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第八話 混沌の大地その三
「さもなければ軍が総崩れになる」
「しかしそれは」
 部下達は彼を気遣うようにして声をかけた。
「隊長に危険が」
「そうです、ですから」
「馬鹿を言え」
 だが彼はこう言って部下達の制止を振り切るのだった。そのうえでまた言う。
「ここは何処だ」
「はっ!?」
「ここは何処だと聞いている」
 あらためて彼等に問うた。
「何処なのだ?」
「戦場です」
 部下の一人が答えた。
「戦場であります」
「そうだ。ならばわかるな」
 そこまで聞いてまた答えた。
「俺が言いたいことは」
「行かれるのですか。あくまで」
「心配するな。足止めだ」
 また部下達に告げた。
「わかったな。では行って来る」
「それならば私も」
「私もです」
 彼のその動きを見て部下達も次々に名乗りをあげてきた。
「隊長一人では行かせません」
「そうです、ですから」
「御前達、いいのか」
 彼は自分と共に行こうとする部下達を見て驚きの声をあげた。
「敵はかなりの強さだというのに」
「ですから隊長」
「ここは戦場ではないですか」
 今度は彼等がこう述べた。笑みを浮かべながら。
「違いますか?」
「そういうことですよ」
「・・・・・・いいのだな」
 彼はあらためて部下達に問うた。
「それでも」
「はい」
「御供させて頂きます」
「わかった」
 そこまで言われては彼も退けるわけにはいかなかった。彼等を受け入れる。
「では行くぞ。いいな」
「はいっ」
「行きましょう、隊長」
 部下達も彼に続く。これを機に敵の動きが一変したのだった。それはロンド=ベルからもわかった。
「敵が変わった!?」
 イーグルがNSXの艦橋で呟いた。
「動きが急によくなりましたね」
「そうだな」
 彼の言葉にジェオが頷く。
「どういうことだ、これは」
「こっちにも来たよ」
 ザズが報告する。
「かなり動きがいい。これは」
「こちらにも来ました」
 童夢からサンユンが言ってきた。
「速いです、これは」
「アスカ様御注意を」
「わかっておる」
 アスカはシャンアンに答えた。
「油断はできぬ。強敵じゃ」
「その通りです」
「姉様、左右からだ」
「あらあら」
 鋭くなるタータに対してタトラは相変わらずであった。
「困ったわ。どうしましょう」
「ジンを出す!」
 タータはすぐに決断を下した。
「それでいいな、姉様」
「まあ、タータったら元気ね」
 ここでもやはりいつもの様子であった。
「もうジンを出すなんて」
「敵が来てるんや!そんなこと言ってる場合ちゃう!」
「わかったわ。それじゃあ」
「やるで!」
 何だかんだで動きを合わせる二人だった。三隻の戦艦もそれぞれ攻撃を開始した。
 戦闘は熾烈なものになった。ロンド=ベルも動きが止まった。
「くっ、思ったよりやる」
 クワトロはサザビーからファンネルを放ちながら述べた。
「敵の指揮がいいな。指揮官は」
「あの青いマシンのようです」
 ギュネイが彼に報告する。見れば敵軍の中央に青いマシンがある。
「あれが的確な指示を出していて」
「ふむ、あれか」
 クワトロはその青いマシンを見て呟いた。
「あのマシンか」
「俺が仕掛けます」
 ギュネイは自分から名乗りを挙げた。
「あいつさえ倒せば」
「いや、待て」
 だがクワトロはそんな彼を制止した。
「何か?」
「ギュネイは今は他の敵を頼む」
「何かありますか?」
「右に来ているぞ」
 クワトロはギュネイの右手に顔を向けて言った。
「うっ」
「そちらを頼む。クェスも行かせる」
「わかりました。それじゃあ」
「あの青いマシンは私が相手をするか」
 クワトロは自分が向かおうとした。しかしそれはならなかった。
「待て」
「誰だ?」
 今度はクワトロが呼び止められた。
「私だ」
「ハマーン」
「あの青いマシンには私が向かおう」
 ハマーンのキュベレイが来た。優雅に前に進んで言う。
「いいな、それで」
「頼めるか?」
 クワトロは静かに笑ってハマーンに問うた。
「手強いようだな」
「御前やジュドー坊や程ではあるまい」
 ハマーンも静かに笑って言葉を返した。
「違うか?」
「ふふふ、買い被られたものだな」
「買ってやっていると言ってもらおう」
 ハマーンは笑ったまま彼に言葉を返した。
「御前という男をな」
「そうか。では喜んで買ってもらおう」
「だが。そろそろ私も本来の相手が欲しいものだな」
 さりげなくとんでもない言葉を口にする。
「どうやら御前ではないようだしな」
「さて、誰かな」
「それはおいおい見つける」
 かなり難しいことであった。ハマーンは自覚していないようだが。
「私もまだ若いのだしな」
「三十五だったか?」
 シンが横から戦闘を続けながら余計なことを言う。
「もうおばさんだったな」
「・・・・・・面白い言葉だ」
 笑いが氷の微笑になっていた。皆その笑みを見て戦慄を覚える。
「実にな。それでは覚悟はできているな」
「またシンは」
 アキトはシンの余計な言葉に溜息をつく。
「余計なことを言って」
「死ぬな、また」
 京四郎も言う。
「やれやれだ」
「今はその命置いておこう」
 しかしハマーンは今は引き下がった。
「今はな。だが」
「な、何だよその言葉」
 とりあえずは死地を脱したシンはハマーンのその言葉に不気味なものを感じながら言う。
「何かあるっていうのかよ」
「あるよな、絶対」
「なあ」
 スティングとアウルが話をする。
「後でな」
「ご愁傷様、シン」
「御前等まで」
「シン、これで死ぬの何回目?」
 ステラもぶしつけにシンに問う。
「ステラもう死ぬって言葉怖くないけれど」
「俺は死なねえ!」
 あまりにも言われるのでこう反論した。
「誰に何をされてもな!」
「それはわかったから少年」
 そのシンを何度か殺しているナタルがシンに言ってきた。
「何だ!?」
「早く前の敵を何とかするんだ」
「おっと、それか」
 言われてようやく気付く。
「そうだった。今戦闘中だったんだ」
「別に君がどうなろうと知ったことではないが」
 ナタルも何気にシンに言う。
「敵は倒せ。いいな」
「了解、バジルール少佐」
「不合格だな」
 そうシンに告げる。
「不合格って!?」
「単に少佐と呼ぶだけでは駄目ということだ」
「じゃあおばさんか?」
「・・・・・・やはり君は死ぬべき運命のようだな」
 その声が氷の様に凍った。
「まあいい。それは後にしてだ」
「早くやっつけろっていうんだな?」
「そうだ。とにかく何とかし給え」
 そうシンに告げる。
「わかったな」
「了解。じゃあやるか」
「行くぞシン」
 アスランが横から言う。
「今は激戦なんだ。御前がいないと困る」
「済まない、アスラン」
「礼はいい。とにかく頼むぞ」
「ああわかった」
「しかし」
 アスランはシンを急かした後でふうと溜息をついた。
「どうにもこうにも。シンといいカガリといい」
「苦労が多いみたいだね」
「そうだな。困ったことだ」
 アスランはそうキラに返す。
「何で俺は。おかげで」
「その話はしない方がいいよ」
 キラはアスランが髪の毛に話を持っていこうとしたところで制止した。
「自分が傷つくだけだから」
「うう・・・・・・」
「とにかくアスランも前に出て」
 キラはフリーダムの照準を合わせる。
「援護は僕とレイでするから」
「ここは任せろ」
「済まないな、二人共」
 アスランは彼等に礼を述べた。
「おかげで助かる」
「うおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーっ!」
 その前ではもうシンが戦闘に入っていた。その抜群の戦闘センスで次々と敵軍を倒していく。
「こんな奴等、俺にかかれば!」
「よし、今だ!」
 アスランもそれを見て動く。ジャスティスを突っ込ませる。
「カガリ、いいな!」
「ああ、もう出ている!」
 カガリはマユラ達を引き連れ既に敵の中に突入していた。彼女もシンも既にSEEDを発動させて群がる敵達を次々と屠っていたのだった。
 そこにやはり覚醒したアスランが入ると無敵だった。キラの援護もあり敵の陣に大きな穴を開けたのだった。
「よし」
 ハマーンもそれを見ていた。その穴に素早く入る。
「今は礼を言おう、少年」
 そうシンに告げる。
「これであの青いマシンの相手をできるというものだ」
「ハマーン様」
 後ろにいるマシュマーが彼女に声をかけてきた。
「どうした、マシュマー」
「私も御供します」
 そう言って後ろを引き受ける。他にはキャラとゴットンもいる。
「楽しいねえ、これはまた」
 キャラは戦場の中で笑っていた。
「こんなに敵がいるとさ!熱くなるかいがあるよ!」
「ひ、ひぇええええええ!」
 ゴットンは怯えながらも何とか戦っていた。
「マシュマー様、敵が滅茶苦茶強いですよ」
「慌てるな、ゴットン」
 マシュマーはそのゴットンに対して告げた。
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