第一話 宣戦布告その三
十一隻の戦艦も全てのマシンも万全の整備を終えた彼等は一旦宇宙にあるオービットに向かおうとしていた。ところが呉を出るところで緊急警報が鳴ったのであった。
「まさか」
「バルマーがもう」
そう考えたのは当然であった。しかし今回はそうではなかった。
「!?」
「何だありゃ」
呉上空に見たこともないマシンばかりが展開している。彼等はそれを見て顔を顰めさせた。
「バルマー・・・・・・じゃねえよな」
サブロウタが首を傾げさせる。
「あれは」
「ああ、全然違うな」
ナンガがそれに頷く。
「あれは一体」
「若しかして」
ここでエイジが言う。
「インスペクターなのか?」
「インスペクター!?」
「噂のか」
皆はエイジの言葉に顔を向けてきた。
「ああ。何度か彼等のデータを見たことがあるけれどそれに似ている」
そう彼は述べる。
「あのシルエットは」
「そうですか。見たところ結構厄介そうですね」
カントが言った。
「機動力と火力が」
「そうだな」
それにナッキィが応える。
「あれは」
「しかし。妙だな」
シラーがふと言った。
「指揮官機がいないのか?」
「いや、あれじゃないのか?」
ジョナサンが述べてきた。敵軍の後方を指差して。
「あの敵機が」
「あれか」
「あれは確かゲイオス=グルード」
エイジが述べてきた。
「インスペクター、ゲストの指揮官機だな」
「けれどエイジさんよ」
ジョナサンが彼に声をかけてきた。
「何かな」
「何でインスペクターとかゲストってわかったんだ?」
「それはあれを見て」
そう言ってインスペクターの機体を指差す。
「敵の左肩の辺り」
「左肩を?」
「ほら、あの紋章」
見ればそこには紋章がある。皆それを見る。
「あれはインスペクターの紋章なんだ。ゲストとはまた違ったもので」
「成程、そういうわけかよ」
忍はそれを聞いて述べた。
「だからか。それでわかったのか」
「ああ。基本的にゲストとインスペクターは同じなんだ」
また皆にそれを言う。
「使っている兵器もな」
「じゃあ大体戦術とかは同じってことかな」
雅人はそれを聞いて述べた。
「ゲストとインスペクターは」
「そうだな、ただ」
「ただ?」
「ゲストの方が問題があると言われている」
「ああ、そのゼゼーナンってやつだね」
沙羅がそれを聞いて言ってきた。
「とんでもない奴だっていう」
「そう、インスペクターの方が手強いかな」
エイジはまた述べた。
「勢力もおおよそ互角だけれど」
「そうか。しかし」
亮はそれを聞いてもなお疑問に思うものがあった。
「何故地球に」
「ただの侵略じゃないのか?」
鉄也が言ってきた。
「今までの勢力と同じように」
「へっ、どいつもこいつもよ」
甲児はそれを聞いて減らず口めいて述べた。
「随分と地球に御執心なこった」
「ガンエデンのせいなのか」
大介は冷静に分析をはじめていた。
「やはりこれは」
「そうかも知れない。ただ」
「ただ!?」
皆またエイジの言葉に顔を向けた。
「ゲストとインスペクターはバルマーとも対立している」
「何かバルマーって」
「敵多いわね」
さやかとジュンはそれを聞いて言うのだった。
「あちこちと戦争しているからかしら」
マリアも言ってきた。
「やっぱり」
「バルマーは確かに敵が多い」
エイジもそれに頷く。
「そのせいで各地で戦力を消耗しているのも事実なんだ」
「やっぱりな」
「それでよく国がもっているな」
「戦争で新たな戦力を手に入れてきたから」
「つまり戦争がないと成り立たないのか」
マシュマーはそう結論を出した。
「危ういシステムのような」
「マシュマー様、おわかりなんですね」
「ゴットン、何か気になる言い方だな」
マシュマーはゴットンに顔を向ける。
「何が言いたいのだ?」
「いえ、何も」
「そうか。ならいいが」
「皆さん」
ルリが口を開いて述べてきた。
「敵が前に来ます」
「やはり」
エイジはそれを聞いて呟いた。
「やはりインスペクターも」
「全軍戦闘用意です」
ユリカはそれを見てすぐに判断を下してきた。
「そして敵を撃退しましょう」
「了解」
「降りかかる火の粉はそれで」
ロンド=ベルはまた戦いに向かうことになった。呉の港に布陣して空から来る敵を迎え撃つ。敵は早速前から攻撃を仕掛けてきた。
「気をつけな!」
スレッガーが叫ぶ。
「こりゃかなり性能が高いぜ!」
「ああ、そうみたいだなこれはよ!」
カイが敵の中の一機の攻撃をかわしてスレッガーのその言葉に応える。
「いい照準してるぜ!」
「照準を合わせて一機ずつ狙え!」
ブライトはその中で指示を出してきた。
「各個撃破だ。いいな!」
「わかった」
アムロがそれに応えて頷く。
「それなら・・・・・・!」
彼の動きはまた特別だった。一機また一機と敵をビームライフルで撃ち抜いていく。やはり彼こそがロンド=ベルで第一のエースだった。
クワトロもまた一機ずつ敵を減らしていく。そうして敵の指揮官が動くのを待っていた。
「エイジ」
アムロはその中でエイジに声をかけてきた。
「はい」
「ゲイオス=グルードだったな」
敵機のことを問う。
「確か」
「ええ、そうです」
エイジは彼に答えた。
「手強いです、注意して下さい」
「わかった。じゃあ」
アムロはあらためて攻撃態勢に入った。フィンファンネルを放つつもりだった。
そしてそれを放つ。無数のファンネルがそのゲイオス=グルードを包んで各方向から攻撃を浴びせる。しかしそれででゲイオス=グルードは落ちなかった。
「何っ!?」
「まさか!?」
皆それを聞いて驚きを隠せない。ニューガンダムのフィンファンネルの圧倒的な攻撃力を知っていたからだ。だがそれは一瞬のことだった。
ゲイオス=グルードはあちこちから火を噴いていく。そうしてゆっくりと海面に落ちた。その後で海の中で大爆発を起こしたのであった。
気がつけば敵はいなくなっていた。とりあえずはロンド=ベルの勝利であった。
「まずは俺達の勝利か」
アムロは敵がいなくなったのを見て言った。
「今日のところは」
「そうだな」
ハヤトがそれに頷く。
「これからはわからないけれどな」
「インスペクターか」
リュウはまた敵の名を口にした。
「今日は数が少なかったがこれで多かったら」
実質一〇〇もいなかった。物量的にこちらが勝っているのが今回は大きかった。
「そうですね。かなりの強敵です」
セイラが冷静にそれを分析してきた。
「彼等もまた」
「今回は宣戦布告か」
グローバルはそう呟いた。
「さしあたっては」
「ええ、おそらくこれからは」
未沙が言う。
「彼等とも激しい戦いになるかと」
また新たな勢力が姿を現わしたのだった。だがそれが果たしてどういった者達かまでは完全にはわかっていなかった。また謎が現われたのだった。
ロンド=ベルが勝利を収めた後で。闇の中でそれについて話す者達がいた。
「データ以上の力か」
「そうね」
スキンヘッドの男に黒いロングヘアの女が応えていた。
「それもかなりね」
「思った以上に手強いか」
「しかしそれも考えれば当然だろうな」
金髪の男が言ってきた。
「今までもかなりの戦果をあげている連中だからな」
「御前はどう思う?」
スキンヘッドの男は黒い肌の男に問うてきた。
「彼等に関して」
「・・・・・・・・・」
だが彼は答えない。黙っているだけであった。
「喋ったらどうだ?」
「別にいいじゃない」
しかし横からそのロングヘアの女が言ってきた。
「別にね」
「ふん、ならいい」
スキンヘッドはそれで諦めた。諦めるしかないといった感じである。
「だが。今後我々も厳しい戦いになりそうだな」
「それはわかってるでしょ?」
女が言う。
「最初から」
「そうだな。あいつ等も地球に向かっているそうだしな」
「そうか、やはりな」
スキンヘッドは金髪の言葉に顔を向けてきた。
「来たか」
「バルマーもまたこちらに来ているわよ」
女がそう付け加えてきた。
「それも今まで以上の数で」
「四つ巴か」
スキンヘッドはそれを聞いて呟いた。
「かなり激しい戦いになるな」
「どうする?一時高みの見物といくか?」
「いや、それはできないだろう」
スキンヘッドは金髪の言葉に首を横に振ってきた。
「あの方がそれを望まれてはいない」
「そうか、なら仕方がないな」
「そうね」
「・・・・・・・・・」
他の三人もそれで納得した。もっとも黒い男は言葉を発してはいないが。
「では我々も積極的に動こう」
「そしてロンド=ベルはどうしているんだ?」
金髪の男が仲間達に尋ねてきた。
「呉から移動している筈だが」
「東京にいるらしい」
「東京か」
「そうだ、そこからまた本格的な作戦行動に移るつもりらしい」
「わかった。では俺が行く」
スキンヘッドの男が言ってきた。
「それでいいな」
「ええ、私はそれでいいわ」
女はそれで納得してきた。
「あんたはどうなの?」
「俺もそれでいい」
金髪も答えた。
「そうか。御前はどうだ?」
「・・・・・・・・・」
黒い男は黙っている。しかしスキンヘッドは問いはしなかった。
「わかった」
「じゃあ行って来い」
金髪が彼を送る。
「死なない程度にな」
「わかった。ではな」
彼は出撃しそのまま姿を消す。東京においても戦いがはじまろうとしていた。
第一話 完
2007・5・16
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