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ハイスペック過ぎる妹を守るため、死霊の島で明日に向かってゴールをめざす 作者:春風小夏

第4章 荒神アンダーグラウンド

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scene 47 荒神アンダーグラウンド④

 金色の屏風に描かれた真っ赤な朱雀、

 その火の鳥を連想させる神獣の絵は、さすがに大迫力だった。

 南棟2階の朱雀の間で行われたお払いの儀式は、わずか5分ほどで済んだ。

 僕、あずみ、光、サト、藤野の5人に、屏風の前に座ったヨネとムギの双子の老婆がお神酒を振りかけ、祝詞みたいな呪文を唱えただけである。

 いわば、神前の結婚式のダイジェスト版みたいな儀式だった。

「さ、これでよしと」

 祝詞を唱え終わると、満足そうにヨネかムギのどちらかが言った。

「これでおぬしら荒神の勇者らは天照大神のご加護を賜った。ご加護はこれから丸二日に渡ってぬしらを守るであろう。大船に乗った気持ちで行くがよい」

「じゃ、あずみたちはもう、無敵モードってことですか?」

 座布団から身を乗り出してあずみがたずねた。

「うんにゃ。そうはいかん」

 双子の老婆がそろって首を横に振る。

「天照大神さまのご加護は、ランダムにそれぞれ一度ずつしか働かん。おぬしら5人に一度ずつじゃ。しかも、それがいつかは予測不可能。ときにはご加護が働く前に不幸に見舞われることもある」

「そう、唯のようにな」

「んだ、唯は不憫なことをした」

 2日の間に一度だけ働く神の加護とは…。

 そんな、宝くじじゃあるまいし。

「この島と天照大神って、何か関係があるんですか?」

 光ははなっからそんなものは当てにしていないのか、別の角度から突っ込みを入れた。

「話してなかったかの?」

 意外そうに向かって右側の老婆が首をかしげた。

「もとはといえば、この島はアマテラスさまがおつくりになったんじゃよ。不具の神々が捨てられるようになったのは、その後のことじゃ」

 天照大神がつくった島…?

 何かが引っかかった。

 が、僕がそれを思い出す前に、向かって左側の老婆が言った。

「さあ、行け。勇者たちよ。行って、巫女を取り返してきておくれ」


 30分後。

 準備を済ませた僕らはホテルの玄関口に集合した。

「このホテル青柳は、もとはといえば由緒正しい老舗の旅籠だったんだが、バブルの時に先代がホテルに改築してな、今は御覧の通り複雑怪奇な建物になってしまった」

 ホテルの外壁を見上げて、藤野が苦笑した。

 作務衣の腰に鞘に納まった日本刀を帯刀している姿は、時代劇の素浪人のようでもある。

「でも、ホテルの中央に神社を格納した神殿があったり、四つの棟それぞれに神獣の屏風を飾った広間があったりと、なかなか風水的にイカしたつくりですよね」

 僕は玄関の庇に彫刻された四神のレリーフを眺めながら、相槌を打った。

「これもみな、虚空上人の教えなんですか」

「さあな、抹香臭いことは俺にはわからん。とにかく、今言えるのは、この島で唯一まともなのはこの建物の中だけだろうってことさ。ゆうべから分家にも電話しとるんだが、いっこうにつながらんのだ」

 藤野が朝陽に目をしかめて答えた。

「分家って、青柳史郎さんの…?」

「ああ。そうだ。なるほど。君らは、本土で史郎に会ったんだな。あの野郎、ひとりだけいい目を見やがって」

 青柳史郎は、唯の母と同じく、島を捨てた人間なのだ。

 しかも、いっぱしの実業家として成功しているだけに、島民の間では評判が悪いのかもしれなかった。

「青柳の分家はどこにあるんですか?」

 後ろで僕らの話を聞いていた光が口を挟んできた。

「なに、分家といっても、ここと違って普通の家だよ。ちょうど骨山を挟んで反対側が、もうひとつ、この島の人口密集地になってるんだがな、その中の一軒が青柳の分家だ。ちなみにサトの実家もその集落にあった」

「あった…って、どうして過去形なんです?」

「うちのおとうとおっかあは、うちが中学生の頃、海で死んだだ。漁の最中に、ひどい時化に遭って…」

 光の後ろから現れたサトが、淡々とした口調で言った。

「それ以来うちはここで働かせてもらってるから、あの村にはあんまり未練もねえんだけど」

 サトは肩に弓をかけ、背中に矢を入れた籠を背負っている。

 服装は食堂で見た時と同じ、トレーニングジムのインストラクターみたいな、タンクトップにショートパンツスタイルである。

「でも村には中学んときの友達が何人もいるから、心配といえば心配だべ」

「明野先生のとこのあれが使えたら、俺が見に行ってやるよ。おまえは光さんたちを守って、洞窟へ急ぐんだ」

「え? 藤野さんは行かないんですか? 地底探検」

 びっくりして僕が訊いた時、

「お待たせ!」

 大きく右手を振りながら、ホテルの中からあずみが駆け出してきた。

 ゆさゆさと胸を揺らしながら駆けてくるあずみをひと目見て、僕は唖然とした。

「あずみ、おまえ、なに、その格好」

 颯爽と朝の陽射しの中に現れたあずみは、なぜかセーラー服を着ていた。

 ブルーのラインの入った真っ白な夏服に、ワインレッドのリボン。

 でも胸が大きすぎるので、上着がずり上がって、平らなお腹と可愛いへそがその間から覗いている。

 セーラー服の下は紺のプリーツスカートなのだが、問題はその丈だった。

 明らかに短すぎるのだ。

 校則違反も甚だしい。

 生活指導の先生に見つかったら、否応なしに逮捕されてもおかしくないくらい、無茶に短いのである。

「これはね、あずみの戦闘服なの」

 ぱっちり見開いた眼で僕を見つめて、生真面目な口調であずみが言った。

「女子中学生の戦闘服は、昔っからセーラー服って決まってるじゃない」





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