第九話 立ち上がれ!勇気ある者達その四
「このままだと」
「その可能性・・・・・・高いわね」
ミサトも今それを感じた。直感で。
「この戦いが終わったら。騒動になるわ」
「正直私ね」
リツコはまた言う。
「彼は。嫌いじゃないのよ」
「年下に目覚めた?」
ミサトの言葉は何処かリツコをからかうものだった。
「あんたも」
「まあ嫌いじゃないわ」
リツコも微笑んでそれを認める。まんざらではないようだ。
「年下もね」
「ふふふ、可愛いわよ」
ミサトの声がさらに笑ったものになる。楽しむ感じだ。
「年下の子って。ロンド=ベルはハーレムだし」
「ハーレムなの」
「私にとってはね」
やはりここでもミサトは笑うのだった。笑みが増していく。
「いい感じね」
「私もそっちに行こうかしら」
「どうぞ。待ってるわよ」
ミサトは誘う笑いになっていた。リツコがその対象なのは言うまでもない。
「花園へ」
「トウマ君のね、あの熱血な感じがいいわね」
「そうそう、熱血もいいものよ」
ミサトはさらに話に乗る。
「シンジ君とかキラ君みたいな大人しい子もいいけれどね」
「そうねえ。じゃあシン君は?」
「あれはあれでいいと思わない?」
実は二人はシンも嫌いではなかった。
「一途だしアグレッシブだし」
「かなり口が悪いけれどね」
「その都度ぶっ飛ばすだけだけれどね」
ミサトにリツコもシンをかなり袋にしている。彼の口の悪さが災いを招いているのであるが二人は実はそれも楽しんでいるようだ。
「困った子もいいし」
「中々奥が深いわね」
「そうよ。じゃあ」
「ええ、今はね」
二人はトウマを見守っていた。彼は必死に雷鳳を操り戦っていた。だがそれでも今一つ万全の状態とは言えないものがあった。
「トウマさん!」
横からクスハが出て来た。そしてトウマの側面から襲おうとしたハニワ幻人のマシンを粉砕した。
「ク、クスハちゃん」
「気をつけて下さい、敵は何処からも来ますよ」
「あ、ああ」
トウマは戸惑いながらクスハに答える。
「済まない」
「何かあったら私達がフォローしますから」
「そうです。だから」
ブリットも言う。
「安心して下さい」
「いや、けれど俺は」
トウマは二人のその言葉には納得しなかった。
「システムLIOHを。それでも」
「動かすんですね?」
今度はブリットがトウマに問うた。
「ああ、完全にな」
「わかりました」
ブリットにもトウマの心が伝わった。あくまで真剣な彼の心を。
「じゃあ俺も」
「私も」
クスハも言う。
「全力でフォローします、任せて下さい」
「有り難う」
トウマはその二人に礼を述べる。そのまままた前に突っ込む。
そこにいたのは百鬼帝国のマシンだった。彼等も戦場に姿を現わしていたのだ。
「俺だってな!」
トウマはその敵に一直線に突き進みながら言う。
「負けるわけにはいかないんだ!自分自身に!」
「ガオオオオオオオオ!」
トウマの突進に敵も突き進む。そうして攻撃を繰り出そうとする。
その動きはかなり速い。しかしトウマはそれを紙一重でかわして反撃を浴びせた。クスハはそれを見て満足した顔で頷いた。
「やりましたね、トウマさん」
「ああ、けれど」
それでもトウマは浮かない顔をしていた。
「俺はまだ」
「トウマさん」
クスハはトウマのその浮かない顔を見て気遣う顔になった。
「けれど今敵を」
「システムLIOHを完全に使いこなしていないんだ」
それがトウマの顔が浮かない理由だった。今彼自身がそれを口に出した。
「だからまだ」
「今はまだいいです」
クスハはそう言って彼を庇う。いや、慰めた。
「だって戦いをはじめたばかりだし」
「けれどまだ」
「そうです。トウマさんはよくやってます」
ブリットもトウマに言う。
「ですから。かえって気落ちしたら」
「よくやってもそれでも」
トウマはまだ浮かない顔を見せていた。
「システムを完全に引き出さないと」
「焦っては駄目です」
クスハはまた彼に言った。
「焦ったらそれで終わりですから」
「ええ。戦いは皆でやるんですよ」
「皆で、か」
「その通りだ」
ゼンガーも彼に言ってきた。
「ゼンガーさん・・・・・・」
「戦っているのは御前だけではない」
また彼に言う。
「それを忘れるな。さもなければ御前もまた修羅となる」
「何故修羅に。俺が」
「それもわかるかも知れない」
答えずにこう述べるのだった。
「わかる状況になれば」
「どういうことなんですか、それは」
「言ったままだ」
やはり答えはしない。まるで突き放すように。
「まだ戦いは続いている。ならばそこに向かえ」
「は、はい」
その言葉にはすぐに頷いた。
「じゃあ行きます。俺も!」
「トウマさん、横は俺が!」
「私が!」
竜虎王は虎竜王になった。その姿で敵に一直線に進む。
そうしてその手に持っている立ちで雷鳳の周りの敵を薙ぎ払いトウマをフォローする。ミナキはそんな彼等も見ていた。
そのうえで呟く。無念と嫌悪に満ちた声で。
「駄目だわ」
次に雷鳳を見た。そうしてまた言うのだった。
「全然力を引き出していないわ。お父様の開発された力を」
「これは」
ミサトはそんな彼女の呟きを聞き逃さなかった。懸念が現実になっていくのを感じていた。
「いよいよまずいわね」
「嫌な予感が当たったわね」
リツコもそれに応える。
「本当にこの後大変なことになるわね」
「ええ」
「やっぱり・・・・・・無理なのね」
ミナキはトウマの戦いを見ていた。そのうえで唇を噛み締めていたのだった。
戦いは佳境に入っていた。トウマはフローカのオロチに向かっていた。
「フローラだったな!」
「ええ、その通りよ」
フローラは不敵な笑みを浮かべて彼に応える。
「そうか。じゃあやってやる」
「私を倒すとでもいうのかしら」
「そうだ、その通りだ!」
全身に力を込めて言葉を返す。
「ここで貴様を。そうして」
「生憎だが無理ね」
「何だとっ!?」
トウマはその言葉に顔を上げた。侮りを受けたと感じた。
「俺では御前は倒せないっていうのか!」
「その通り。さあ」
オロチを動かして攻撃に入る。
「返り討ちにしてあげるわ。覚悟!」
「くっ!」
トウマはオロチのその攻撃をかわそうとする。だが反応が遅れた。今まさに炎に包まれようとしていた。
「うわっ!」
「危ないっ!」
そこにレーツェルのトロンベが来た。すぐにスラッシュリッパーでその炎を退けた。
「レーツェルさん!」
「間に合って何よりだ」
レーツェルは穏やかな笑みをトウマに向けて言った。
「すいません」
「何、礼はいい」
彼はそうしたことにはこだわらなかった。彼は。
「困った時はお互い様だからな」
「けれど俺は」
「私も君に何度か助けてもらっている」
レーツェルはここでまたトウマに言った。
「えっ!?」
「聞こえなかったか。君に何度も助けてもらっていると」
「そんな、それは」
「私は嘘はつかない」
気品のある笑みで彼に言うのだった。
「君が気付いていないだけでな」
「俺が」
「そうだ。しかしだ」
レーツェルはまた言う。
「君の他にも気付いていない娘がいるな。これが問題だ」
「気付いていない娘!?」
トウマはそう言われてまた声をあげた。
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