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ハイスペック過ぎる妹を守るため、死霊の島で明日に向かってゴールをめざす 作者:春風小夏

第3章 スカルアイランド

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scene 39 スカルアイランド⑧

 こんな構図を想像してもらえないだろうか。

 正方形の敷地の頂点に建つ、4棟の円筒形の建物。

 その円周に接して中央にうずくまる、背の低い立方体。

 これがホテル青柳の建物の全景であり、真ん中の立方体が荒神神社を擁する御殿なのだった。

「さっき俺らが居たのって、確か東棟の青龍の間でしたよね」

 御殿に向かう廊下の途中で僕は光にそう声をかけた。

「てことは、残りの3つの建物には、おそらく」

「朱雀、白虎、玄武の間があるはず。アキラ君は、そういいたいんでしょ?」

 一歩先を歩きながら、光が答えた。

「そうです。つまり、四凶に対抗して、このホテルには四神が祀ってある」

「どうりでゾンビどもがやってこないはずよね。きっと四神獣の結界が、この土地を守ってるんだわ」

 それも、虚空上人とやらの指図なのだろうか。

 ともあれ、そうとわかれば一安心だ。

 寝込みをあの気色の悪い外道どもに襲われるのだけは、願い下げにしたい気分だったのだ。

 廊下の突き当たりは、生木でできた両開きの扉になっていた。

「ここが荒神神社です」

 支配人の美千代が着物の袂をまくりあげ、白い腕を見せて取っ手を手前に引いた。

「わあ、すごい」

 僕の左腕にしがみついていたあずみが、感嘆の声を漏らした。

 中は体育館のよう広く、天井の高い空間だった。

 隅々まで照らし出されたその中央にステージがあり、その上に神社が乗っている。

 鳥居から社務所、本殿まで、どこからかそっくり運ばれてきたかのように、一式全部ステージ上に乗っかっているのである。

 神社自体はかなり古いもののようだった。

 鳥居など、表面の塗装が剥げて、元の色が分からないほどだ。

「武器庫はこの下です」

 美千代がステージの手前を指さした。

 ワックスで磨き上げられた床のその部分に、正方形の蓋がある。

「今更こんなこと訊くの、何なんですけど」

 あどけない口調で、あずみが言った。

「武器庫って、何ですか?」

「言い伝えによるとね」

 従業員たちに床の扉を開けるよう指示を出すと、美千代が説明した。

「虚空上人は、最後の闘いに出向く際、村長たちにこう言い残したそうなの。この土地に四神で守護した神社を建て、そこに武器を集めておくようにって。だから、代々この島の者たちは、本土に渡っては、さまざまな武器を持ち帰ってこの下に隠してきた。きっと、見たら驚きますよ。下手な博物館のコレクションより充実しているから」

「今の時代、島を出て大都市で暮らす者も多いんだが、みんな帰ってくると、何かしら寄付していく習わしになっていてな。わしもここ数年下に降りていないから、ま、見てのお楽しみってとこだが」

 藤野が言い、開いた降り口のほうに僕らを促した。

 急な階段を降りると、十畳間ほどの部屋にたどり着いた。

「おわ」

 今度は僕が歓声を上げる番だった。

 四方の壁は、すべて武器の陳列棚になっている。

 刀剣、槍、短刀など、種類別に棚が分けられているのだが、なんと、拳銃コーナーまであるではないか。

「なんでこんなものが…」

 大小のピストルはどれも新品同然だ。

 その前でぽかんと口を開けていると、笑いを含んだ口調で藤野が言った。

「島を出て、ヤクザをやってる連中が持ち帰ってきたんだよ。そのうち自衛隊に誰かもぐりこませて、バズーカ砲やロケットランチャーも調達したいところだが、まあ、今はこれで我慢してくれ」

「あずみはこれ!」

 声がしたので振り向くと、あずみが鋼鉄の輪のようなものを手にして目を輝かせていた。

 打撃用のナックルである。

「あ、それからこれは何かしら」

 おもちゃを前にした子どものように弾んだ声で言って、短い筒のようなものを手に持った。

「なんだろうねえ。色々ありすぎて、よくわかんないものもけっこう中に混じってるのよ」

 美千代が首を傾げた時である。

 バシッと音がして、あずみの持った筒から槍の穂先が飛び出した。

「かっこいいじゃん!」

 大喜びするあずみ。

「仕込杖みたいなもんね。相当な年代物みたいだけど」

「わしはこれだな」

 藤野が選んだのは、刀身の長い日本刀だった。

 やくざ映画の登場人物みたいな風貌に、確かに日本刀はぴったりだ。

「あたしは別に要らないんだけど、防具をもらってくことにしようかな」

 光が籠手のようなものに手を伸ばす。

「お兄ちゃんは?」

 ナックルと短筒を両手に下げて、あずみがやってきた。

「やっぱりお兄ちゃんは、拳銃がいいよね」

「うん」

 僕はうなずいた。

 拳銃は、この前のサバイバルゲームで慣れ親しんだ武器である。

 あればいいと思っていたが、まさか本当にまたお目にかかることになろうとは…。

 しかも、これだけ種類が多いと、正直迷ってしまう。

「扱い易いのにしておけ。大口径のものは威力はあるが、反動が強すぎて素人には扱いきれん。肩を壊すのが関の山だし、第一標的に当たらない。いくら強力でも、弾が当たらなければ意味がない。そうだろう?」

「ですよね」

 僕は腕組みをして、考え込んだ。

 敵は古代中国の魔物。

 そして不具の神の集合体、骨車。

 さて、どのタイプなら、相手に一番ダメージを与えられるのだろうか…?

 
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