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ハイスペック過ぎる妹を守るため、死霊の島で明日に向かってゴールをめざす 作者:春風小夏
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scene 62 荒神アンダーグラウンド⑲

 準備完了?

 何のことだ?

 何の準備が完了したというのだろう?

 などと、いちいち考え込むのが僕の悪い癖なのだろう。

「さ、早く。おにいちゃん、行くよ」

 あずみがじれったそうに僕の手をつかんだ。

 が、その時にはすでに遅かった。

 振り返った僕らは、見た。

 あぜ道の両側からゾンビどもが我も我もとばかりに這いあがってくる。

「ほら、そこ、邪魔」

 あずみの前蹴りが炸裂し、頭がふたつ吹き飛んだ。

 スカートが腰のあたりまで舞い上がり、真っ白なパンティにつつまれた下半身が丸見えになる。

 そのスカートが元の位置に戻る暇もなく、今度は左足を軸にして右足を一旋させた。

 白鳥の湖を舞うバレリーナ。

 というより、あずみはむしろ人間芝刈り機だった。

 リーチの長い回し蹴りが、あっという間に4,5人のゾンビの首を叩き折った。

 だが、敵は数にものを言わせ、あくまでも僕らを足止めするつもりらしい。

 先のほうであぜ道に這いあがったゾンビどもが、両腕を前に突き出す例のスタイルで、身体を左右に振りながらわらわらとこっちに向かってくる。

「急ぐだべ! お化け蝸牛が!」

 背後でサトが叫んだ。

 振り向かなくてもわかっていた。

 地面が揺れている。

 なんだかとてつもなく重いものが這いずるような、無気味な音が聞こえてくるのだ。

 つかみかかってきたゾンビの顎を、あずみの肘が砕く。

 拍子に胸が大きく弾んだ。

 倒れた奴の後ろから現れたもう一匹は、顎に強烈なアッパーカットを食らって打ち上げ花火のようにぶっ飛んだ。

 セーラー服の中で生き物のように跳ねまわる胸の膨らみに、僕の眼は釘付けになった。

 3匹目の腹に渾身のストレートが決まると、そいつが後方にひっくり返ったあおりを受け、ドミノ倒しにゾンビどもが左右に倒れていった。

「今だよ」

 あずみがふり向いて言った。

「う、うん」

 と返事をしてみたものの、僕はすっかり前かがみの姿勢になってしまっていた。

 いけないことだと、理性ではわかっている。

 不謹慎この上ないことくらいは、百も承知である。

 しかし、刺激が強すぎてすっかりstandup状態に陥ってしまったのだから、もう手の打ちようがないのだった。

 もぞもぞしている僕がよほど挙動不審に見えたのか、

「どうしたの? お兄ちゃん」

 不思議そうに小首をかしげてあずみが訊いてきた。

 セーラー服のリボンが緩み、胸元がはだけて、日に焼けていない白く深い谷間が覗いている。

 たわわな肉の房の先端で、ピンク色の部分が、こんにちは、とばかりに顔を出しかけている。

 スカートは片方がめくれ上がって腰に貼りついたままなので、パンティが半分以上見えていた。

 しかも首を傾げたあずみは、兄の僕が言うのもなんだが、むちゃくちゃ可愛いのだ。

 これですぐに走れというのは酷ではないだろうか。

 だからといって、待っていてもズボンの前がすぐに正常に戻るという保証はない。

 苦渋に顔をゆがめていると、

「あ」

 あずみは僕の身体に置きた異変にようやく気づいたようだった。

 股間のふくらみから僕の顔に視線を移し、

「ごめんね。感じちゃった?」

 小さく肩をすくめて舌を出す。

 そしてふふっと声を出さずに笑うと、

「ほんと、お兄ちゃんって正直なんだから」

 両手を伸ばしてふわりと抱きついてきた。

「だから大好きなんだよ、あずみ、お兄ちゃんのこと」

 柔らかくて温かい下腹部を、僕のふくらみにぐいぐい押しつけてきたからたまらない。

 無意識のうちに強く抱きしめた時、

「こら! そこ! 戦闘中にいちゃつかない!」

 光の怒声が飛んできて、

「やば」

 あずみが何事もなかったようにさっと跳び離れた。

 ただ右手だけは離さずに掴んでいて、

「じゃ、行こうか。お兄ちゃん」

 僕の手を引いて走り出す。

 ”あずみ無双”によって、一時的に道の上からはゾンビたちの姿は消えていた。

 僕は前かがみになったまま、あずみに引っ張られるままその一本道を駆けた。

 テントを張ったズボンの前が邪魔で仕方なかったが、恥ずかしがっている場合ではなさそうだ。

 道と道の交差点に立つ光の姿が見えてきた時である。

「そのハンカチの目印のところで、1メートルジャンプ!」

 両手をメガホン代わりにして、光が謎の言葉をかけてきた。

 前方に目を凝らすと、なるほど確かに地面の上に白いハンカチが落ちている。

「急いでくんろ!」

 背後からサト。

「でないとおら、食われちまうべ!」

 ずずずずず。

 地響きが近い。

 おそらくここで振り向けば、すぐそこにお化け蝸牛の顔を拝めるに違いない。

「アキラ君は、あずみちゃんが背負うか抱くかして。彼には無理って気がするから」

「了解!」

 相変らず信用がない。

 しかし光の言葉は正しくもあった。

 1メートルジャンプしろだって?

 そんなの無理に決まっている。

「お兄ちゃん、乗って」

 あずみは立ち止まって腰をかがめた。

 赤ん坊のように、というか、子泣き爺さながらにその背中に取りつく僕。

 あずみの髪は日向の匂いがし、耳の後ろからは少し酸っぱい汗の匂いがした。

 首に手を回すと、僕の耳元であずみが囁いた。

「今はまだおっぱい触らないでね。お兄ちゃんに障られると、あずみ、感じちゃうから」


















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