挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ハイスペック過ぎる妹を守るため、死霊の島で明日に向かってゴールをめざす 作者:春風小夏

第5章 四凶

69/100

scene 68 四凶 其の壱 饕餮⑤

 僕は走った。

 転がるようにあずみの足元に辿りつくと、真下から巨大化した妹を見上げた。

 あずみはがっくりと大地に膝をついていた。

 あずみの身長はおそらく5メートルを超えているのだろうが、今は地面に跪いているため、ちょうど僕の目の高さのところに、その釣り鐘型にふくらんだふたつの乳房がくる格好になっている。

 巨大化してすらなお、あずみの乳房は瑞々しく美しかった。

 だが、痛々しいことに、今はその肌を真っ赤な血が何本も糸を引いて伝っている。

 あずみは体勢を崩しながらも、がっしりと両腕で怪物の胴を抱え、その前進を阻止していた。

 その上に饕餮の巨体が、のしかかるようにして覆いかぶさっている。

 剣歯虎の口の奥から覗く青い鬼の顔が、憎々しげに僕を睨んだ。

 疣に覆われた肌。

 飛び出した目玉。

 耳まで裂けた獰猛な口。

 見るからに醜悪なご面相である。

 それにはかまわず、

「あずみ。聞こえるか?」

 思いきって、声をかけてみた。

 怪物の鼻息がかかるほどの近さだったが、不思議と怖くはなかった。

 饕餮の2本の牙を肩に突き立てたまま、のろのろとあずみがこうべをめぐらせた。

「お兄、ちゃん…?」

 弱々しい声。

 唇を半ば開け、苦しそうに肩で息をしている。

「今から、俺の言う通りにやってみるんだ。饕餮の腋の下、あの袋みたいなもの、見えるか?」

 饕餮が日本語を解するとしたら、相手の耳に届く範囲で戦略を口にしてしまうというのは、あまりにも無謀な試みと言うべきかもしれないが、今はとにかく試してみるしかなかった。

「う、うん」

 うなずくあずみ。

「なんとかして、あれを破れ。おそらくその中に目玉があるはずだ。そいつがこの怪物の弱点なんだ」

「わきの下の目だね」

 あずみが少し笑った。

「いいよ。やってみる」

「でも、たぶん、バリアみたいなもので身体を守ってるから、まず先にそれを解除しなきゃならない」

「うん、わかった」

 もう一度、あずみがうなずいた。

 わかった?

 僕は一瞬、呆気にとられた。

 とりあえず言ってみただけなのだが、バリアだか結界だかの解除の仕方は、藤野にも光にもわからないらしいのだ。

 それが、あずみにどうわかったというのだろう?

 考えてみれば、矛盾した話だった。

 腋の下の袋を破壊し、目玉を白虎の矢で打ち抜くには、まずそのバリアを破らなければならないのである。

 もちろん白虎の矢自体にはバリアを破る力があるのかもしれないが、肝心の目玉に当たらなければ意味がない。

 バリアを破るには、白虎の矢が必要である。

 が、矢を正確に目玉に当てるには、先にバリアを破っておかねばならない。

 まるで、鶏が先か卵が先か、と堂々巡りしているようなものだった。

 僕は今頃になってその矛盾に気づき、頭を抱えたくなる思いに苛まれた。

 ここは、あずみの「わかった」に賭けるしかないか…。

 諦め半分にそう考えた時だった。

「でも、その前に、お兄ちゃん、覚えてるかな」

 なんだか、妙にしみじみとした口調であずみが言った。

「え?」

 僕はバレーボールより大きい乳房越しに、あずみの顔を見上げた。

 身体に比例して巨大化したあずみの顏は、2倍ほどに大きくなってもなお、驚異的に可愛かった。

 4Kテレビで見ると、アイドルの顔が意外に吹き出物だらけで汚なかったりして幻滅することがたまにある。

 でも、あずみに限って言えば、それはなかった。

 きめ細かな肌は元の通りだし、目尻にも口元にも皺一本ない。

「いつか言ったでしょ? あずみは、お兄ちゃんに触られると、強くなるんだって」

 ふいごのような饕餮の鼻息に負けじと、声を張り上げてあずみが続けた。

「あ、ああ」

 僕は思い出した。

 ゆうべ、風呂から出た後。

 僕の部屋にやってきたあずみは、裸同然の格好で抱きついてくると、確かにそんなことを言ったのだ。

 お兄ちゃんにここ触られると、あずみ、力がわいてくるんだ。

 だからこれからは、戦う前に必ず、ここ触ってほしいの…。

 僕はあずみの顏から、その手前に聳えるロケットのようなふたつの乳房に視線を移した。

「だから今、試してみてくれないかな」

 はにかんだように頬を赤らめ、あずみが言う。

「そうすれば、あずみ、きっとやれると思うの」

「そ、そうなのか」

 僕はたじろいだ。

 饕餮の目の前で、あずみのおっぱいに、触る…?

 ある意味シュールな提案である。

 しかし、やるしかなかった。

「わかった」

 僕は覚悟を決めると、あずみの前に回った。

 すぐ後ろが怪物の口だから、正直スリル満点である。

 生臭い息が、直接背中にシュウシュウと吹きつけてくるのだ。

 目と鼻の先に、つんと尖った乳首がある。

 大きかった。

 乳首というと、乳輪の部分も合わせて多くが茶褐色をしているものだが、あずみのは違った。

 茶褐色というより、ピンク色に近いのだ。

 先がぷっくりと膨れていて、とても可愛らしい。

「お願い。じらさないで」

 尚も僕が躊躇っていると、悩ましげな声が降ってきた。

「あずみ、ずっと待ってたんだよ。お兄ちゃんが、あずみのこと、触ってくれるの」

 そ、そんなこといったって。

 瞬間湯沸かし器のスイッチを入れたように、突然顔が興奮で熱くなるのがわかった。

「好きなの」

 あずみの声が震えた。

「どうしようもなく、お兄ちゃんのこと」

 ええい。

 そこまで言われては、もはやためらう理由もない。

 僕はケダモノに徹することに決めた。

 片手で左の乳首をつまみ、右の乳首にそっと唇を当てる。

 指で左の乳首をくりくり回しながら、舌で右の乳首の先端を、転がすように優しく舐めてやった。

「あんっ」

 あずみが喘いだ。

「お兄ちゃん、いいよ、もっと、もっと強く」

 言う通りにした。

「き、気持ち、いい」

 あずみの身体が震え始めた。

 そして…。













+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ