第四話 竜魔帝王その一
竜魔帝王
「ふむ、そんなところか」
「はい」
地下の王の間にて。フローラは竜魔帝王と話をしていた。
「敵の戦力は思った以上のものでした」
「それはわかっている」
帝王はその言葉に応える。
「奴等がデータ異常の戦力を持っているのはな」
「左様でしたか」
「それでだ」
帝王はさらに言う。
「今後のことだが」
「はっ」
「バルマー帝国とは融和策を採ることはない」
「宜しいのですか?」
フローラはそれを聞いて帝王に問うた。
「バルマーの勢力はかなりのものですが」
「よい」
しかし帝王の言葉に迷いはなかった。
「どのみちあの者達は我等とは相容れぬ存在。精々ロンド=ベル、人間共と潰し合い、滅び合ってくれるにこしたことはないのだからな」
「わかりました。それでは」
「それはどうやら新しく現われた異星人の勢力についても同じだ」
「確かインスペクターだったでしょうか」
フローラは考えながらまた問うた。
「確か」
「うむ、奴等だ」
帝王も彼女に言う。
「奴等もまた結構な力を持っているな」
「では彼等もロンド=ベルと争ってもらい」
「そうだ。しかしだ」
「しかし?」
「もう一つの地底の勢力が気になるところだ」
「そのもう一つの勢力ですか」
フローラももう一つの勢力の存在を感じだしていた。それが彼女の目を顰めさせていた。
「それは一体」
「わかるのはまだだ」
しかし帝王にも彼等の存在は完全にはわかってはいなかった。
「もう少し待て、いいな」
「わかりました。それでは」
「今はこちらも地上への橋頭堡を築く」
「はい」
フローラはその言葉に応える。
「それでは」
「ただしだ」
だが彼はまた言う。
「場所は選びたいのだが」
「それならば帝王よ」
フローラがここで言った。
「何処かいい場所があるのか
「そうです、格好の場所が」
彼女は自信に満ちた声で述べる。
「金沢ではどうでしょうか」
「あの街か」
北陸きっての街である。また地下の道が竜魔帝国にも直接つながっている。彼等にしてみればまさに絶好の街であった。フローラはそこを候補地に出してきたのだ。
「如何でしょうか」
また帝王に問う。
「あの街では」
「よい」
そして帝王はその言葉に頷く。
「ではそちらに兵を進めよう」
「それでは私が」
フローラは出撃しようとする。しかし竜魔帝王がそれを止めたのだった。
「待て」
「何か」
「御前が行く必要はない」
こう言ってだ。
「それは何故でしょうか」
「御前には他にやってもらいたいことがあるのだ」
「もう一つの地底勢力への調査でしょうか」
「その通りだ」
フローラに言った。
「よいな。金沢に関しては然るべき規模の勢力を派遣しておく」
「わかりました。ではそのように」
「そうだ。では頼むぞ」
「はい」
フローラはあらためて彼に応える。
「敵となるか味方となるかわからないのですから」
「鬼だというのはわかっている」
帝王は思わせぶりに述べてきた。
「鬼!?」
「そうだ、奴等は鬼だ」
こう言うのである。
「鬼の一族なのだ」
「鬼、ですか」
「そうだ。詳しいメンバー等を調べておくのだ」
彼はそうフローラに命じる。
「わかったな」
「はっ、それでは」
「うむ」
こうして竜魔帝王の次の作戦が決まった。彼等は地下で全てを決めていた。それはロンド=ベルには全くわからないことであった。彼等は地下にはいないのだから。
その頃ロンド=ベルはトウマとミナキの歓迎パーティーを開いた後だった。しかし彼等の多くはかなり浮かない顔をしており何人かは青い顔をしていた。
「まさかなあ」
「そうですね」
キースにボーマンが応えていた。
「彼女もああだったとは」
「何かお約束ではあるな」
「大丈夫、二人共」
そこにセランが来て二人に尋ねる。
「かなり辛そうだけれど」
「ああ、俺は大丈夫だ」
キースはそう彼女に返す。
「何とかな」
「そうですか。兄さんは?」
「僕も一応はな」
あまりそうは見えない顔で妹に述べる。
「大丈夫だ。しかし」
「ミナキさんの料理も地雷でしたね」
「ああ、それもとんでもないレベルのな」
「何か意識が遠くなったぜ」
リュウセイが言う。
「あんなもん食ったらよ。流石に俺でも」
「リュウセイサンドイッチ一切れだけだったよね」
アヤがその彼に問うた。
「確か」
「一切れでも劇薬は劇薬だぜ」
しかし彼はこう返す。
「そんなもん食ったらよお。やっぱり」
「全くだ」
ライも沈痛な顔で言うのだった。
「マリュー艦長のそれに匹敵した」
「大丈夫なのはあの三人だけか」
レビはオルガ、クロト、シャニの三人を見ていた。見れば彼等はいつも通り平気な顔をしてミナキの料理を食べている。
「おお、こりゃうめえぜ」
「そうだね」
「・・・・・・いける」
それぞれ手掴みで乱暴に口の中に入れての言葉であった。
「あんた可愛いだけじゃねえんだな」
「料理の才能もあるよ」
「そうだ」
「有り難うございます」
ミナキは三人のその言葉に笑顔になる。
「じゃあどんどん食べて下さい。まだまだありますんで」
「おう、じゃあな」
三人はそのままミナキの料理を食べ続ける。周りの皆はそれを見て顔を顰めさせていた。やはりここもいつものパターンであった。
「何かあの三人だけは何があっても死にそうにないわね」
アスカが三人を見て言う。
「一体どういう胃袋してるのよ」
「そういえばアスカの料理も美味しいって食べてたわよね」
フレイがアスカに尋ねてきた。
「確か」
「ええ、ドイツ料理をね」
実は彼女は料理もできる。
「何か失敗したんだけれど平気で食べてたわよ」
「やっぱりどうかしてるわね」
フレイはそれを聞いて言う。
「あんたの料理ってそんなに悪くはないけれど」
「あたしだって一応女の子だし」
何故かここでバツの悪い顔を見せる。
「そりゃあまあ。こういうことだって」
「アスカちゃん女の子なんだな」
光はそれを聞いて彼女に声をかけてきた。
「料理も上手だし。そういうところが」
「まあね。食べるのは彼氏じゃなくて仲間・・・・・・まあそれはそれでいいわ」
「アスカさんのバームクーヘン美味しいですしね」
ウッソはシンと違う。普通に言ってきた。
「また今度御願いしますね」
「わかったわ。けれどここでバームクーヘン作ってもねえ」
しかしアスカは今度は難しい顔になってきた。
「紅茶やケーキじゃなくてワインとかと一緒に、だしね」
「ここ皆お酒飲むのね」
「最初は驚きましたわ」
海と風はこう言った。
「未成年じゃないのかって」
「けれどまあ。いいのですね」
「ううん、そういうのはかなりどうでもいいね」
シンジが二人に応える。
「僕だって最近かなり飲んでるし」
「あんた最近飲み過ぎよ」
アスカがすかさず彼に言うのだった。
「うっ」
「それもかなり」
「何でかな、最近お酒が美味しいんだ」
言い訳になっていない言い訳を述べる。
「それでついつい」
「それはそれでいいけれどあれよ」
アスカはまた顔を顰めさせる。
「飲み過ぎもよくないのよ」
「そういえばあんたも結構そうじゃないの?」
「うっ」
フレイの言葉はアスカにかかっていた。アスカはそれを受けてバツの悪い顔になる。
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