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そして今日から。
作:松の慎


「あやね〜次移動教室だって!」
「げっ」
「はやく行こー☆」

中原あやね、高1。
充実した高校生活おくってます。
自分で言うのもなんだけど、これでも成績は学年トップだったりw

「中原さんよ」
「ほんとだ。こないだの試験また1位だったんだってねー」
「ほんっとすごいよねw」

周りから密かに聞こえる声。
そして続く言葉はきっとあれだろう。

「でもさーなぁんでうちの高校きたんだろね?」

今でも想っています。
違うとこにいても、想いは変わらないと・・・

だけど、そんなこと言っても意味ないよね。
だってもう・・・

『ねぇあやちゃんはどこに行く?』
『あたしはねー北高かな』
『じゃあ一緒だね』

中学のとき仲良かった男の子、俊介こと俊ちゃん。
可愛くてそれでいてちょっと恥ずかしがりやで・・・でも一緒にいて楽しくて。

俊ちゃんと仲良くなって、そして好きになった。

高校もほんとはもう1こ上のレベルの西高志望だったけど、俊ちゃんと同じ高校に行くために変えた。

「はー・・・やっと着いた」
「まったく。何階上なのよって感じー(笑」

教室のドアを開けた。
すると、なぜかこっちに視線が集まってきた。

「あっあやね!」
「ん?」
「ちょっとあやねの噂聞いたんだけどさっ」
「男追いかけてうちの学校入ったってほんと?!」

えっ・・・

「でもそんなことありえないよねー」
「だよねぇ〜そんな不純な動機で高校入るとかありえんしねw」

不純?
なにがどう不純だって言うの?

「・・・好きな人のために同じ高校狙っちゃだめなの?」

だって、それほどずっと一緒にいたかった。
高校でもずっと一緒にいたかった。

告白しなかったけど、告白もされなかったけど
それでもわかってた。

お互い想いあってるって。

「俊ちゃんと一緒にいたくてここ受けたの。それが悪いの?」
「え・・・じゃ、じゃあ今その人は・・・?」
「・・・工業高校にいる」
「えっ?!」
「同じ高校じゃないの?!」

なんでかって・・・そんなのあたしが聞きたいよ。
どうして?

なんででも良いから、せめて違う高校選んだ理由を直接俊ちゃんの口から言ってほしかった。

『俊ちゃん・・・北高じゃないの?』
『ごめん、工業に変えたんだ』
『なんでっ?』
『・・・ごめん』

なんでもっとはやく言ってくれなかったの?
なんで願書出してから言うの?

あたしそんなに邪魔だった?

「もう良いじゃん、みんな。そろそろ授業始まるから席つこうぜ」
「光太。そーね、そろそろ先生くるかもね」
「だな」

そう言ってみんな席に着いた。
あたしも座った。

ああ、なんでみんな今更そんなことを言ってくるの?
なんで思い出させるの?

せっかく忘れようと思ってたのに・・・

***************************************************

放課後になった。
特に部活にも入ってないから、帰ろうとした。

「あやねっ」
「光太。どうしたの?あ、そだ。さっきはありがとねw話中断してくれて」
「あ、ああ・・・そのことでちょっと話が」

そして光太はここじゃ言えないからと言って、中庭へ行った。

「どうしたの?」
「あの・・・さ、さっき俊ちゃんとか言ってたろ?それって村岡俊介のことだよな」
「えっなんで知ってるの?」
「俊介とは塾で一緒で仲良かったんだ」

じゃあさっき、わざと止めてくれたんだ。

「でさ、あやねって・・・俊介になんて呼ばれてた?」
「え・・・『あやちゃん』って」

そう、俊ちゃんだけはあたしのことあやちゃんって呼んだ。
俊ちゃんだけだから、なんとなく嬉しくて。

「やっぱり」

そう言って光太は過去話を語り始めた。

「俊介はいつもあやねのこと話してた。あいつがそこまで思ってるなんてどんな子なんだろうなってずっと思ってた」

俺も、俊介の恋バナが聞けて嬉しかった。
だってあいつ今まで一度も言ってくれたことないから。

『俊介北高だろ?俺と一緒だなー!』
『あ・・・俺変えたんだ。工業に』
『えっまじで?!』

あるとき突然そう言った。

『それ、「あやちゃん」には言ったのか?』
『・・・まだ・・・』
『だってその子は俊介と同じ高校行くって思ってるんだろ?はやめに言ってやったほうが良いぞ』
『でもなんて言ったら良いかわからないんだ・・・』

俊介がいつになく考えこんでいた。

『普通に工業に変えたって言えば良いだろ?』
『だめなんだ』

あのとき初めて思った。
ああ、こいつほんとにその子のこと好きなんだなって。

『あやちゃんと一緒だって言っておきながら今更変えたなんて言えない。俺だってあやちゃんと同じ高校が良いけど・・・』
『でも言わなきゃ彼女もっと傷つくぞ』
『・・・そもそもあやちゃんが俺のことどう思ってるかなんて・・』
『ばかっ!!!』

どう考えたって2人は両思いのはずだった。
だけどどっちからも告白することはなかった。

でも、それでも想いが変わらないんだったら良いと思ってた。

『今更んなこと言うなよ!どんだけ想われてんのかわかんねぇのかっお前』
『自信がないんだ・・・』
『だけどっ』
『あやちゃんを傷つけることだけはしたくない』

それは俊介の優しさだとわかってた。
だけど、どっちにしろ傷つくのなら俊介の口からわけを言ってやれば良かったのに。

『光太、あやちゃんを頼む』
『俊介』
『元気がないときは励ましてやって。それだけで良いから・・・頼む』

俊介の頼みを断ることなんてできなかった。
だって俺、俊介がその子のことを好きだって言ったときから協力してやるって決めてたから。

『・・・わかった』

そして俊介は付け加えて「俺のことは思い出させないでやって」と言った。
思い出したら傷つくからとでも思ったんだろう。
けど、忘れられるわけないよな。

そんな簡単に忘れられるほど気持ちは浅はかではないはずだから。

「俊介は最後の最後まであやねのこと気にしてたよ」
「俊ちゃんが・・・」
「それからもう1つ・・・『側にいなくても、俺の気持ちが変わることはない』と」

俊ちゃん、ほんとに・・・?
あたし、信じても良いの?

きっと今でもあたしのこと思っててくれてるって・・・信じても良いの?

「ありがとう、光太・・・」

俊ちゃんがいた頃の記憶とともに、涙がこぼれ落ちる。
拭いても拭いても止まらない。

「もう1つ聞いて良い?」
「うん」
「どうして工業に行ったの?」

だって、決してあたしのことが嫌いだったわけじゃないんでしょう?

「機械を発明したいんだって」
「機械・・・?え、もしかしてそれって・・・・」

あたし、どんな機械だったか忘れちゃったけど、確かに俊ちゃんに言った。
あんな機械があったら良いなって。

もしかしてあたしのために・・・?

「俊介はいつだってあやねのことを考えてんだよ」

そう言って光太はポンッとあたしの頭に手を置いた。

「な?」

ああ、あたし愛されてた・・・

裏切られただなんて思ってごめんね。
信じてあげれなくてごめんね・・・

「俊介のこと、待っててやって」

今まではだめだったけど
でも今日からはちゃんと信じて待ってるからね。

今日から。

そして何年後かして俊ちゃんがあたしに会いに来るんだ。
新機械を発明したことを新聞で取り上げられて賞ももらって・・・そしてそれを一番にあたしのとこに知らせてくれるんだ。

「久しぶり、あやね」

ほら、懐かしい声が聞こえてくる。
それは明日を信じて待っていたあたしへの最高のご褒美として。

       fin














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