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ハイスペック過ぎる妹を守るため、死霊の島で明日に向かってゴールをめざす 作者:春風小夏
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scene 40 スカルアイランド⑨

 素人の僕でも扱えそうなものといえば…。

 僕は銃器の棚に目を走らせた。

 やはりベレッタあたりが無難だろうか。

 最新式のベレッタナノなら、ハンドバッグにも入る大きさで、女性でもた易く扱えると聞いたことがある。

 そんなことを考えながら、下から順に棚に並んだ拳銃を吟味していると、

「お兄ちゃん、これだよこれ!」

 あずみが言って、最上段を指さした。

「え?」

 僕は目をぱちくりさせて、あずみの示す銃を見た。

 全長30センチはありそうな、メタリックシルバーに輝くどでかい銃である。

「前に映画で見たのこれじゃないかな。ゾンビを主人公の女の人がばんばん撃ち殺してた」

 そう言いながら、あずみが片手でひょいと拳銃を下ろした。

「お、おまえ、これって…」

 僕は目を剥いた。

 間違いない。

 S&W M500。

 市販されている中で、世界最強と言われる拳銃である。

 使用する弾丸は、50口径のマグナム弾。

 44口径のマグナム弾の約3倍の威力を持つという。

「お嬢ちゃん、それはどうかな」

 藤野が苦笑いした。

「アフリカゾウやゴリラを狩るわけじゃないんだ。いくらなんでもS&Wは大げさすぎる。第一、そんなの素人が撃っても当たらないし、6発全弾打ち尽くしたら、数日は腕が痺れて字も書けなくなるっていうぞ」

「うーん、でも」

 あずみが唇を尖らせた。

「今度の相手はゾンビというより、ケルベロスみたいな怪物ですよね? ならば体はかなり大きいはず。ゾンビには当たんないかもしれないけれど、敵が見上げるような怪物なら、お兄ちゃんの腕でも当たると思うんですけど」

「反動で吹っ飛ばされなきゃ、の話だがな」

「その点は大丈夫です」

 あずみがにこっと笑った。

「あずみがサポートしますから」

 そして僕のほうに向き直ると、片手に持ったS&Wを僕に押しつけてきた。

「お兄ちゃん、ちょっとこれ持って構えてみて。藤野さんを狙うような恰好で」

「うお」

 受け取った瞬間、僕は危うく銃を取り落としそうになり、蒼ざめた。

 重い。

 なんだこれは?

 あずみが軽々片手に下げていたので、油断していたのがまずかった。

「S&Wの重量は約2キロだ。足の上にでも落としたら、指の骨を骨折するぞ」

 すかさず藤野の注意が飛んできた。

「うう」

 僕は呻いた。

 2キロもある拳銃なんて…。

 まさに化け物である。

 なんとかそのバカでかい銃を両手で持つと、銃身を藤野に向け、見よう見まねで構えてみた。

 重いので、どうしても腰が引けてしまう。

「セーフテイロックがかかってるから大丈夫だと思うが、間違っても引き金引くんじゃねえぞ」

 引きつった顔で藤野が笑う。

 手首が重さに負けて、銃身が下がりそうになったとき、

 温かく柔らかいものが背中にくっついてきた。

 あずみである。

 僕の両腕に自分の腕を添わせるようにして、あずみが僕の両手首を握った。

 二人羽織の要領だった。

 ふっと銃が軽くなった。

「ね?」

 あずみが僕の手首ごと、銃身を右に左に動かした。

「ほら、こんなふうにすれば、楽に撃てるでしょ。それに、反動はみんなあずみが吸収しちゃうから」

 確かに。

 あずみのこの弾力に富んだ強靭な身体なら、それは十分可能だと言えそうだ。

 まさに天然エアバック。

 僕は背中に押しつけられている熱いマシュマロのようなふたつのエアバックを脳裏に描き、うなずいた。

「まあ、好きにしろ」

 呆れ顔で藤野が言った。

「その代わり、くれぐれも取り扱いには気をつけるんだ」



 最後にサトが弓と杖を選んだ。

「弓はいいけど、そんな古びた杖、どうするんだ?」

 僕が訊くと、サトが浅黒い顔を僕のほうに向けた。

「これは虚空上人様の杖だべ。サトが使うんじゃねえ。唯お嬢様に渡すんだ」

 長さ1メートルほどの何の変哲もない白木の棒である。

 それを目の高さに掲げてみせて、生真面目な表情でそう言った。

「OK.じゃ、みんな、武器は決まったね。そしたら後は、ひと風呂浴びて作戦会議だ」

 めいめいの武器を持った一同を見渡して、光が仕切った。

「30分後に南棟の屋上岩風呂に集合、でどうかな」

「岩風呂で作戦会議?」

 僕はおそらくこのとき、ハトが豆鉄砲でも食らったような顔つきをしていたのに違いない。

「聞いてなかったの? ここのホテルの天然温泉は、男女混浴なんだよ」

 出来の悪い生徒をたしなめるような口調で、光が言った。

「みんなで一緒に入れば、時間の節約になるでしょ」

「そ、そういう問題では…」

 僕は絶句した。

 混浴だと?

 そんなの初耳だ。

「俺は遠慮しとくよ」

 藤野が頭を掻いた。

「かみさんに叱られちまう」

 じゃ、俺も…。

 言いかけたとき、

「よかったね、お兄ちゃん」

 あずみがぎゅっと右腕にしがみついてきた。

 頬を上気させて、きらきらした眼で僕を見上げている。

「あずみ、うれしい。またお兄ちゃんと一緒に、お風呂入れるなんて」


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