第一話 宣戦布告その二
「わかるんだ。彼等はバルマー十二支族の末裔で帝国の中ではかなり位が高い」
「それでなんですね」
「そうなんだ。プライドを鼻にかけて暴虐の限りを尽くしている」
「そんなに」
「ティターンズなんて生易しい」
エイジのその言葉こそがグラドスについて何よりも雄弁に語ったものだった。
「そんな奴等だってことは覚えていて欲しい」
「わかりました」
「何かどんどんとんでもない連中がいるってことが」
「けれどバルマーだけじゃない」
ファムが能天気に言ってきた。
「それじゃあ楽よ」
「いや、それがそうじゃねえんだ」
しかしキャオがここでまた言う。
「それだけじゃないって?」
「バルマー以外にも勢力は存在している」
ギャブレーが告げる。
「ゲストとインスペクターもまた」
「ゲスト!?」
「インスペクター!?」
皆その聞き慣れない言葉に目を動かす。
「それって一体」
「何なんですか!?」
「わかり易く言うとバルマーとは別の国家だ」
「別の」
「彼等も私達人間と同じ姿形をしている。そうした意味でおそらく同じルーツなのだろうな」
「地球やバルマーと同じなのか」
シンはギャブレーの言葉に目を動かしてきた。
「けれど何か違うみたいな」
「そうだま。基本的にゲストとインスペクターは同じ星を母星とするが勢力が違う」
「というと」
「俺達とティターンズみたいなものか」
「そうだな、それに近い」
ギャブレーもそれは認める。
「彼等は共に共和政体だが指導者がそれぞれ違う」
「指導者が」
「ゲストはティニクエット=ゼゼーナン、インスペクターはウェンドロ」
二人の名前が告げられる。
「彼等がそれぞれの指導者となっている」
「それでその二人の指導者はどうした感じかな」
ユウナがギャブレーに問うてきた。
「敵になるにしても味方になるにしてもそこが重要だからね」
「ウェンドロは子供だ。ただし天才的な戦闘センスとカリスマ性を持っている」
「戦闘センスとカリスマ性を」
「そうだ。それに対してゼゼーナンは大したことがない」
そう言い捨てる。
「自分達以外を下等と見下していて家柄だけで今の地位にある。人望も全くない」
「何だ」
「その程度か」
皆それを聞いて安堵の息を漏らす。暦に回った場合その程度なら大したことはないと判断したからである。それは実際にそうであるが。
「ただしどちらも勢力は大きい」
ギャブレーはここで付け加えてきた。
「どちらもバルマーに対抗できる程だ。それは覚えておいてくれ」
「了解」
「それじゃあそれも」
皆ギャブレーの言葉に頷く。
「頭に入れておきます」
「さて」
話は一段落したところでダバが言ってきた。
「それじゃあ食べ終わったし」
「ええ」
「解散ってことで」
「何か一難去ってまた一難だよな」
ディアッカが苦笑いを浮かべて言う。
「戦いが終わってもな。次の敵か」
「仕方ありませんよ」
ニコルが彼にそう述べる。
「宇宙怪獣だっていますしね」
「それもそうか。じゃあ訓練でもすっか」
「もうオルガ達は元気でやってるぜ」
ジュドーが言ってきた。
「相変わらずな」
「相変わらずねえ」
勇がそれに顔を向ける。
「何かあの三人がいるだけでもかなり心強いな」
「そうね。最初はとんでもないのが来たと思ったけれど」
カナンが彼の言葉に答える。
「会って話してみればそんなに悪いことはないわね」
「そうか?」
だがヒギンズはそれには異議を呈する。
「あの破天荒さはな」
「それもあいつ等の売りだな」
スティングはこう評してきた。
「俺達も似たようなものだがあいつ等はまた特にな」
「エキセントリックってやつ?」
アウルがそれに突っ込みを入れる。
「あれは」
「エキセントリックというよりは」
サイがそれに応えて述べる。
「無茶苦茶っていうような」
「けれどステラあの三人好き」
しかしステラがここでこう言う。
「悪い感じはしないから」
「影はないな」
クインシィが彼女の言葉に頷く。
「確かにな」
「戦いでも派手に活躍してくれるしな」
ジョナサンもそれは認めている。実際に彼等の常識破りの戦闘力と三機のガンダムのパワーは今やロンド=ベルにはなくてはならないものになっている。
「それは事実だ」
「けれどよ、あれよ」
アムが顔を顰めて言ってきた。
「あの三人何を食べても平気だし何しても死なないし」
「そうそう、それそれ」
「それだよな」
皆そこに突っ込みを入れる。
「俺もあれには驚いた」
イザークが真剣な顔で述べる。
「まさか。クスハの料理を食べて全く何もないとはな」
「マリューさんやミサトさんの料理もね」
「あとユリカ艦長のも」
ロンド=ベルは料理の上手い人間は最高に上手いがそうでない人間は犯罪の域にまで達している。特にラクスを含めた上記の彼女達のそれは筆舌に尽し難い。
「酷いなんてものじゃないよなあ」
「幾ら何でも」
「けれどさ」
ここでトールが言ってきた。
「どうしたんだ、トール」
「この前食べたナタル副長の料理は美味しかったよ」
「ナタルさんのが!?」
「それ本当?」
「うん、本当に」
そう皆に告げる。
「かなりよかったよ」
「何か意外」
「いや、案外」
メイリンが言葉を出してきた。
「似合ってるかも」
「そうかな?」
「だってナタルさんってあれで女らしいじゃない」
メイリンはいいところを見ていた。その通りである。
「だからね。そういうのも」
「ありってことか」
「どうかしら」
「はい、シン」
ルナマリアがシンに突っ込みを事前に入れてきた。
「以後ナタルさんに関する言葉禁止」
「おい、何でだよ」
「あんたが誰かの悪口言うと絶対にその人が後ろに立ってるからよ」
「何だよ、それ」
「いや、本当にそうだしな」
「そうだな」
イサムとガルドがそれに応えて言う。
「御前の特殊能力だよな」
「全くだ」
「ちぇっ、じゃあ言わないけれどよ」
「それに越したことはない。それでだ」
レイがまた言う。
「どの機体も整備は進んでいるな」
「ええ。どの機体も随分傷んでいたけれど」
キーンが彼の言葉に答える。
「戦艦も整備が終わったってところかしら」
「呉のドックをフルに使ってね」
マーベルが言った。
「かなり大変だったみたいよ」
「しかしだ。これでまた安心して戦える」
バーンは冷静な声で言うのだった。
「時折こうして整備しておかないとな。戦えるものも戦えなくなる」
「全くだぜ」
デュオが彼の言葉に頷く。
「俺のデスサイズヘルカスタムもかなり傷んでいたしな」
「マグアナック隊もそうでした」
カトルも答える。
「それもかなり」
「時々こうして念入りに整備をしておかないと満足には戦えない」
トロワの声はクールであった。
「それを考えるといい休みになった」
「しかしだ」
ウーヒェイが注意を入れてきた。
「気は緩められない。それはわかるな」
「ああ」
ヒイロが彼の言葉に応える。
「まだ戦いは終わってはいないからな」
その通りであった。バルマーもいれば宇宙怪獣もいる。だがそれだけではなかった。彼等は暫くしてそれを知ることになったのであった。
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