だが。どうしようもないな」
「どうしようもないのかね」
「はい」
 きっぱりとヘンケンに答える。
「こればかりは。やはり」
「戦争とは違ってか」
「はい。私も傍観するしかありません」
「それはまたどうしてなんだい?」
「それはですね」 
 少し間を置いてから述べてきた。
「恋路になるからです。そこに入るのは」
「憚れるか」
「そうしたことに入る趣味はありません」
 ナタルはこうしたところでも生真面目であった。
「協力を仰がれれば別ですが」
「今回もか」
「それでも今回は遠慮願います」
 いつもとは違い薄情なナタルであった。
「何故かね、少佐」
「私も命が惜しいからです」
 きっぱりと言い切った。
「あんなものを飲んでは。それこそ」
「死ぬというのか」
「その通りです」
 見ればナタルの顔も強張っていた。
「あれはまさに戦略兵器です」
「戦略兵器か」
「どうにも。ロンド=ベルには戦略兵器の開発者が多いのが問題ですが」
「ううむ、確かにな」
 これにはヘンケンも頷く。その通りだった。
「彼女といいミナキ君といい」
「ラミアス艦長もラクス嬢も。どうにも」
「ミスマル艦長もだったな」
「残念なことに」
 何故かユリカについては残念と評するナタルであった。
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