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第十話 内なる修羅その七
「ここいるな!早く安全な場所に!」
「わかったわ。それじゃあ」
「君に何かあったら俺が」
「おい、ちょっと待てよ」
「そうだよ」
 そんな彼を見てスティングとアウルが突っ込みを入れた。
「俺達はいいのかよ」
「幾ら何でもそれはないんじゃないのか?」
「あっ、御免」
 二人に言われてやっと自分でも気付く。
「忘れてた。御前等もいたんだな」
「いるよ」
「一緒にな」
「じゃあ安全な場所に」
 シンは今更のように二人にも声をかける。
「わかってるさ」
「全く。まずはステラからかよ」
「いいだろ、別に」
 シンも開き直ってきた。
「俺はステラの為に戦ってるんだからな」
「あとマユちゃんの為だよな」
「ったく、もてる男は羨ましいよ」
「俺は別にもてては」
「ステラ、シン好き」
 その後ろからステラが言わなくていいことを言う。
「だから一緒に」
「あ、ああ」
「ほら、やっぱりな」
「お熱いこって」
「だから俺は!」
 シンもムキになって反論する。
「別にその、ステラは」
「いいからシン」
 見るに見かねたアスランが後ろから声をかける。
「ここは早く行け」
「おっと、そうか」
 アスランに言われてやっと状況を思い出す。
「このままじゃ巻き込まれるな」
「そうだ。今のトウマさんは手に負えない」
 アスランの声は苦々しげだった。
「ゼンガーさんに任せるしかない」
「わかった。じゃあステラ」
「うん」
 ステラが頷いたのを確認するとスティングとアウルにも声をかけた。
「御前等も」
「やっぱりついでかよ」
「何だかな」
 そんなことを言いながらも彼等も退く。その間にもトウマはセゼンガーに破天荒な攻撃を浴びせ続けていたのであった。
 ゼンガーはそれをかわす。かわすと共に隙を狙っていた。
「まだだ」
 彼はトウマの攻撃をかわしながら呟く。
「まだその時ではない。まだ」
「がああああああああああああっ!」
 隙を窺うその間もトウマの攻撃は続く。まさに獣そのものの攻撃だった。
「トウマ!その心を鎮める為に」
 ゼンガーはその彼に対して言うのだった。
「今ここに!」
 隙が見えた。今だった。
「我が剣を示そう。チェストーーーーーーーーーーッ!」
 示現流が炸裂した。雷鳳を一閃した。
「!!」
「どうなった!」
 皆雷鳳が動きを止めたのを見た。その直後だった。
 爆発が一度起こった。そうして雷鳳はその中で崩れ落ちたのだった。
「トウマ!」
「トウマさん!」
 皆トウマを気遣い雷鳳に駆け寄る。ゼンガーはその彼等に対して静かに告げた。
「心配無用だ。急所は外した」
「けれど」
「トウマさんは」
「気を失っているだけだ」
 ゼンガーはまた彼等に告げた。
「気にすることはない。わかったな」
「そうですか」
「だったらいいですけれど」
「すぐに医務室に連れて行こう」
 レーツェルが述べてきた。
「何はともあれ手当てが必要だ」
「ええ」
「それじゃあ」
 トウマはすぐに大空魔竜の医務室に運ばれた。サコン達がその手当てにあたることとなった。その中でミナキは自身の父について聞かされていた。
「じゃあお父様は」
「そうよ。自分の研究を認めさせる為にね」
 ミサトが説明していた。
「それはさっき話したわよね」
「はい」
 ミサトの言葉にこくりと頷く。
「それでシステムLIOHを」
「システムLIOHは確かに強力よ」
 リツコが答えた。
「けれどあれはあってはならないシステムなのよ」
「赤木博士」
 そこにレインが来た。
「レインちゃん、わかった?」
「はい、システムLIOHは予想以上に危険です」
 答えるレインの顔が強張っている。それが何よりの証拠であった。
「システムLIOHは使う人間を常に死と隣り合わせの危険な状態に置きます」
「死と・・・・・・」
 死と聞いてミナキの顔が蒼白になった。
「そうして次第に使う人間を追い詰めていき」
「それでどうなるの?」
 問うミサトの顔も強張っていた。
「聞いているだけであのバーサーカーシステムより危険なのはわかるけれど」
「さっきのトウマ君ですが」
「ええ」
 レインの話は続く。ミサトとリツコ、そしてミナキはさらに彼女の話を聞く。
「彼はシステムLIOHのファィナルモードに入っていました」
「ファイナルモード!?」
「それは何!?」
「システムLIOHの力を全て使った状態です」
「あれが・・・・・・」
 それを聞いてミナキの顔がさらに蒼くなった。
「あれがシステムLIOHの」
「パイロットの闘争心を極限まで出したうえでその能力を最大限まで引き出しますが」
「副作用があれね」
 ミサトの顔は暗く固まっていた。
「あのトウマ君なのね」
「そうです。敵味方関係なく襲い掛かるようになり」
 それだけではないという。
「パイロットの命を全て搾り取ります」
「命を」
「そうです。つまり特攻用のモードです」
「恐ろしいものを考えついたものね」
 リツコも流石に言葉がなかった。
「そこまでだったなんて」
「じゃあ私は・・・・・・」
 ミナキの表情が崩れていく。
「そんなものをトウマに・・・・・・」
「やっとわかったようね」
 ミサトはそのミナキに顔を向けて言うのだった。
「自分の今までに。もう少しで取り返しのつかないことになっていたわよ」
「はい・・・・・・」
 泣いていた。涙で顔が崩れている。
「私はトウマに・・・・・・。トウマに酷いことを」
「わかったのならいいのよ」
 ミサトは優しい声になっていた。
「人間っていうのはね。何度も頭を打つものよ」
「頭を・・・・・・」
「逆に言えば打たないとわからないのよ」
 こうも言った。
「痛みと共にわかるのよ。少しずつ」
「そうなんですか」
「そうよ。だから今はトウマ君に謝ればいいわ」
「はい・・・・・・」
 ミサトのその言葉にこくりと頷く。泣きながら。
「トウマ君もきっと許してくれるわ。安心して」
「わかりました。けれど」
「彼はきっと戦うわ」
 今度はリツコが告げた。
「倒れない限りは。それも安心していいわ」
「けれどもう」
 ここでミナキは言うのだった。
「トウマには。彼には」
「システムLIOHね」
「はい。私はあれを封印します」
 涙をそのままにしての言葉であった。
「お父様の残した悪魔の遺産を」
「それでいいのね」
「はい」
 こくりと頷いた。
「決めました。もう」
「わかったわ。じゃあそうしなさい」
 リツコはミナキのその考えを受け入れた。
「貴女の望むように」
「有り難うございます。それじゃあ」
 ミナキはミサト達に頭を下げてからその場を後にした。ミサトはそんな彼女を見送りながらリツコとレインに対して言うのだった。
「彼女も。やっとわかったわね」
「そうね」
 リツコがミサトのその言葉に応える。
「頭を打ってね」
「頭を打つことも大事よ」
 ミサトはあえてこう表現した。
「痛みがないと人間はわからないから。彼女にも言ったけれど」
「その辺りは豊富な人生経験がものを言うわね」
「まあそうね」
 笑ってそれを認めるのだった。
「何かとね。それはレインもよね」
「私もですか」
「だってそうじゃない」
 くすりと笑って彼女に言うのだった。
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