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第十二話 龍を喰らうものその一
                    龍を喰らうもの
 中国蚩尤塚。ここはかつて黄帝が伝説の魔神である蚩尤を破りその亡骸を葬った場所として知られている。蚩尤は異形の姿をした神であり中国においては悲運の英雄であり反逆者であり戦の神として知られている。かなり複雑な立場の神であると言える。
 その塚に今一人の男がいた。そうして何者かと語り合っていた。
「お断りしますよ」
 男は言う。見れば白いスーツにボルサリーノといった格好だ。顔は白人のそれである。
「身体を失った今の貴女に忠誠を誓う義理はありませんから」
 そう言っていた。誰かに。
「今更何を言っても無駄ですよ。所詮僕と貴女の関係は力による服従と同じなのですから」
「・・・・・・・・・」
 一方は何も聞こえない。思念で語り掛けているようである。だが次第にその声が聞こえてきた。
「バラルの園も失われた今貴女が僕と彼に命令を下す権利などない筈です」
「権利・・・・・・」
「そうです」
 思念に応えた。
「好きにやらせてもらいますよ。元々この星の本来の守護者は僕達だったんですから」
「それは」
「それは?」
「させない・・・・・・」
 少女の声だった。不意に男を何かが襲った。
「やれやれ」
 だが男はそれを受けても平気な顔をしていた。笑ってさえいた。
「無駄ですよ」
 そのうえでこう言うのだった。
「確かに貴女の念は協力ですが僕にも龍がついています」
「あの龍が」
「そうです、龍はね」
 また笑みを浮かべて言うのだった。
「若し」
 そして言葉を続ける。
「貴女が僕達を世界に守護する剣にしたいのならば力尽くでどうぞ。あの時の様に」
「あの時の」
「そうです。忘れたとは言わせませんよ」
 また言葉を告げた。
「それが出来ないのならこれ以上僕達にちょっかいを出さないことですね」
「うう・・・・・・」
「わかりましたね。さもなければ」
「さもなければ」
「幾ら貴女だろうと倒しますよ」
 男の顔に凄みが走る。これが本当の顔なのだろうか。
「では」
 ここまで言ったうえで背を向けるのだった。
「僕は行きますよ。丁度待ち人も近くまで来ているようですしね」
「!!」
「今日は彼にとって数万年ぶりに自由を得た日ですからね」
 男は楽しげにまた言う。
「その記念にゲームを楽しませてもらいますよ」
「ゲーム・・・・・・」
「そうです。貴女のお気に入りの剣の現持ち主。彼らを倒すというゲームをね」
「それは・・・・・・」
「おや、違うのですか?」
 凄みのある笑みになっていた。
「それを果たしてはじめて僕と彼は貴女の呪縛から逃れることができる」
「・・・・・・・・・」
 声は応えない。だが男はそれでも言う。
「そうでしょう?イルイ=ガンエデン」
「・・・・・・・・・」
 その声の主イルイ=ガンエデンは応えられなかった。男はもう何処かへと去ってしまっていた。
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