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ハイスペック過ぎる妹を守るため、死霊の島で明日に向かってゴールをめざす 作者:春風小夏

第4章 荒神アンダーグラウンド

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scene 45 荒神アンダーグラウンド②

 照明を落とした廊下に佇むあずみは、けっこう際どい格好をしていた。 

 女物の浴衣ではサイズが小さすぎるのか、あるいは胸の所に布地が引っかかっているせいか…。

 浴衣が短すぎて、超ミニ丈のワンピースを着ているように見えるのである。

「ま、入れよ」

 そのムチムチしたむき出しの太腿からかろうじて目を逸らすと、声を潜めて僕は言った。

 布団を脇に寄せ、畳んで壁際に立てかけてあった卓袱台を部屋の真ん中に出し、座布団を敷く。

 あずみが向かい側に落ち着くのを見計らって、ポットのお湯でお茶を入れてやる。

 あずみは両手を脇に置き、座布団の上にきちんと正座しているのだが、案の定、太腿と太腿の間からは白い下着が覗いている。

 まったくもって、深夜に間近で見るには刺激の強すぎる光景だった。

 ホテル青柳の部屋はどれもかなり年季の入った和室だ。

 だからこうして浴衣姿で向かい合うと、僕らはなんだか親の反対を押し切って駆け落ちしてきた若いカップルみたいな感じだっら。

「光さんは?」

 尋ねると、

「もう寝てる。明日早起きして、藤野さんたちと一緒に色々準備しなきゃならないからって」

 卓袱台の一点に視線を固定しながら、あずみが答えた。

「それで…そこ、痛むのか?」

 僕はおそるおそる訊いた。

「ううん」

 あずみがかぶりを振る。

 サラサラの髪が耳のあたりで揺れ、シャンプーの香りがふわっと空気中に広がった。

「そうじゃなくって、なんだかとっても暑くって」

 言いながら、止める暇もなく浴衣の襟元を広げにかかった。

 細い首からなだらかな鎖骨の辺りまで、少し日焼けした肌が続いている。

 なめらかな曲線はそこから急に盛り上がり、真っ白な双丘を形づくっている。

 さすがにその先の蕾までは見えなかったが、スクール水着の跡のなんと艶かしいことか。

 しかし、今問題なのは、そこに僕の指の痕が赤くくっきりと刻まれていることだった。

 白い乳房に5本の指の痕跡を残したあずみは、まるで暴漢に凌辱された直後の娘のように見える。

「悪かった。そんなつもりじゃなかったんだ」

 僕はこうべを垂れた。

 自分がとんでもない性犯罪者にでもなった気がした。

 実際、あのとき、僕は掴もうとしてあずみの胸を掴んだわけではない。

 バランスを崩した身体を立て直そうとして、手を伸ばしたら偶然そこに…”それ”があったのである。

 しかもその後、すぐに手を離そうとしたのだが、あずみ自身が上から押さえつけて、離脱を許してくれなかったのだ。

 だが、と今更になって思う。

 あの時、僕のほうにも(よこしま)な気持ちがあったことは、否定できないのではないか。

 大っぴらにあずみの胸に障れる機会を得て、僕こそこっそり喜んでいたのではなかっただろうか…。

 だとしたら、僕はやはりそこらの痴漢と変わらないことになる。

「なんかね、こう、身体中にエネルギーが漲ってくる感じでさ、居てもたってもいられないっていうか」

 あずみが顔を上げ、泣き笑いのような表情をして、言った。

「たとえばね」

 卓袱台の片隅に、おやつ替わりに林檎が置いてある。

 何を思ったかそれを手に取ると、僕の目の前に掲げて見せた。

「あ、グラスが要るか」

 いったん林檎を卓袱台の上に戻すと、そんなことをつぶやいて立ち上がる。

 冷蔵庫の上に並んでいるグラスに手を伸ばした時、腰をかがめたせいで浴衣の裾からお尻が覗いた。

 純白の薄いパンティに包まれた、白桃のように可愛らしいお尻である。

 い、いかん。

 今度は僕が卓袱台とにらめっこする番だった。

 すでに僕の身体には変化が生じ始めていて、浴衣の前がもっこり膨らみかけている。

 これでは当分立ち上がることは不可能だ。

 あずみが戻ってくる気配がした。

「見てて」

 声をかけられ、仕方なく視線を上げると、卓袱台に置いたグラスの真上に、あずみが右手に持った林檎を掲げていた。

 と、次の瞬間、

 ぐしゅ。

 汁気の多いものが潰れる音がして、グラスの中に薄黄色い液体がどっと滴り落ちた。

「あ」

 僕はあんぐりと口を開けた。

 あずみが林檎を片手で握り潰したのだとわかるまでに、しばらく時間がかかった。

「嘘だろ」

 呆然とつぶやいた。

 確かにあずみは怪力である。

 これまで数え切れないほどの化け物たちを、その渾身のストレートパンチで撲殺してきたのだ。

 しかし、今のは…。

 まったく力を入れたように見えなかったではないか。

 なるほど、一流の格闘家なら、林檎を片手で握り潰すことくらい、わけのないことなのかもしれない。

 だけど、こうもやすやすとそれができるとは思えなかった。

 あずみは豆腐かプリンを握り潰すように、コンマ1秒ほどでた易く固い林檎を粉砕してしまったのである。

「はい、スムージーの出来上がり」

 にこっと笑ってあずみがグラスを僕の前に滑らせた。

 僕は、グラスの中のできたてのリンゴジュースとあずみの顔を、交互に眺め渡した。

「あ、ありがと」

 口をつけてみる。

 おいしかった。

 手品ではない。

 これは明らかに本物だ…。

「あずみ、ひょっとするとね」

 ティッシュで林檎の搾り滓を包んでゴミ入れに放り込むと、布巾で手を拭いながら、恥じらいを含んだまなざしであずみが僕を見た。

「お兄ちゃんに、欲情してるのかもしれない」

「よ、欲情?」

 僕は絶句した。

 妹の口から発せられる言葉として、これほどの禁句はほかになかった。

 第一、欲情すると林檎を握り潰したくなる女って、いったい全体何なんだ?

「お兄ちゃんがあずみのこと、欲しいと思ってる以上に、あずみはお兄ちゃんを欲しがってるのかも」

 恥ずかしそうに背けた横顔で、長いまつげがドキリとするほど色っぽい。

「あ、あのな、あずみ」

 ようやくのことで、僕は言った。

「そう言ってくれるのは正直、嬉しいけど、おまえはまだ15歳なんだ。そんなおまえとそんなことしたら、俺、児童福祉法違反かなんかで間違いなく警察に捕まっちまうよ」

「兄と妹なのに?」

 あずみの声が尖った。

 気弱げだった瞳に強い光が宿っている。

「…尚更まずいかもな。それにとにかく、18歳以下の少女との、その、なんていうか、せ、性行為は、どうやら世間では犯罪らしいんだよ」

 自分でも声が小さくなっていくのが分かった。

 -終わったら、続きしようね。約束だよー

 さっき露天風呂でそう囁かれた時、あえて反論しなかった僕だったが、やはりそれは間違っているのだ。

「どうして?」

 あずみが卓袱台に両手を突いてガバっと身を乗り出してきた。

「あずみとお兄ちゃんは、愛し合ってるのに? 愛し合ってる者同士が愛を確かめ合うことが、どうして犯罪になっちゃうの? そんなの、絶対におかしい! あずみは後3年も待てない! 今すぐほしいの、お兄ちゃんが!」

「ま、待て」

 僕はその勢いに圧倒され、無意識のうちに後ろの壁に寄りかかっていた。

「わ、わかった。その辺のとこはどうなのか、今度由紀夫に訊いとくから」

「お兄ちゃん」

 睨まれた。

 僕を正面から睨み据えながら、あずみがだしぬけに浴衣の前をはだけた。

 フルフル震えながら、双つのたわわに実った重そうなふくらみが、目と鼻の先にポロリとこぼれ出す。

「とにかく、これだけは覚えておいて。あずみはお兄ちゃんにここ触られると、強くなれる。だから、戦う前は絶対に触ってほしい。できればこんなふうに、指の痕がつくくらい、強く揉んでほしいの。それから、さっきの約束は必ず守ってもらう。でないとあずみ、絶望して死んじゃうから」

 紅潮した頬を、一筋、涙が伝う。

「あずみ…」

 温かいものが胸の底から沸き上がってくるのが分かった。

 僕は泣きたいような笑い出したいような複雑な思いで、目の前のふくらみを見つめ続けていた。

 改めて見ると、それはとても可愛らしく、そして綺麗だった。

 それにしても、と思う。

 おっぱいを揉まれるとパワーアップするヒロインなんて…。

 それはいくらなんでも、エロすぎるのではないだろうか…?







 
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