第八話 混沌の大地その四
「この程度は予想していた」
「本当ですか?」
今一つ彼を信じていない言葉であった。
「そうならいいですけれど」
「何だその言葉は」
マシュマーも彼の言葉に気付き不機嫌な顔を見せる。
「言いたいことがあるなら早く言え」
「またれじゃないんですか?」
ゴットンは遠慮なく彼に問うてきた。
「ハマーン様にいところを見せようと。それで」
「馬鹿を申せっ」
図星をつかれて顔を真っ赤にさせる。
「私がどうして。そもそもだな」
「そもそも。何ですか?」
「騎士とは何だ」
またお得意の騎士道精神がはじまった。
「答えよ。騎士とは何だ」
「主の為に正々堂々と剣を抜く」
いい加減答えはわかっていた。
「そう言いたいんですよね」
「そうだ。だからこそだ」
彼は無理矢理力説する。
「このマシュマー=セロあえてハマーン様の為に」
「そのハマーン様ですけれど」
「むっ!?」
またここでふと気付く。
「もう敵の指揮官機のところに言っておられますけれど」
「な、何とぉーーーーーーーーっ!」
「相変わらず面白過ぎるな」
「ああ」
ナンガとラッセは一人騒ぐ彼を見て言う。
「どうしたことだ!ハマーン様」
「マシュマー、騒いでいる場合じゃないよ」
「キャラ=スーン」
「あたし達の周りも敵だらけだよ。そっちをまず何とかしないと」
「し、しかし」
それでもマシュマーはハマーンの方を見ていた。
「ハマーン様が。このままでは」
「ハマーン様ですよ」
しかしここでゴットンが言う。
「きっと何とかしてくれますよ」
「しかしだ」
「その前にさ」
キャラはまたマシュマーに言った。
「本当に目の前を何とかしないとあたし達がだね」
「むむむっ」
「ささ、マシュマー様」
ゴットンはまたマシュマーに言う。
「ここは目の前の敵をですよ」
「致し方ないか」
「それが戦争ってやつですよ」
また告げる。
「それがハマーン様の為ですし」
「ハマーン様の」
面白い程単純に反応を見せる。
「それがハマーン様のか」
「だってそうでしょ?」
ゴットンはまたマシュマーに告げた。
「戦いに勝つことがハマーン様の最大の望みですから。ですから」
「そういうことか」
「そういうことです。さあわかりましたよね」
「わかった。では」
異常に簡単にその言葉に乗る。
「ハマーン様、今ここで!」
「さあ、行くよ」
またキャラが急かす。急かすと同時にゲーマルクのファンネルを放つ。
「これで一気に決めてやるよ」
「私もだ!」
マシュマーも派手な動きでザクスリー改のビームライフルを放つ。
「ハマーン様!このマシュマー=セロ今日もまた!」
「さあゴットン」
キャラはゴットンにも声をかける。
「あんたもさ」
「へっ、私もですか!?」
「当然だろ」
「さあ早く頑張れ」
マシュマーも話に入ってきた。
「今が正念場だからな」
「うう、何でこんなことにって・・・・・・うわーーーーーーーっ!」
いきなり目の前に敵が現われた。勿論襲い掛かって来る。
「ゲストを甘く見るな!」
「ゲストって何なんだよ!」
ゴットンは無意識のうちに敵の兵士に言葉を返す。
「俺は一体何でこんな目に!」
あれこれ言っている間に戦いに組み込まれる。彼も逃げられなかった。
マシュマー達が後ろで戦っている間にハマーンは青いマシンに接近していた。まずはファンネルを放つ。
「さあ、どうする?」
ファンネルを放ちながら敵に問う。
「このファンネル、かわせるか」
「来たか」
敵の指揮官は冷静にそのファンネルの動きを見ていた。多くの敵を屠ってきたハマーンのファンネルを前にしても全く動じてはいない。
「ならば」
「むっ」
何とその動きだけで全てかわす。自然な動きでだ。
「私のファンネルを。全てかわしたか」
「速い。油断はできないか」
男は攻撃をかわしながら述べる。
「やるな」
「面白い」
ハマーンもまた自分の攻撃をかわした彼に興味を持った。それで問う。
「聞きたいことがある」
「何だ、地球の戦士よ」
「よく私の攻撃をかわした。名は何という」
「名前か」
「そうだ、私の名はハマーン=カーン」
まずは自分から名乗った。
「それが私の名だ」
「そうか。俺はグロフィス=ロフレイン」
彼も名乗った。
「ロフと言われている」
「ロフレインというのか」
「そうだ。よく覚えておけ」
彼はそうハマーンに告げた。
「地球の誇り高き戦士よ」
「地球人を肯定しているのか」
「否定はしていない」
ロフはハマーンにそう答えた。
「少なくともな」
「わかった」
ハマーンは彼の言葉に頷いた。
「かなりやるのはわかった。だが」
「まだやるというのか?」
「そうだ。私とてこの戦い退くわけにはいかぬ」
鋭い顔と声でロフに答える。
「それは貴様も同じだと思うがな」
「如何にも」
ロフもハマーンの言葉に応える。
「俺とてゲストの指揮官の一人だ。だからこそ」
「ゲストだと」
「我が組織の名前だ」
そうハマーンに説明する。
「覚えていてもらいたい」
「そうか。では覚えておこう」
ハマーンはロフにそう返した。
「ゲストという名はな」
「インスペクターに会ったそうだな」
ロフはキュベレイにビームを放ちながら彼女に問うた。
「それがどうした?」
「そうか。メキボスは元気か」
「メキボスだと」
ハマーンは彼がメキボスの名前を出したことにすぐに反応した。
「何故貴様がその名を知っている」
「当然だ。同じ文明にあるのだからな」
「同じ文明。そうか」
ハマーンは何故彼等の兵器がインスペクターと同じものなのかを理解した。そういうことならば容易に説明がつくことであるからだ。
「だから貴様等はインスペクターと同じ」
「そういうことだ」
ロフの方でもそれを認めてきた。
「我々は政治組織が違うが同じ人種なのだ」
「やはりな」
「そういうところは諸君等と同じだな。結局は」
「結局はだと?」
ハマーンはロフがポツリと呟いた部分も見逃さなかった。
「何か含むところがあるな」
「それを言うつもりはない」
だが彼はそれを語ろうとはしなかった。
「生憎な。悪いが」
「ふっ、ならば良い」
ハマーンもそれを聞こうとはしない。あえて止めた。
「どちらにしろ貴様にはここで倒れてもらうからな」
「このゼイドラムを倒すというのか」
「その通りだ」
その顔に凄みが宿った。
「貴様は今ここで死ぬ。私の手でな」
「面白い。ならばやってみせろ」
ロフもそれを受ける。ハマーンを前にしても臆するところはない。
「かつてアクシズを率いた女傑ハマーン=カーンの腕、見せてもらおう」
「私のことも知っているのだな」
「地球のことも事前に情報収集させてもらった」
ロフはそのことについても言及する。
「そうか。何かと手回しがいい」
「君達の戦闘力の高さは特筆に価する」
それもまた認めた。
「それについて我々は多大な興味があるのでね」
「つまり我々の技術を欲しているということか」
ハマーンはハンドビームを放ちながらロフに問うた。
「そういうことだな」
「そうだ。そこはインスペクターと同じだ」
「同じだな。何処までも」
「だが彼等と違うところもある」
ロフはそのビームをかわしながら述べた。
「細かい違いでしかないが」
「それは一体何だ?」
再度ハンドビームを放つ。
「言え。倒れる前にな」
「倒れるつもりはない」
またビームをかわす。左右に舞い。
「しかし言おう。我々は貴族社会でね」
「ほう」
ハマーンは貴族主義と聞いて目を細めさせた。いささかシニカルな笑みであった。
「我々もかつてはそうだった」
「馬鹿にしているのだな」
「いや。同じだと思ってな」
ハマーンが笑ったのはそこであった。
「貴様等も私も。所詮は同じなのだと思ってな」
「それに対してインスペクターは実力社会と言える」
ロフはインスペクターについてはそう答えた。
「実力があれば若くして頂点に立てるのだ」
「それも同じだな。我々と」
「そうだな。所詮は同じだ」
ロフは表情を変えずにそれを認めた。特にそのことで悪感情は抱いていないようである。
「諸君も我々も。だが」
「だが?」
今度はロフが攻撃を加えてきた。
「そうは考えない者もいるということを覚えておいて欲しい」
大口径ビームキャノンを撃つ。しかしそれはハマーンにあえなくかわされた。
「簡単に言うと君達を同じ存在と見なしていない者もいるのだ」
「そこも同じだな」
ハマーンはそれを聞いても笑うのだった。
「我々とな」
「俺もそれには同意見だ。できることならば」
何かを言おうとする。だが。
「いや」
それを止めた。何か考えあるかのように。
「言うまい、それは」
「何かと複雑だな。貴様も」
「それはどうでもいいことだ」
再度攻撃に移りながら述べる。
「貴殿にとってはな。だが」
また攻撃を左にかわされて言う。
「やるな。俺の攻撃をここまでかわすとは」
「私でなければ死んでいる」
ハマーンは余裕の笑みを浮かべたがその動きはそうではなかった。紙一重だったのだ。
「貴様も。やるものだ」
「ふむ。どうやらそれが君達の実力のようだな」
ロフはまた攻撃をかわされたところでそう述べた。
「かなりのものだ。それはわかった」
「それでどうするのだ?」
「今日のところは退こう」
こう返す。
「また会おう。だが今度はより多くの戦力を用意しておく」
「楽しみにしておく」
ハマーンもその言葉に笑みで返す。戦いを楽しむ笑みだった。
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