第九話 立ち上がれ!勇気ある者達その七
「皆に気持ちは有り難いけれど俺は」
「どうしたんですか?」
「一体何が」
「俺が・・・・・・雷鳳に合わないっていうんなら」
彼は寂しい言葉で言う。
「それでいいさ。俺は降りるよ」
「そ、そんな・・・・・・」
「あんな冷たい人の言うことなんか!」
「いいさ。やっぱり俺は」
「何言ってるのよ」
ミサトが彼に言った。厳しい声と顔で。
「そんなこと許さないわよ」
「ミサトさん」
「次の任務があるでしょ」
ミサトは言う。
「次の任務!?」
「そうよ。邪魔大王国も百鬼帝国もまだいるから」
「けれど俺はもう」
「誰が戦えって言ったの?」
ミサトはあえてこう言う。
「えっ、けれど」
「偵察よ」
ここですっと微笑むのだった。
「トウマ君明日の担当よ。忘れたの?」
「えっ、いやそれは」
「じゃあ行って来てもらえるわね」
「けれどミサトさん」
まだ何もわかっていないミナキはミサトにも言おうとする。
「トウマはもう」
「これは命令です」
ミナキには絶対的に峻厳な声で言うのだった。
「いいわね。命令よ」
「命令・・・・・・」
「異議があれば貴女が降りてもらうわ」
「そうしろ!」
シンが言い放つ。
「もうあんたみたいなのとは一緒にいたくもないからな!」
「そうよ!」
アスカもそれに続いた。
「トウマさんはいていいからあんたがね!」
「だから黙っているんだ」
ナタルがそんな二人を宥める。
「それだと彼女と一緒だぞ」
「けれどナタルさん」
「あんまりだから」
「だが落ち着け」
ナタルはここは年上の女として二人に接した。
「いいな。多くは言わないが」
「ちぇっ」
「仕方ないわね」
二人は何とか収まった。他の面々もベン軍曹達が何とか宥めていた。
「お気持ちはわかりますが」
彼はケーン達を中心にして話していた。
「トウマ君を見守ってですな」
「降りるわけじゃないんだな」
「そんなことはありません」
そう述べて一同を安心させる。
「ですから」
「わかったわ」
「それじゃあ」
皆やっと落ち着いた。まだミナキを睨み続けているがそれでも落ち着くものは落ち着いたのだった。
「明日。頼むわね」
「はい」
トウマはミサトの言葉に頷く。
「わかりました。それじゃあ」
「じゃあこれで解散」
ミサトはあえて笑顔を作って言った。
「皆各自で好きにやって。いいわね」
「了解」
「じゃあ飲むか」
皆それぞれ解散する。だが誰もがトウマに温かい声をかけミナキに対しては冷たい目を向ける。その有様は実に対象的なものであった。
ミサトはそれを見てもあえて言わない。だがリツコと二人になるとそれは変わった。
「困ったわね」
「彼女ね」
「ええ。あれはないでしょ」
ビールを飲みながら言う。二人でミサトの部屋で飲んでいた。
「思いやりがなさ過ぎるわ」
「そうね」
リツコも親友の言葉に頷く。
「私も聞いていて腹が立ったわ」
「今だから言うわよ」
ミサトは言う。
「ひっぱたいてやろうかって思ったわよ」
「同じね。私もよ」
「何でああも思いやりがないのかしら。シン君達が怒るのも当然よ」
「一つのことに捉われているからね」
リツコはそう述べた。
「多分」
「そうなのじゃあやっぱり」
「彼女は彼女なりに必死なのよ」
それは認めるのだった。
「けれどね」
「言っていいことと悪いことがあるわね」
ミサトはこう答えた。
「やっぱり」
「そういうことよ。やっていいことと悪いことも」
「それがわからなくなっているのね」
「雷鳳のことばかり見ているうちにね」
「雷鳳ねえ」
ミサトはふとその名に不吉なものを感じた。
「何か。危険な感じがするのよ」
「危険な感じ?」
「何処となく。人を壊していくような」
「そうかしら」
リツコはそれは感じていなかった。それでミサトの言葉に首を捻る。
「私は別にそれは」
「感じてないの」
「ええ、リツコは違うのね」
「そうね、科学者の勘かしら」
リツコはそう言うのだった。
「それとも」
「女の勘?」
「だといいけれど」
まんざらといった感じでない笑みだった。
「まあそれもおいおいわかるわね」
「ええ」
戦いは嫌な方向にも流れていた。二人はそれを感じながらも今は見守るしかなかった。他にできることはそれを笑みで隠すことだけであった。
第九話 完
2007・9・15
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