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第十二話 龍を喰らうものその四
「これまでの多くの戦いで御前の身体は自然に動いたのではなかったか?」
「えっ!?」
「そうではないのか?だからこそ」
「俺の身体が。自然に」
「身体は正直だ」
 これこそがゼンガーの言いたいことであろうか。
「不思議と自然に出るものなのだ」
「はあ」
「そして心もな」
「そうなんですか」
「それはより多くの修業と戦いで身に着けていく」
 またしても突き放す形となった。
「自分でな」
「わかりました。じゃあこれからも」
「精進しろ」
 そうブリットに告げた。
「いいな」
「はいっ」
 ブリットはゼンガーの言葉に頷く。その瞬間にレーツェルのヒュッケバインがやって来た。
「あれは・・・・・・トロンベ」
「ブリット君」
「クスハ、君も来たのか」
「ええ」
 クスハはそうブリットに答えた。
「だって虎龍王ブリット君が持って行ったから」
「あっ、そうか」
 言われてふと思い出した。
「そうだったな。何かあったら」
「それだけ気をつけて」
 優しいがしっかりとした注意であった。
「御願いね」
「ああ、ごめん」
「それで男は磨けた?」
 クスハは今度はこう尋ねてきた。
「そっちはどうなの?」
「えっ!?」
 ブリットはこの言葉に目を丸くさせた。
「それは一体どういう意味なんだ!?」
「レーツェルさんがそういう風に言ってたから」
「どうやら一通りのことは終わったらしい」
 ここでレーツェルが言う。
「丁度よかったな、クスハ」
「ええ。それでね」
 またブリットに顔を向ける。
「特製の健康ドリンクを持ってきたわ」
「なっ!?」
 今の言葉がブリットにとっては最も衝撃的なことであった。
「ここに・・・・・・」
「何を怯える」
 ゼンガーは平気な様子でそうブリットに問う。
「武人が少々のことで動じるな」
「少々のことじゃないんですよこれが」
「そうなのか」
「そうなのかってゼンガーさん」
 言おうとした時だった。不意に何かを感じた。
「!?」
「何だこの念は」
「荒々しく強大な念」
 クスハとブリットの顔が一変する。
「俺達はこれに似た念を何処かで知っている」
「ええ、これは」
 次に落雷が起こった。そして現われたのは。
「ふふふ、久し振りだね」
「貴方は!」
 クスハは思わず声をあげた。
「どうしてここに!」
「おやおや、つれない言葉だね」
 男の声がクスハに応えた。
「折角久し振りに会えたというのに」
「貴方が今どうしてここに」
「死んだとでも思っていたのかな」
 男の声はそうクスハに問うた。
「僕が。この」
 姿を現わした。巨大な龍と共に。
「孫光龍が」
「孫光龍!どうしてここに」
「ちょっと君達に用があってね」
 孫は真龍王機の上から笑顔で二人に対して言うのであった。
「些細な用件だけれどね」
「些細なこと!?」
「そうだよ」
 また笑って述べてきた。
「本当に些細なことだけれどね」
「それはどうかな」
 レーツェルは孫のその思わせぶりな言葉に反論してきた。
「あまりそうは聞こえないニュアンスだが」
「おや、僕を疑うのかい」
「少なくとも信用はできない」
 レーツェルは声に懐疑的なものを含ませてきた。
「あまりな」
「そもそもです」
 クスハも言う。
「貴方は私達の敵でした。それが」
「あの時急に消えて。それからどうして」
「それはね。契約を破棄していたんだ」
「契約を!?」
「そう」
 こうブリットに答えるのだった。
「あの造られた神とね」
「イルイ=ガンエデンと」
「そう、わかってるじゃないか」
 クスハの言葉に笑顔で応える。
「その通りだよ、僕はもう自由なんだ」
「自由・・・・・・」
「その通り。何をしてもいいんだ」
 また明るい声で述べるのだった。
「実はね。超機人には幾つかのランクがあるんだ」
 今度は超機人について言及してきた。
「ランク!?」
「そうなんだ。まず君達の龍王機と虎王機、そして過去に失われた雀王機、武王機で『四神』の超機人」
「そうだったの」
「俺達の乗る龍王機と虎王機の他にもあったのか」
 クスハとブリットにとっては衝撃の事実だった。
「四霊獣だな。五行で言う」
「うむ」
 レーツェルとブリットもその言葉にうなずく。
「成程な」
「そういうことか」
「そう。そして」
 孫は二人の言葉を受けてさらに話を続ける。
「他にも『四凶』や『四罪』なんてのもある。中でも最上位に君臨するのが」
「君臨するのが」
「この応龍をはじめとする『四霊』の超機人なのさ」
「最上位の超機人」
 ブリットはそれを聞いて声をあげる。
「応龍が」
「そう。これは前にも言ったかな」
 楽しげに笑ってクスハ達にまた述べた。
「僕の龍王機こそが真の龍神、つまり真龍王機というわけだ」
「超機人に選ばれし者」
「そういうことさ」
 またクスハに答える。
「では、あなたも私達の仲間なのですね」
「さて」 
 だが孫はクスハのその言葉には答えないのだった。そこに何かがあるように。
「えっ、違うんですか?」
 既に彼女はトロンベのコクピットから出ていた。そこから孫に近寄ろうとするが。
 ゼンガーが突如として叫んだ。
「迂闊に近寄るな!」
「えっ!?」
 その時だった。クスハの周りに落雷が何本も落ちる。
「きゃあっ!」
「何をする!?」
 ブリットが慌ててクスハを虎龍機の中に守って孫に問うた。
「見てわからないかい?」
 孫はそんな彼に対して軽い調子で言い返すのだった。
「攻撃しているのさ」
「そんな!」
「超機人は正義の心を宿している筈」
 クスハとブリットはそれぞれ言う。
「それが俺達を攻撃するなんて」
「貴方はどうしてその龍王機を操っているの!?」
「やれやれ」
 孫は二人の言葉を聞いて肩をすくめるのだった。
「どうにも四神の龍王機と虎王機の選びし者は愚か者が多いねぇ」
「何だと!?」
「僕は真龍王機の正統な主であり正義に従って行動しているのさ」
 こうブリットに答える。
「つまり君達こそが悪というわけだよ」
「何っ!?」
「それって」
 ブリットもクスハも今の孫の言葉にハッとした。
「ガンエデンの言っていたことと同じ」
「ああ」
 ブリットはクスハのその言葉に頷く。
「そうだ。全く同じだ」
「まあそうかもね」
 孫の方もそれは認める。
「ひょっとしたら。そういえば」
「そういえば!?」
「君達の龍王機と虎王機は遥か過去にガンエデンから離反していたね」
 それについて言及してきた。
「けれど心配は要らないよ」
「それはどうしてですか!?」
「もうガンエデンはいないからさ」
 クスハへの答えはこうであった。
「君達がその手で倒してくれたからね」
「イルイちゃんはまだ」
「力はなくなったってことさ」
 冷静にクスハに述べる。
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