第五話 百鬼帝国その四
百鬼帝国との戦いが終わるとロンド=ベルはまずは退いた。そこからまた話に入った。
「また新たな敵か」
最初に口を開いたのは大文字であった。重厚な声が大空魔竜のブリーフィングルームの中に響く。
「それも地下の勢力だ」
「地下ですか」
それを聞いてタケルが声をあげた。
「またしても。バルマーがいるっていうのに」
「敵がまた一つ増えたってわけだね」
次に声をあげたのは万丈であった。タケルが深刻な顔なのに対して彼はどうも軽さと穏やかさが見える表情であった。それは余裕であろうかそれとも万丈の性格なのだろうか。
「まあこれも想定していたさ」
「想定していたのか」
ナオトがその万丈に対して問うた。
「新たな敵が出ることも」
「何となくだけれどね。勘で」
「勘、ねえ」
ミドリがそれを聞いて首を傾げさせた。
「万丈さんって勘も鋭いのよね」
「そういえばそうだよな」
それにサンシローが頷く。
「外れたことはないよな」
「まあ何となくわかるんだよね」
万丈はまたにこりと笑って述べた。
「あくまで何となくだけれど」
「じゃあ聞きたいんだけれどよ」
今度はヤマガタケが万丈に問うた。
「また新しい敵が出るのか?あの鬼以外にも」
「多分ね」
万丈はそのヤマガタケにも答えた。
「一体どんな相手かはわからないけれど」
「そうですか。何かまた地底の勢力かも知れないですね」
「そうだな」
リーがブンタの言葉に頷いた。
「あんな勢力がまだ残っていたんだ。ひょっとするとな」
「しかしだ。ここで問題がある」
ピートが一同に対して述べてきた。
「問題?」
「そうだ。どの敵を優先的に相手にするかだ」
「そうだな、それだ」
サコンがピートのその言葉に同意して頷いてみせてきた。
「バルマーもいればそうした勢力もある。どちらを先に叩くかだが」
「どちらにするか、か」
大文字はサコンのその言葉を聞いて腕を組んだ。
「バルマーか百鬼帝国か」
「それだったらまずは中を相手にした方がいい」
鉄也がそう提案してきた。
「中?」
「そうだ。バルマーは外から来る。しかも今は戦力を退けている」
「しかし百鬼帝国は違う、と」
大介が鉄也に対して言った。
「そういうことだね、鉄也君」
「そうです、まずは中にいる相手を優先的に倒してそれから万全の態勢でバルマーに挑みましょう。内憂を地球に抱えたままじゃあまりにも危険です」
「戦略ってやつだよな、それって」
甲児がそこまで聞いて言った。
「そうだ、甲児君。今はそれでいこう」
「何か俺そういうのよくわからないけれどよ」
甲児は鉄也にそう前置きしたうえで述べてきた。
「いいんじゃねえの?とにかく先にぶん殴る相手決めるのはよ」
「何か甲児の言い方ってあれよね」
マリアがそれを聞いて口を開いてきた。
「喧嘩みたい」
「だってそうじゃねえかよ」
甲児はそのマリアに対して反論した。
「喧嘩じゃねえか、こういうのって」
「まあ確かに」
「ちょっとマリア」
同意して頷くマリアをジュンが嗜める。
「そこで頷いたら」
「まあマリアらしいけれどね」
ひかるは笑ってそんなマリアを見ている。
「そういうところが」
「あたしもそうだしね。とにかく目の前にいる奴をぶっ飛ばさないと」
「マリア、幾ら何でもそんな表現は」
今度は兄が顔を顰めて嗜めてきた。
「まずいと思うんだが」
「いいじゃない兄さん、どっちにしろ戦うんでしょ?」
「確かにそれはそうだが」
「だったらいいじゃない。とにかく先に鬼ね」
マリアはそう鉄也に聞く。
「鬼退治と洒落込みましょうよ」
「よし、それなら決まりだわさ」
ボスもそれを聞いて言う。
「派手に暴れるわよ〜〜〜ん」
「暴れるのはいいですけれどボス」
ボスにムチャが声をかける。
「何だわさ」
「おいら達相手のこと何も知らないでやんすよ」
「何っ!?」
「そういえばそうですよ」
今度はヌケが言った。
「鬼ってだけで何にも」
「うっ、そういえば」
「そうだな、二人の言う通りだ」
隼人がヌケとムチャの言葉に頷いてきた。
「俺達は相手のことを何も知らない。ここは情報収集も必要だな」
「といってもどうするんだよ」
その隼人に弁慶が問う。
「何処にいるかさえわからない相手だってのによ」
「そうだよな。それでどうやっとよ」
武蔵も言う。
「情報を集めればいいんだよ」
「いや、それならあてがある」
ここで宙が言った。
「宙」
「あてがあるというと」
「父さんだ」
宙はそう甲児と竜馬に答えた。
「親父さんがかよ」
「俺の父さんは邪魔大王国のことも知っていた。若しかしたらあいつ等のことも」
「知っているっていうんだな」
「ひょっとしたらな」
そう一同に述べる。
「少なくとも聞いてみる価値はある」
「そうか」
「じゃあそれで決まりだな」
一同は宙のその言葉を聞いて述べた。
「博士、それで」
「うむ」
そのうえで大文字に顔を向ける。大文字もそれに応えた。
「では諸君、次の行く先が決まった」
「はい」
皆大文字の言葉に頷く。
「一旦司馬博士のところに行く。そして彼等のことを聞くことにしよう」
「了解」
「それじゃあすぐにも」
皆頷く。これで方針は決まった。
「全軍そちらへ」
「百鬼帝国に警戒しながら」
「しかし。あれだな」
宙がここで言った。
「どうしたんだ?」
「いや、何か嫌な予感がするんだ」
そう皆に語る。
「嫌な予感?」
「俺の思い過ごしだと思うんだがな。こうも次から次に新しい敵が出て来るとまた」
「今度も出て来るというのか」
「ああ。まさかとは思うけれどな」
今度はコウに言った。
「闇の帝王みたいなのがな」
「それはあるかも知れないな」
万丈が宙のその言葉に頷いた。
「万丈、御前もそう思うのか」
「僕も勘だけれどね。そんな気は確かにする。ひょっとしたら」
「おいおい、またここで訳わかんねえ敵が出て来るのかよ」
二人の言葉を聞いて勝平が声をあげる。
「何か話がややこしくなってくるぜ。またよ」
「ややこしくなるのはいつもでしょ」
勝平に恵子が言った。
「勝平はどっちかというとそっちの方がいい癖に」
「おい、そりゃ何だよ」
思わずその恵子に文句をつける。
「それじゃあ俺が揉め事大好きみたいじゃねえか。失礼な奴だな」
「その通りだろ」
今度は宇宙太が言ってきた。
「どっちにしろ戦わなくちゃいけないんだ。それだけのことだ」
「それもそうか。じゃあ俺はこのまま前に出て来る連中をぶっ潰してりゃいいんだな」
「それはまた単純過ぎるけれど。まあそうね」
「御前はそうやってろ。その方が俺達も楽だ」
「ちぇっ、何か腑に落ちない言われ方だな」
勝平はここで無理に納得しようとした。ところがそうは話がいかなかった。
「けれど。そうはいかないかも知れない」
言ったのはエイジだった。
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