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ハイスペック過ぎる妹を守るため、死霊の島で明日に向かってゴールをめざす 作者:春風小夏
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scene 48 荒神アンダーグラウンド⑤

 さんさんと輝く夏の陽光の中、白茶けた舗装道路が白いガードレールに沿って伸びている。

 そのゆるやかにカーブしたガードレールのすぐ向こうは、真っ青な空を映した広大な海である。

 その海を右手に、舗装道路の真ん中を歩く僕らは、はっきりいってかなり異様な集団であるといえた。

 背中に日本刀を背負ったヤクザの親分のような藤野。

 同じく背中に矢羽をぎっしりつめこんだ籠を背負い、弓を肩に担いだアマチュアレスラーみたいなサト。

 相変らずカラス色のコートを着込み、両手に肘まである手甲を嵌めたサングラスの光。

 そしてさわやかなセーラー服に超ミニスカート、しかし両手には鋲の植わったナックル装備のあずみ。

 僕はといえば、S&Wがあまりにも重いので、とても予備弾倉ごとベルトに下げる気になれず、リュックに入れて肩に担いでいる。

 ほてった肌に海風が心地よかった。

 その風が、すぐ前を歩くあずみのスカートの裾を揺らしている。

 突き抜けるような夏空の下で見るあずみは、胸がきゅんとなるほど魅力的だった。

 可愛らしい顔立ちなのに、意志の強さを表した眼と口元。

 そして細い首の下の夏服は、健康的すぎる肢体の圧力に負けて、今にもはちきれそうだ。

 さらにミニスカートから時折覗くあの…。

「あのさ、あずみ」

 思い余って僕は声をかけた。

 もちろんほかのメンバーに聞かれないように、トーンを低くするのは忘れない。

「なあに?」

 足を止めてあずみがふり向いた。

 きょとんとした顔が、また抱きしめたくなるほど愛くるしい。

「おまえ、なんで戦いに行くって時に、生パンなの?」

 そうなのだ。

 出発以来ずっと気になっていたのだが、あずみのスカートが風に翻るたび覗くのは、どう見ても薄い白のビキニタイプのパンティなのである。

「これ?」

 よせばいいのに、あずみが両手でスカートをたくし上げた。

 ほどよい肉づきの太腿。

 そしてその間の神秘の部分が白日の下に晒された。

 飾り気がなく、肌が透けそうなくらい生地が薄いだけに、エッチな感じがたまらない。

「おい、こら。よせって」

 僕は狼狽した。

 かあっと頬が熱くなった。

「だってこのほうが、お兄ちゃん、喜ぶでしょ」

 そんな僕を軽く睨んで、あずみが言った。

「前に言ってたしゃない。ミニスカの下にスパッツとか穿くのは、人類への冒涜だって」

「だ、誰が?」

「お兄ちゃんに決まってるでしょ。そんなこというの」

「お、俺が、い、いつ?」

 記憶になかった。

 確かにそう思う。

 しかし、まともな人間なら、そんなこと女の子の前で口に出すはずがないだろう。

「あれは確か、1ヶ月前の雨の日曜日。一緒にテレビ見てたら、踊ってるアイドル見て、お兄ちゃん、そう嘆いてたもん」

「そ、そうなのか?」

 やっぱり言ったのだ…。

 僕は、人間の屑だったのか…?

 しかし、なんという記憶力のいいやつ。

 さすがマルデックの戦士である。

 自慢じゃないが、僕は前日の夜何を食べたかもすぐ忘れるタチだ。

「あずみはね、お兄ちゃんの言ったことは、ぜーんぶ覚えてるの」

「な、なんで、そ、そんなくだらないことまで…」

「だって、愛してるんだもん」

 ぷいと前を向くと、さっきより速足でスタスタ歩き出す。

 どうやらゆうべのことを、まだ少し根に持っているようだ。

 -どうして愛し合ってる者同士が、愛を確かめ合っちゃいけないの?-

 あずみの悲鳴のような叫びが、耳の奥に蘇る。

 多幸感が、胸の奥からじんわりと温泉の湯のように沸き上がってきた。

 あずみのような素敵な娘にそこまで思われて、うれしくないといったら嘘になる。

 しかし、とやはり僕は思うのだ。

 大切に思うからこそ、慎重にならざるを得ないことが、世の中にはあるのだ、と…。

そんなことを考えながらとぼとぼと最後尾を歩いていると、10分ほどして、左手に2階建ての建物が見えてきた。

「ここだ」

 藤野が言って、足を止めた。

 なるほど、玄関の扉の横に、『明野医院』という看板が出ている。

「特に荒らされた形跡はないわね」

 サングラス越しに、建物を見上げて光が言った。

 考えてみれば、ここまで一匹も化け物は出て来なかったのである。

 やつらは夜行性で、明るいうちは行動が制限されるのだろうか。

 あの磯女は別として、きのうも昼間は外道の姿を見かけなかった気がする。

「こりゃ、期待できそうだな」

 藤野が、誰にともなくつぶやいた。

 前庭に続く跳ね扉には、鍵がかかっていなかった。

 おっかなびっくり、藤野に続き、前庭に足を踏み入れた。

 白いブランコとテーブル、そして2脚のデッキチェアが、青々とした芝生によく映えている。

「お、あったあった」

 藤野が歓声を上げた。

 見ると、芝生の片隅に異様な機械がうずくまっていた。

 タイヤのない750㏄のバイク、とでもいえばいいだろうか。

「何ですか? これ」

 僕が訊くと、藤野がふり向いて答えた。

「ホバーバイクだ。信じられないかもしれないが、これで空を飛べるんだ」
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