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ハイスペック過ぎる妹を守るため、死霊の島で明日に向かってゴールをめざす 作者:春風小夏
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scene 44 荒神アンダーグラウンド➀

 南棟301号室が、僕に与えられた部屋だった。

 隣の302号室が、光とあずみの部屋である。

 サトはいつも寝起きしている使用人部屋に帰っていった。

 部屋に戻ると、すでに布団が敷いてあり、寝る準備が万端に整っていた。

 海の幸をたらふく食べ、温泉に1時間以上も漬かると、さすがに眠気が押し寄せてきた。

 テレビをつける気力もなく、浴衣のままごろんと布団の上に横になる。

 ぼんやりと天井を眺めながら、きょう一日に起きたことを反芻してみる。

 サトの操縦するクルーザーで島に向かったこと。

 途中、舟幽霊の群れと磯女に襲われたこと。

 上陸早々、迎えの車の中で死体を見つけたこと。

 そこに3羽の人面鳥が現れ、唯がさらわれたこと。

 ホテル青柳に向かう途中に寄った廃校で、外道たちの集団と遭遇し、一平が拉致されたこと。

 その屋上で謎の巨大火炎土器を目撃し、そこから骨車が出現したこと。

 あずみが骨車を粉砕したものの、一平に化けた外道にわき腹を刺されたこと。

 なんとかホテルに辿りつき、蟲毒に苦しむあずみを救うために、僕の血を提供したこと。

 そしてさっきまでの露天風呂会議。

 まったくもって、なんとめまぐるしい一日だったことか。

 疲れているし、眠くもあった。

 だが、思うことがありすぎて、とてもすぐには寝られそうにない。

 まず、なんといっても気がかりなのは唯と一平の安否である。

 骨車が見せた映像が脳裏に蘇る。

 暗闇の中、半裸で磔にされた唯。

 いくら虚空上人の直系の子孫だといっても、長くはもたない気がする。

 また、一平ときた日には、生きているかどうかすらもわからない。

 烏賊頭の外道に火炎土器の中に投げ落とされ、それきり消えてしまったのである。

 地底探検は気が進まないが、放っておくわけにはいかなかった。

 なんとかふたりを救い出し、最終的には荒神祭を成功させて外道どもを封印しなければならないのだ。

 そしてもうひとつ。

 どうしても消えてくれないのは、あずみの乳房の感触だった。

 ひとつ屋根の下で暮らすようになってもう十年近くになるが、考えてみると、生で触ったのはこれが初めてなのである。

 あずみは普段からよく下着姿で家の中をうろうろするし、寂しい時はたまに僕のベッドにもぐりこんでくるから、至近距離で見た経験は枚挙にいとまがない。

 しかし、あんなにも長い間、直に手で触っていたというのは…。

 快挙というべきか、あるいは暴挙なのか。

 背筋が疼くような感触を思い出しながら、掌を眺めて指を屈伸させていると、だしぬけにスマホが鳴った。

 耳に当てると、由紀夫からだった。

 高校時代の同級生で、現役東大生の洗場由紀夫は、友人というより僕の辞書代わりだ。

『アキラか。生きてるか』

 由紀夫が切り出した。

『今名古屋に戻ってるんだが、近々会わないか。あずみちゃんも一緒に』

「無理だね」

 つっけんどんに僕は答えた。

 なんだその、あずみちゃんも一緒に、ってのは。

『また厄介ごとに巻き込まれてるのか』

 呆れたように由紀夫が言った。

「まあね」

 僕はスマホに向かってうなずいた。

「今、荒神島に来てるんだ」

『マジかよ』

 絶句する由紀夫。

『あれ、本気だったのかよ』

「本気も何も、妖怪は出るしゾンビは出るしで、もう踏んだり蹴ったりだぜ」

『だろうな。闇の心霊スポット、四凶に守られた島だもんな』

「そういえばおまえが前言ってた、テレビ番組のクルーがこの島で行方不明になったって話、あれってひょっとしてさ、鍾乳洞が絡んでたりする?」

『ああ、たしかそんな話もあったようだな…。名前なんだっけ? 島にはけっこう大きな鍾乳洞があって…そこを探検するのをメインにしようって企画が上がってたらしい』

「月煌洞だ」

 僕はため息をついた。

「俺らは明日そこに潜る」

『マジかよ』

 由紀夫がまた言った。

「あずみちゃんも一緒にか?』

「もちろん」

『そうか』

 考え込むみたいに、スマホの向こうで沈黙する由紀夫。

 が、やがてひとつ乾いた咳払いをすると、

『守ってやってくれ』

 妙に沈んだ口調で言った。

『俺の代わりにさ』

「そのつもりだよ。だからおまえも」

 僕は言った。

「明日は一日スマホの前で待機していてくれないか。また何か訊くかもしれないから」

『よかろう。東大生たるもの、夏休みも何かと多忙なんだが、ほかならぬあずみちゃんのためだ』

 由紀夫の助言は時々役に立つ。

 僕は前回のサバイバルゲームでそれを学んでいた。

『健闘を祈る』

 気取った口調で由紀夫が言い、通話が切れた時である。

 ドアのほうで控えめなノックの音がした。

「誰?」

 訊くと、

「お兄ちゃん、私」

 あずみの声が返ってきた。

「どうした?」

 あわててドアを開けると、廊下に浴衣姿のあずみが佇んでいた。

 小ぶりなメロンを二つ入れているかのように、浴衣の胸のあたりがこんもりと盛り上がっている。

「ここが熱くて眠れないの」

 上目遣いに僕を見て、囁くように言った。

「ここって?」

 なぜだかひやりとした。

 あずみはまさにそのメロンを指さしている。

「お兄ちゃんが触ったところ。ね、どうしたらいいと思う?」

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