第八話 混沌の大地その一
混沌の大地
「何ィ!?」
戦艦の艦橋で誰かが声をあげていた。
「それは本当のことか」
「はい」
報告する者が彼に答える。
「あいつまで来るというのか」
「どうやら帝は本気であられるようです」
また報告される。
「それでこのようになりました」
「帝国の方面軍が二つ」
銀の服の男が呟いた。
「こんなことはかつてなかったことだ」
「確かに」
声が男の言葉に頷く。
「帝国の長い歴史にあっても」
「全ての艦隊を使うのだな?」
銀の男はまた声に問うた。
「この外宇宙方面軍の七つの艦隊全てを」
「はい」
声はまた頷いた。
「それも既に申し上げた通りです」
「あの男の軍もか」
「おそらくは」
そちらにも答える。
「既に再編成を終えた七個艦隊で向かっているそうです」
「俺の軍とあいつの軍を入れて十四個艦隊」
艦隊の数について言及された。
「それだけの戦力を動員してまであの星を倒す理由がわからないが」
「宰相もそれに同意されています」
「父上もか」
宰相と聞いて男の顔が微妙に動いた。
「父上もそれを御存知なのか」
「はい。宰相様も指示されておられます」
「そうか。ならいい」
彼はそこまで聞いて納得したようであった。
「俺も行こう。全軍に伝えよ」
「ハッ」
影が答える。
「これより我が軍は全戦力をあげてあの星に向かうとな。キャリコ」
「はい」
影は名前を呼ばれ応えた。
「御前とスペクトラは先行しろ」
「先にですか」
「そうだ。ゴラー=ゴレムの精鋭を連れてだ」
そう指示を出した。
「いいな。あとグラドスの奴等に」
「ゲートを開かせるのですね」
「一気に叩き潰す」
男は言い切った。
「地球の下等な生物共は全て。いいな」
「了解しました。それでは」
「行け。報告は一つしか聞かないぞ」
「成功を」
彼等は動きはじめた。また戦いの役者達が動きはじめていたのであった。
ロンド=ベルはシアトルに向かっていた。その途中で彼等はあれこれと話をしていた。
「やはりおかしいな」
ニーが言う。
「こうも次から次にインスペクターの戦力が現われるなんて。しかもかなりの数だ」
「それだけの勢力なのかしら」
キーンが彼にそう問うた。
「インスペクターって」
「いや、それはない筈だよ」
レッシィがキーンに答える。
「インスペクターは元々軍事力は大したことはないんだ。バルマーに比べたらね」
「そうなんだ」
「バルマーが多過ぎるっていうのもあるけれどね。あそこまでじゃないんだ」
「じゃああれか」
トッドはそれを聞いて延べた。
「一度にこんなに二つも大軍は送り込めないっていうんだな」
「そうさ。ただ」
「ただ?」
皆レッシィの次の言葉に注目する。
「もう一つ勢力があるんだ」
「もう一つ」
「それは一体」
「ゲストさ」
「ゲスト!?」
「彼等か」
ゲストという名前を聞いてエイジの顔が変わった。
「インスペクターと同じ星系の勢力だったな」
「そうさ。奴等は同じ兵器を使ってるしね。ひょっとしたらね」
「そのゲストって組織は何なんだ?」
ショウはレッシィにそれを尋ねた。
「インスペクターと同じ星系の知的生命体で兵器も同じだというのは聞いたけれど」
「政治的な理由で対立しているのさ」
レッシィはそう説明した。
「そういえばわかるかい?」
「ああ、それなら」
ショウも他の面々もこう言われて納得して頷いた。
「そう言われればね」
「地球にもよくあるか」
「まあそういうことさ。けれどゲストはちょっとまずいね」
「まずい?」
「どうして」
「奴等の指揮官がまずいんだ」
レッシィは顔を曇らせてそう延べた。
「ティニクエット=ゼゼーナンっていうんだけれどね。これが酷い奴で」
「酷いって?」
マーベルが彼女に問う。
「どんな感じからしら」
「あれなのか?」
一矢もレッシィに問う。
「あの三輪みたいな奴なのか?」
「偏見はあそこまでいってるね」
レッシィは顔を顰めさせて一矢に答えた。その整った顔が歪んでいる。
「最低の奴さ。自分達以外は人間と見なしちゃいない」
「そうか、やはりな」
「何かそういう奴って何処にでもいるわね」
アムが顔を顰めさせて言った。
「本当に」
「そうだな。残念な話だ」
ダバも顔を曇らせていた。
「何処にでもいる。ポセイダルのような存在も」
「しかしよ。そんなのが地球に来るってよ」
キャオがここで言った。
「またまた話がややこしくなってくるぜ」
「そういえばあれよね」
アムがレッシィに言う。
「何だ?」
「バルマーは一般市民を狙う指揮官とそうでないのの差が激しいわよね」
「言われてみればそうだね」
レッシィもそれに頷く。
「あいつだったかな。ユーゼス」
「ああ、そいつさ」
リュウセイの顔が険しくなる。
「とんでもねえ奴だったぜ。最後はラオデキアに粛清されたけれどな」
「地球人の命を何とも思っていなかったんだ」
「そうかと思えば君のお兄さんは」
「うん」
タケルはダバの言葉に頷いた。
「奇麗な戦争をするね」
「兄さんは本当は優しい人なんだ」
それは彼が最もよくわかっていた。
「本当は戦争なんか」
「そうか」
「その兄さんが関係ない人達を巻き込む筈はない。俺にはわかるんだ」
「いいね、その絆」
レッシィはタケルのその言葉を聞いて優しく笑った。
「あたしにはそういうものがないから。羨ましいよ」
「何言ってるの、レッシィ」
横からクェスが言ってきた。
「クェス」
「あんたは友達が一杯いるじゃない」
「友達・・・・・・」
「あたしだってそうだし」
そう言って笑う。
「ヒギンスさんだってリリスだってチャムだって。大勢いるでしょ」
「それもそうか」
言われてはじめて気付く。
「それ考えるとあたしも友達多いね」
「そういうこと」
「何か俺も友達多いな」
一矢も言った。
「どういうわけか気の合う奴が多いよ、本当に」
「何か羨ましいな、それって」
それを聞いたアラドが言う。
「ゼオラはルネさんと気が合うみたいだけれど俺はな」
「そういえばいねえな」
リュウセイもそれに気付く。
「御前と似た奴って」
「リュウセイは結構いるよな」
「まあサブロウタさんとかラッセさんとかな」
彼も意外と似た者が多い。
「ライもアヤもレビも多いしな」
「ちぇっ、いいよな」
「私もいないわよ」
アクアも来た。
「ヒューゴには金竜さんがいるのに。寂しいわよ」
「それ言うとあれだぜ」
横からそのサブロウタが言う。
「モコナとプリメーラが似てるじゃないか、あんたに」
「人間じゃないじゃない」
「けれどいいじゃねえか。ちゃんといるんだしな」
「言われてみればそうね」
何か納得した。
「じゃあモコナ達と友達になりたいわ。いいかしら」
「ぷう、ぷう」
「私ならいいわよ」
「よし、声が似た者同士仲良くやりましょう」
「何はともあれだ」
ライが話を戻しにかかった。
「バルマーも本格的に来るだろう。だが今は」
「地上に対して何も有効な手が打てないわね」
アヤが溜息混じりに言う。
「早いうちに何とかしたいのに」
「敵のことがまだ殆どわかっていません」
ライはそうアヤに告げる。
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